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サザンオールスターズは伝説なんかじゃない。

平成最後のNHK紅白歌合戦、熱狂と混沌の先に見た「新しい時代への希望」

「平成」という時代が平成31年を以って終わる。
平成生まれの僕としては、自分の生まれた時代がひとつの節目を迎えることに寂しさとも不安とも違和感とも言えない複雑な思いがあった。生まれた時からずっと同じだった時代が終わりを迎える、ということをどうも自分の中で上手く整理できず、平成が終わると決まった頃から心の片隅にモヤモヤとした思いをずっと抱いたままだった。

平成最後の〇〇。昨年の5月以降、日本中にそんな言葉が溢れていた。平成最後の夏に平成最後のクリスマス、そして2018年の12月31日は平成最後の大晦日となったし、その大晦日に毎年放送される「NHK
紅白歌合戦」も、「平成最後の紅白」となった。
そんな平成最後の紅白は、国民的音楽番組と称される通り、どんな世代も楽しめるような番組だった。若手としては新進気鋭のSuchmosやあいみょん、DAOKOが若い力で番組を盛り上げたと思えば、五木ひろしに坂本冬美、石川さゆりに北島三郎まで、この番組を毎年盛り上げているようなベテラン達の風格に思わず圧倒されてしまう。嵐や関ジャニ∞、純烈ら男性アイドルがキラキラとNHKホールを、そしてお茶の間を黄色い歓声に包めば、乃木坂46や欅坂46ら女性アイドルは会場を華やかに彩り、aikoや椎名林檎、MISIAら女性シンガーは色めく世界観に会場を没入させ、星野源や三浦大知、そしてメディアに滅多に出ることのない米津玄師が圧巻のパフォーマンスを魅せる。ミュージシャンだけではなく、昨年大ブレイクした「チコちゃんに叱られる!」のチコちゃんをはじめとした、多彩なゲストや司会の広瀬すずや嵐の櫻井翔に内村光良、音楽番組という枠を超えた多彩な出演者が番組を大いに盛り上げた。放送時間の5時間半、ずっとクライマックスなお祭りを見ているような紅白歌合戦。「音楽」を通して「平成30年」を総括すると同時に「平成」という時代そのものをも総括してしまった平成30年の紅白歌合戦は、まさに「平成最後」の名に相応しい番組になっていた。

中でも番組の最後に、つまり平成最後の紅白の最後に歌唱したサザンオールスターズのパフォーマンスは、僕にとって一生忘れられないであろうものになった。

サザンが最初に歌ったのは、跳ねるようなピアノのイントロから始まる「希望の轍」。僕は普段からサザンオールスターズが大好きで、「希望の轍」だってもう幾度となく様々な場所や場面で聞いてきた曲だったが、「平成最後の大晦日」ということを踏まえてこの歌詞を耳にしたとき、普段とは違った感情が沸き上がった。

《夢を乗せて走る車道 明日への旅》
《通り過ぎる街の色 思い出の日々》

これまでの日々に思いを馳せつつも、未来への希望や夢が詰め込まれた一節から始まる歌詞は、平成が終わろうとしているこのタイミングで聞くことで、平成の日々と次なる時代を歌う歌詞へと変貌を遂げる。「轍」とは通り過ぎた車輪の跡のこと。どんな人生でも時代でも、それまでの経験や出来事や起こった事象、つまり「轍」を振り返ることで、次の課題や舞台へと活かすことができる。「希望の轍」とは、「これまでの道筋」から「これからの道筋」に希望を見出すということであり、それはこの紅白の舞台で演奏されることで「これまでの道筋」は「平成、そしてそれ以前の日々」に、「これからの道筋」は「次の時代」へと無意識のうちに視聴者である僕たちの頭の中で置き換えられてしまう。だからこそ、あの紅白で見た「希望の轍」はあの特別な「平成最後の大晦日」の夜にフィットし、僕がこれまで見てきてどんな曲よりも底なしにポジティヴなムードの溢れる、まさしく「次の時代への希望の歌」になっていたのだ。

