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ポスト平成の「新時代観」とは。

マテリアルクラブ『WATER』を聴いて

マテリアルクラブ 『WATER』

 小出祐介(Base Ball Bear)が福岡晃子(チャットモンチー済)を迎え始動したプロジェクト「マテリアルクラブ」のデビューアルバム『マテリアルクラブ』中の一曲である。従来ロックバンドという形式で活動してきた二人が、打ち込みやシンセ、ラップ・フローなど今まで使用してこなかったフォーマットを多用したことで話題を呼んだ。アルバムの初期に完成した同作はまさにこのアルバムを体現する作品となっている。シンセのサウンドと波音から曲が始まり、揺らぐ水面のような曲調・メロディーから歌詞が続く。<“永遠に飲めるような 水を作り出したいな”>。思わず聴く者を吸い込んでいく。

 しかし、その本質は実に「ロック」であることをすぐに知らされる。曲の展開とともに歌詞を読み解いていくと、小出と福岡の試行錯誤がうかがえる。<シンセ 見つからない しっくり来る音源 仮入ればっかで決まらないよ 今日もどうせ だけどまた 代入 to the 代入 やめるわけにいかないこの研究>。メインストリームである<“わかりやすさが正義” 結果出してるやつの方程式>に囚われずに<比喩の海>という“わかりづらさ”へとダイブする姿は、まさに消費社会に疲弊した現代へのメッセージなのではなかろうか。

 そうして海へと潜っていった先の<水中都市>の住民はみな、<逃げ遅れた者同士>なのである。太陽の光から遠く離れ、強さも弱さも関係なく、みんな同じ青に染まる。主流も亜流も、強者も弱者も、全ての属性が無関係な世界へと聴き手を連れてゆく。さらに深度が下がっていくと、日本が歩んできた歴史が映像のように立ち現れてくる。<朽ち果てた(日比谷)公会堂>に象徴される日本の黎明期。続く昭和の<戦争と消耗からの復興>。高度経済成長による<スクラップとビルド 0から1へ向かう苦労>。<文化の豊饒> としての“先進国ニッポン”。しかし、我々が見てきたそれらの発展は永続的な現象だっただろうか。

 バブル崩壊。失われた20年。サリン事件。世紀末。リーマンショック。震災。原発事故。平成の終焉。それらを乗り越え、また現在日本は緩やかな回復傾向のもと新時代を迎えようとしている。次の世代の私たちはどう生きるべきなのであろうか。「中身」のない<がらんどう 空っぽの容器ほど>大衆によく響き、たびたび過ちを生んできてしまった。カネを稼ぐこと。売れること。派手に遊ぶこと。バブルの時のように誰もが「1000万」を目指す時代は終わった。この曲は、小出・福岡のように平成を生きてきたポストバブル世代の「現代観」、あるいは「新時代観」を主張する一曲である。<水に浸っていたいな 笑うような 体がとけるような 弱くな 強くもない 気持ち良いゆらめきの>。そのような生き方こそが、次のライフスタイルなのではないだろうか。新時代と共に社会に羽ばたいていく就活生の私も、肩の力を抜いて、私でいることを許せる気がした。

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