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椎名林檎の才能にずっと溺れていたい理由

『生林檎博'18~不惑の余裕』に参戦して

壱、『繰りかえす諸行無常』
 初めての出会いは深夜のテレビ番組。乾いたスネアの音とファズの効いた低音域のギターイントロが耳を刺激する。
 ーあっいいね、これ聞いてから寝よ。『歌舞伎町の女王』だって。タイトルも斬新だ。
  洗練されたメロディとアレンジ。
  牙を向き攻めたてる圧倒的声色。
  新たな世界観を沸き立たすMV。
さらに注目したのは歌詞の存在感。
『十五に成ったあたしを 置いて女王は消えた 毎週金曜日に来ていた男と暮らすのだろう』
ーなになに?この歌詞あり?言っちゃていいの?
衝動を突き動かされた。
ー椎名林檎。少し追っかけてみるか…

貮、『よみがえる性的衝動』
 それから十数年経った2013年某日。『いろはにほへと』のMVを観ていた私は、再び椎名を追いかける未来を選んだ。能書きは必要ない。あたまもからだも一致していた。彼女との出会いから2年後、突如音楽に対する探究心を無くし、真空になっていた海馬に新たな息吹を抜き込むには「唯一無二の才能」を置き去りにはできなかったのだろう。

 『加爾基 精液 栗ノ花』を聴くことが最初の息吹であった。選択の理由は単に椎名がそこで止まっていたから。その後も東京事変も含めアルバムCDとライブDVDを中心に椎名を貪った。毎日聴いた。通勤退勤の車の中は常に椎名。飽きるほど聴くという表現があるが全く飽きない。どんどん理解が深まる。新たな発見と感動を見つけることができた。そこには『無罪モラトリアム』や『勝訴ストリップ』の牙をむき攻め立てる声色がなくても巻き舌なくても。迷うこうとなく椎名の魅力に溺れていく道を選んでいた。

参、『冷凍都市の暮らし』
 そして待望の実演会参戦が実現する。『生林檎博’14~年女の逆襲』である。ビッグバンの映像からアリーナを海に見立てて舟での椎名登場。光の波が包む。幻想的なオープニングからテンポよく楽曲が進む。ひとつひとつが我が想像の遥かを上をいく演出。出るわ出るわアドレナリン。否、泪か。凄腕の演者に優しく包まれ、音と光と映像さらに椎名の佇まいまでをシンクロさせてその世界観を細部まで丁寧かつ大胆に広げてゆく。髄液が全身駆け巡る感覚だった。

 翌年には『椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行』参戦。さらに想像を超える。もう躰の中に欲望を留めることが出来ない。溢れ出して止まらない。

「椎名のライブ行ってきたんだよ。最高だった!」
「ナース服で歌ったの?」
「うん…まあ。」(確かに熱愛発覚中で…)

「椎名林檎いいよ!聴いてみてよ?」
「ナースの歌、まだ歌ってる?」
「うん、やってる…」(ナースの歌って…)

 違うんです。そうじゃないんですよ。確かに椎名イコールナースなんだろうけど。もっと素晴らしい案件が沢山たくさんあるんです。私は伝えたい。私は語りたい。この唯一無二の才能を。

肆、『いつの間にか姿くらまし』
 Twitterをはじめることを決断した。愛好家さん探しの旅。現在は便利である。SNSの利便性と破壊力がある。しかしSNSを「(S)そんなの(N)無くても(S)死にやせん。」と揶揄する昭和世代。私にとっては違和感がある場所なのだ。それでもその衝動が違和感を越える状態を変えることはできない故に。「相互さん」の意味も知らず丸腰で突っ込んでいく。無計画は歳をとっても変わっちゃいない。何とかなるさ。
 少しずつ声をかけ、また声をかけて頂き交流の場へお邪魔した。ご贔屓(フォロワー)さんは優しく迎えてくれた。お話しをたくさん聴いた。椎名の歌をたくさん聴いた。そして椎名の魅力をたくさん話した。椎名の歌をたくさん歌った。充たされた。と同時に溜まっていたものが排出された事で心に余裕が生まれた。

 ー何故、椎名の才能に溺れていたいのだろうか。

伍、『探し出してくれて有難う』
 2018年はデビュー20周年イヤー。春先の『椎名林檎と彼奴等の居る真空地帯』の実演会を経て『生林檎博’18~不惑の余裕』の実演会が決定した。遂にハレの日がやってくるのだ。渾身の想いが伝わったのか全8公演のうち5つの実演会のテケツを確保できた。それも希望どおり静岡、大阪、埼玉、福岡と満遍なく。惑惑(ワクワク)が止まらなかった。辛い仕事にご褒美は要らなかった。

 静岡初日。つまりは実演会初日。早めの会場入りはグッズ購入とご贔屓さんとの交流のため。真空地帯以来の方や初めてお会いした方、何となく話していたらご贔屓さんだったりした方も。プラスアルファで楽しめた。『御祭騒ぎ』。
 開場前には突然の夕立。「『雨傘』演るかもね、林檎さんの事だからこれもきっと演出かも。アハハ。」と一緒に並んでいたご贔屓さん。その言葉にみんな笑顔になる。

