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2017年5月12日

黒田往宏 (30歳)
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空にまいあがれ!

真心ブラザーズが歌う、失恋を認める方法

 失恋。

 それは人生の中で何度も経験することなのに、何度繰り返しても慣れないことを言う。

 しばらくは世界が終わってしまうかのような絶望感に苛まれる。青く広い空を見ていても、なんとなく空虚。道路の脇にたまる花びらなんかを見ただけでも、遠くにいる「君」を思い出す。

 そして、僕は思わずイヤホンを耳に入れる。「失恋ソング」を選択し、その辛さをより実感する。辛くなるのに聴いてしまう。

 音楽って怖い。

 もしかしたら神様は、僕にこの曲の良さを理解させたかったから、失恋させたんじゃないか、なんてよくわからない思考に陥る。

 「空にまいあがれ 幸せな日々よ
  風の中で君が僕を見て笑った」

 失恋というカテゴリーにおいて、「おすすめ」なんて言葉はふさわしくないかもしれないが、真心ブラザーズの「空にまいあがれ」は別れにふさわしい曲だと思っている。
 
 この曲が発売されたのは1996年、今から21年も前だ。YO-KINGの声も心なしか若く聴こえ、優しい歌声とは言えないのだけれど、なぜか心の琴線を震わせる。

「空にまいあがれ 幸せな日々よ」

 YO-KINGのしなやかに伸びるような声は、青く高い空に響く。僕は思わず空を見上げる。ぐっと高く伸びをしながら、空の上を見上げる。その向こうにいつかの幸せな日々が見える。
悲しくて寂しいはずなのに、なぜが少しだけ幸せな気持ちになる。

「風の中で君が僕を見て笑った」

 真心ブラザーズには、「流れ星」「橋の上で」「この愛は始まってもいない」という、有名な別れの三部作というのがある。大いに悲しみに浸るとき、この三部作は僕の心をチクチクと刺す。
 「空にまいあがれ」はこれらの曲とは少し異なる。未練がましくもなく、それでいて投げやりでもない、「君」を懐かしく思い、それでいて、僕はこれからも進もうとする。

「君に会えてよかったよ 僕らお互いすごいのさ
 僕は僕を続けるよ 明日からも」

「空にまいあがれ どこまでも高く
 風の中で君が僕を見た気がしたよ」

 よく考えると、「空にまいあがれ」を聴く頃には、失恋の辛さも、悲しみも、君がいない寂しさも受け入れて、少しずつ前に進み始めているのかもしれない。

 終わりは何かの始まり、なんてよく人は言うが、真心ブラザーズは違う。
 忘れられないことは忘れなくていい。
 君と会えたことを「よかった」と歌う。それを受け入れて、僕は進む。そこには「君への」感謝とともに、少しの決意がある。

 あれだけ落ち込んだことも、つらかったことも、空にまいあがって、高い空に消えていく。

 真心ブラザーズは9月に新しいアルバムを発表するという。年齢を重ねるにつれ、YO-KINGと桜井秀俊は大人の魅力を増す。いつ見てもかっこいい。

 楽しみだ。

 僕は青くて広い空を見上げる。9月まで、なんとか僕は僕を続けるよ。

 風の中で「君」が僕を見た気がした。

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