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私が壁に触れたときのこと

NICO Touches the Wallsと何度も出会う

 音楽との出会いはいつも唐突だ。

 私がNICO Touches the Wallsと出逢ったのはアニメのオープニングで『ニワカ雨ニモ負ケズ』を聞いた時だった。当時中学生だった私は音楽に興味がなく、アニメのオープニングなどは大体早送りするタイプ。そしてその日もいつものように早送りボタンを押そうと思っていた。
 押さなかった。
 押せなかった。
 ギターの疾走感のイントロに聞きほれて、気が付いたら最後まで見ていたのだ。映像がかっこよかったというのもあるのかもしれない。歌詞の意味はよくわからなかったけど、語感は好きだった。記憶が曖昧だが、この時バンド名も確認したと思う。NICO Touches the Walls。今でこそ何も見ずに打てるが、当時は大文字と小文字の感覚で何となくしか覚えていなかった。

 それからは姉がCDを借りていたらしく、iPodのシャッフル再生でたまに聞いていた。相変わらずバンド名は覚えていなかったが、この曲いいな、誰の歌だろうと思って画面を確認するとそこには感覚で覚えたバンド名があった。このころにはなんとなくNICOぐらいまで認識できるようになっていたと思う。

 そして晴れて大学生となった私は姉にJAPAN JAM 2018に連れていかれた。どこでその情報を知ったのか、姉は「あんたNICO好きだったよね?」とNICOのステージに連れて行ってくれたのだ。
 ここで確認しておきたい。バンド名があやふやということはメンバーの顔もあやふやということだ。
 金髪にグラサン、白パーカーに真っ赤なギターを抱えた人がボーカルの位置に立った。たしかボーカルは爽やかな黒髪の人だった気がするから、この人はゲストボーカルの方かな。と本気で思った。四人だったはずのメンバーが五人ステージに出てきたこともその推測を後押しする。どういう状況なのだろうかと混乱しているうちに曲が始まってしまった。知らない曲だったが、その声は確かに知っていた。いつもイヤホンで聞いている声。

 金髪兄ちゃんはNICOのギターボーカル、光村龍哉さんだった。

 その日のセットリストは知らない曲だらけだったが、生でものびやかで余裕が感じられるのに勢いのある演奏に圧倒されて、最初から最後まで心が奪われていた。メンバーに対する混乱もその音楽に吹き飛ばされた。

 この日一番心に残っている場面は『手をたたけ』と『マシ・マシ』がメドレー形式でつながったところである。『手をたたけ』を光村さんが歌いだしたとき、「あっ知っている曲だ」という空気が私含め観客のなかに流れた。しかし、みんなで手をたたいて楽しい雰囲気になっていたら、一番が終わったとき突然リズムパターンが変わったのだ。観客の頭の中に「えっ??」以外の感想はない。そして、裏拍で手拍子をする軽めの『We Will Rock You』のような『マシ・マシ』のリズムで、『手をたたけ』の二番が始まった。このリズムでの『手をたたけ』はとにかくかっこよかった。まさに金髪白パーカー赤ギブソンギターって感じのかっこよさだった。伝わってほしい。この衝撃は私にとって新たなNICOとの出会いだった。

 こんなアレンジもできるのかと驚いていたら、またまた突然転調した。再び「えっ??」という感想が頭に浮かぶ。そして光村さんが知らない曲を歌いだしたのだ。のちにこの曲が『マシ・マシ』だとわかるのだが、観客側の「え、曲変わったんだけど」という置いてけぼり感すらロックを感じた。

 この日の帰りの電車でとにかくたくさん調べた。この日のセットリスト、私が知っている曲と知らない曲、メンバーの顔と髪色、五人目のメンバーとして勘違いしたサポートメンバー、ワンマンライブの日程…
 晴れて、ファンに仲間入りしてしまった。

 知らない曲が入ったCDをかき集め、聴きあさり、ファンを名乗れる状態になってから、幕張イベントホールで行われたツアーファイナルのNXA TOUR-Funny Side-に参加してきた。このツアーは通常のライブハウスでのライブを-Electric Side-、アコースティックライブを-Acoustic Side-、野外でのライブを-Lake Side-、そして追加されたホール公演を-Funny Side-と銘打っている。
 Funny Sideだけぱっと見では意味が分からなかったが、公式Twitterで説明がされた。「ミステリーゾーン」と称した30分のコーナーを作って様々な曲を切り刻んでつなげて演奏するというものだった。これによりライブ全体の曲数はおよそ40曲になるともアナウンスされた。つまりJAPAN JAMの時感じた興奮が30分続くということだ。まさにFunnyである。

 ベースの坂倉さんがギターを弾く『N極とN極』でライブが幕開け、5曲ほど演奏したところでミステリーゾーンが始まった。最初は1stシングル『夜の果て』だった。そこからの記憶は正直あまりない。数秒で曲が変わったり、もはや違う曲を同時に演奏したり、音源とは全く違うテンポで演奏したりとその時々についていくのに必死だったし、それが楽しかった。だから全体の記憶はあまりない。実際に後日、あげられたセットリストを確認したが「こんな曲あったっけ?」と思う曲がいくつかあった。
 ミステリーゾーンの中間で唯一フル演奏されたインディーズの頃の楽曲である『プレイヤ』をはじめとして、ミステリーゾーン全体としてどこか異世界に連れていかれた感覚になった。全部つながっているのに曲が変わるごとに新しいNICOに出会うようなアンビバレントな経験をした。

 アニメのオープニングでたまたま曲を聴いて、iPodで聞いていいなって思って、フェスでアレンジに衝撃をうけて、ワンマンライブで新たな感覚に陥る。NICOは曲の幅が広いとよく言われるが、逆に新しいNICOに会えるともいえる。私はNICOらしいなんて曲に出会ったことがない。これからも何度も何度もNICOに出会いなおしたい。そしてもっと多くの人がその時々のNICOに出会ってほしいと思っている。

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