ーこれこれ。これが私が待ち望んでいた会話だよ。

陸、『五感をもっておいで』
 初日は良縁に恵まれた。アリーナ2列目の22番。入場しトイレにいって席に着く。まずは会場の雰囲気を取り込む。お分かりになるだろうか。アリーナ独特の全体的に靄ってる感じ。まず現実をしっかりと認識しないと飲み込まれては記憶に残らないから。センターはこの辺だな。後ろには壮大な映像スクリーンだ。可動式だね。その前には高めのひな壇。オケピットがある。ステージの構成はゼロハチに近いね。

 周りを取り込むと今度はすることが無い。スタンドや後ろを見渡したり、スマホみたり、入口で貰ったフライヤーみたり、待ち遠しい長い時間を過ごす。そして定刻の17時。客電が消える。オープニングの予想は本命『宗教』大穴『正しい街』。さあ来るか。

 斎藤ネコさん登場。歓声が上がる。オケピットからひょっこり頭が出る。ちょうど私の真正面だった。ストリングスとホーンが同時にAの音を奏でる。チューニングが終わればいよいよだ。タクトが振られる。現代音楽的なフレーズがセクション毎に鳴る。譜割りと映像と光が一体化する。更にハープやパーカッションも呼応する。音も光もクレッシェンド限界のところまで行き着いた!その瞬間!

  ♪ジャジャッ、ジャジャッ!

漆、『鋭いその目線が好き』
 舞台明転。おっ!誰?椎名じゃないな。えっバンビ??バンビだがや?旗を振る。叫ぶ。バンビはもうダンスをしないと思ってたんだよ。バンビ~!

 『I just want to be with you tonight♪』

オープニングナンバーは、椎名の象徴ーあの『本能』だったのである。ーハズレた~またやってくれたよ想定外を。

 『I know that you want to be my babe♪』

影なのかサンプリングなのかはもうどうでもいい。さあいよいよ椎名登場だ。身構えた!

 しかし登場したのは、なななんとMammy-D。えーっ!旗を降る。叫ぶ。マミー~!20周年のトリビュートアルバムバージョンでの『本能』だよ。ラップ調にアレンジされた小気味よいリズムにグルーヴ感が増す。もう既に最高潮。曲の終盤にさしかかる。舞台後方上部に動きがみえた。そしてDが「まるであの日ガラス叩き割ったナース!」とキメる。1小節タメる。

『約束は要らないわ~♪』

 やっぱり上だ。椎名がいた。王冠を被っての欧州王室の装い。ガラスに囲まれていた。正拳突きと前蹴りでそれを割る。旗振った。いや両手を振った。叫んだ。ウオッ~!りんご~!涙が出た。勝手に出ちまいやがった。椎名がおがめないじゃないか。降りてきた椎名は舞台のセンターへ。Dとバンビ&アイが渾身のバックアップをする。割ったガラスは白衣のスタッフが箒で掃いて後始末。

 そうあのMV。ナース姿でガラスを割るという同じシチュエーションの演出だったのだ。それを皮切りに椎名は時間を支配し駆け巡った。至極の空間。髄液が全身を駆け巡る。そして体感二分間、夢の二時間が終演した。

捌、『同じ時に遇えた幸運を繋ぎたい』
 『不惑の余裕』は文字通り博覧会であった。楽曲それぞれの世界観が圧倒的な質量で凝縮されていてひとつひとつがそれぞれの形で心に突き刺さった。

▪『APPLE』の映像と咥えた林檎
▪『神様、仏様』アウトロの圧巻ダンス
▪『化粧直し』の心地よいブレイク
▪『若女将』のグリーティング
▪『カーネーション』の極限の美しさ(泣いた)
▪『歌舞伎町の女王』のドン・リンゴーテ
▪浮雲の客演待遇による新鮮さとテッパンの緩さ
▪『スキトキメキトキス』のざわつき
▪トータス・ミヤジ・レキシの参上
▪『ジユーダム』の「わーい🔨*\(^o^)/*🔨」
▪『はいはい』の実演
▪『夢のあと』の唸り(泣いた)
…エトセトラ

枚挙に暇がない。その中でも余韻に浸って一番反芻するのは…

  『本能』

なんだ。 ーみんなのイメージが正しかったのね(笑)
 

玖、椎名の才能に溺れていたい理由
 そう、誰もが知ってる椎名はすぐそこに居たんだ。

 『私に選ばれた皆様です。』って趣旨のMCをさいたまアリーナ2日目で語ったのもきっと近くに居たいから出た言葉なんだね。

 何を演ってくるのかわからないのは、貴女はオチャメさんだから皆を驚かせて喜ばしいたいんだね。

 だから私も貴女の近くに居て、いつもその電波を感じていたいんだね。
 

 『不惑の余裕』はそれを教えてくれた。
 わかったよ椎名。

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