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9th Album『眺め』の意味

9枚目にして到達した"おとぎ話"というオリジナル

有馬さんの歌詞は、不安や疑問、葛藤、苦しみ、悲しみに対しての答えでなく、視点の角度からヒントをくれたり、ほんの少し未来を語りかけてくれる。歌詞にメロディがついておとぎ話が演奏することで、生きること、生活、幸せのヒント、少しの未来が心と身体に沁み渡る。ライブに行けば、セットリストや会場、季節によって曲の響き方が変わってくる。有馬さんの歌詞も、唄もおとぎ話の演奏も最初からそうなっていたように思う。寄り添うことをがむしゃらに表現してきたのがおとぎ話だった。特に『THE WORLD』まではそうだった。『CULTURE CLUB』以降どんどん純度が高まり「あきらめの境地」と語った9枚目のアルバムはどんな意味があったのか、バンドに何をもたらしたのか。

『眺め』のスタンスとして、まさに”眺め”ている状態は、一見ただただ俯瞰しているだけのように感じるがそうではない。実際インタビューでも「今までと何かを変えようとはしていない」と語っているし「やりたいことを素直にやった」「今までで1番、言いたいことを書けた」とも言っている。つまり『眺め』は、それまでのアルバムと比べて根本的に特段変わったことをしていない。ただ、肩肘を張らずに、よりストレートに表現したことで、有馬さんが本来持っている寄り添うような言葉の紡ぎが鮮明になった。アレンジも演奏も歌詞と呼応するように変化した。『眺め』を通しで聴いたときに覚える、優しい感動や不思議な安心感は、そういうことだと思う。でも、これは『眺め』の特徴であり、意味ではない。

リリースツアー(絶景)を経て、THE BOY WITH THE O.T.G.Vを観て、ようやく気付いた。『眺め』を知って、新しいおとぎ話を刻み込んだことで、過去の曲すら響き方が変わっていたのだ。まるで全てが『眺め』であるかのような。ファンダンゴ、TOKUZO、FEVERで味わった感動は、単純に曲のラインナップや順番による魔法ではない。『眺め』と、このアルバムを作り上げたバンドの精神性がもたらした、時空を飛び越えた壮大な魔法だ。『眺め』は、全キャリアに影響を与えた。本質をほんの薄く覆っていたオブラートのようなものを透明化してみせた。もちろん全ての作品があっての『眺め』だ。これまでの20年近い真摯な活動があったからこその作品だ。おとぎ話は、9枚のアルバムでおとぎ話にしか到達出来ないオリジナリティを完成させた。ぼくたちはそれを目の当たりにしたことで大きな感動を覚えた。

そしてもう一つ、風間さんと前越さんが『眺め』で確立させつつあるグルーヴ感も過去曲に波及している。2018年12月30日、新代田FEVERで披露された”運命”は圧巻だった。うねりまくるリズムは有馬さんが当時から思い描いていた理想の姿だったに違いない。2015年繰り返し演奏されていた”運命”のそれとはまるで違っていた。

全ての曲が新たなグルーヴを纏い、全ての歌詞が『眺め』のように寄り添う優しさと不思議な安心を纏った。『眺め』の曲と組み合っても、妙な違和感が全くなかったのはそのせいだ。

「(眺めは)到達点ではあるけど、新しい扉は次にある気がする」インタビューで有馬くんが何気に発したこの言葉は『眺め』の意味をごく端的に表しながら、次を見据えている。2019年、おとぎ話は新しい扉に手を掛ける。

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