「希望の轍」の演奏が終わると、コール&レスポンスを経て始まったのは「勝手にシンドバッド」。サザンオールスターズの原点にしてはじまりの1曲だ。40年前にサザンがデビューした当時、彼らは色物バンドとしてメディアに露出し、桑田佳祐は「目立ちたがり屋の芸人」と自らを俗物としておどけるようにテレビの中で歌っていた。僕はその映像を何度となくテレビの特番で見たが、汚いライブハウスで客に囲まれながら無茶苦茶な演奏で歌うサザンは、何度見ても今のイメージからは到底考えられない姿だった。
あれから40年、「目立ちたがり屋の芸人」はいつしか「国民的バンド」と呼ばれるようになり、ついには国民的音楽番組である紅白歌合戦の大トリを務めるほどになった。もう「目立ちたがり屋の芸人」だったあの頃とは全く違うのだ。
なんて思いながらテレビを見ていたが、そこにはあの当時のライブハウスの映像さながらにシャウトし、舞台を縦横無尽に暴れまわり、カメラに限界まで近づきながら歌い、小指を立てたり股間を指さしたり、まるでデビュー当時のような気迫と熱量と俗物さに満ちた桑田佳祐、そしてその姿を後押しするように演奏するサザンのメンバーがいた。ああ、これこそがサザンオールスターズなのだとその姿を見た僕は感動すら覚えた。いつだって彼らは全力投球で、目立ちたがり屋で、時々休みながらも僕たちを楽しませてくれて、スマートじゃなくてむしろ泥臭い。それがサザンオールスターズじゃないか。

そしてこの「紅白歌合戦」はここから、これまで以上のクライマックスを迎える。
「勝手にシンドバッド」の演奏が中盤から後半に向かってスパートがかかる瞬間、これまで番組を彩ってきた出演者たちが一挙に舞台に上がる。サザンオールスターズを中心に、平成という時代を彩ってきた幾多もの音楽家たちの邂逅は、どんな音楽フェスや音楽特番とも違う、「この夜この瞬間にしか見ることのできない、何か特別な予感」に満ち満ちていて、見ているだけでドキドキが止まらなくなる。

「サブちゃーん!!!」と大先輩である北島三郎のことを指差しながら思わず愛称で呼んでしまう桑田佳祐と、それにニコニコしながら近づく北島さんのツーショットも圧巻だったが、さらに凄かったのが松任谷由実との掛け合いだ。同じ時代を共に音楽シーンの第一線で戦ってきた日本音楽シーンにとっての宝のような存在である桑田佳祐とユーミンが、まるで場末のスナックでカラオケを歌うかのように腰に手を回し、頬にキスをしている。そのなんと自由で、俗物で、なのにどうしようもなく素敵なことか。昭和にデビューし、平成という時代を1分1秒欠けることなく「音楽家」として駆け抜け、音楽で日本を元気づけてきた2人が、紅白歌合戦という日本で一番の音楽番組という大舞台で自由に歌い踊る様は、平成生まれの新進気鋭の若手ミュージシャンや、今後の音楽業界を牽引していく中堅のミュージシャン達に、もっと言えば僕たちのような所謂「平成世代」に「こんな風に自由に生きていてイイんだぜ」と見せつけている様で、同時に「俺たちだってまだ現役だぞ!」という宣誓のようでもあった。

いつしか僕の中にあった次なる時代への不安や複雑な思いは、これから先伝説として語り継がれていくだろう紅白の放送終了と共に無くなっていた。平成時代を支え、引っ張ってくれたのはサザンのような「昭和世代」だった。平成を駆け抜けてきた彼らだからこそ、彼らは平成最後の紅白の大トリという舞台を背負い、その期待をいとも簡単に越えるようなパフォーマンスをしてしまうのだ。春からは自身最大規模のツアーも控え、未だに現役としてシーンの最先端を走るサザンオールスターズは、伝説なんかじゃない。現役で走り続ける最高にカッコいいロックバンドだ。次の時代も彼らの音楽は日本中で鳴り続けることだろう。僕たち「平成世代」も負けていられない。サザンのパフォーマンスを通してそう思えたことが、僕にとってなによりも「次の時代への希望」だった。前世代の皆様のお力を借りながらも、「平成世代」として次の時代を支えるような存在でありたいし、あの夜テレビに映っていた熱狂のような自由さをいつも胸に抱きながら生きていきたい。

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