1780 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

「アジカンのラストアルバム」を軽やかに超えていく

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ホームタウン」に寄せて

アジカンのオリジナルアルバム「ホームタウン」が発売された。
実に3年半という月日を経て、だ。

発売と同時にあるいは発売に先立って、各メディアで掲載された彼らのインタビューを読むと、制作に至るまでの紆余曲折が明らかになり、彼らがいかに曲作りなり、アルバム作りなりに真摯に取り組んだ充実の期間だったがよく分かる。

実は私は前作のオリジナルアルバム「Wonder Future」(2015)を聴いたときにある予感が脳裏をよぎった。

「アジカンはこのアルバムで最後になるかもな」

結成が96年だから、この時点で20年経っている。
「バンドを20年もやってれば、どうしたって綱渡りになってくる」というスペースシャワーTVでの当時のゴッチの言葉を素直に受け止めたということもあるが、何より「Wonder Future」が出色の出来だったからだ。

崩壊アンプリファーに始まり、君繋、ソルファまではアジカンは空前の熱狂の中にいた。

本人たちですら制御できない饗宴にあって、溜まり溜まったストレスを吐き出すでもなく、吹き飛ばすでもなく、ただ祈るように発売されたファンクラブ。

ミュージシャンとしての技術や気力が充実しまくって一皮剥けたワールド ワールド ワールドとサーフ ブンガク カマクラ。

凄腕ミュージシャンをサポートに迎え、ゴッチのソングライティングも冴えに冴えまくり、ある種の絶頂の中にいたマジックディスク(私の中で長らくベストの位置にいたアルバムでもある)。

その絶頂の裏で進行していたバンド崩壊の危機の最中に起こった震災の影響を真正面から受け、社会性をこれまで以上に強く帯びるようになって帰ってきたランドマーク。

こういった歓喜と絶望を反復飛びしながら大きくなっていったバンドが「どうしたらメンバーが嬉々として演奏するか」を考え、ヘビー&ラウドを標榜してリリースした「Wonder Future」は素人の自分が聞いてもこれまでのアルバムとは一線を画していた。まず音が太い。そしてシンプルで端的な8ビート。かっこいい。Foo Fightersのプライベートスタジオでレコーディングしたというこの作品は、20年間クヨクヨしたバンドがようやく「どうだ!!」と胸を張ったように見えた。それはベテランが引退試合でホームランを打ったときのような感動と爽やかさに満ちていた。単なるベテランではなく、一級品のベテランであることの何よりの証明だった。幕引きとするにはこの上ない状況じゃないか。

私は焦燥にかられてツアーチケットを買い、国際フォーラムの端っこに一人座って、いつ落ちるともしれない綱渡りをする四人の姿を目に焼き付けた。ホールを後にした私は素晴らしい演奏、楽曲、演出に酔いしれ、「あんたらすごいバンドだよ。お疲れさま」と有楽町の居酒屋で残像になった4人とビールで乾杯したのだった。
 
 
 

とんだ笑い話である!!!!

アルバム発売の翌年にはニューシングルが出て、ソルファの再録、ベスト発売、そして何よりこの「ホームタウン」だ!!そういえば、ライブのMCで「来年は20周年だからいろいろ考えてるよ」ってゴッチが言ってた気がする。

なーにが「これで最後になるかもしれない」だよ!

彼らはそんな訳知り顔のファンの妄想なんてどこ吹く風で最高のアルバムを作ってたんじゃない!!
良かったような、恥ずかしいような、だ。
 

ともあれ、「ホームタウン」である。
1曲目「クロックワーク」を聴いた時点で、アジカンのアルバムで何度目かわからない衝撃を受けた。街の雑踏音から印象的なギターのアルペジオが入ってくる。そしてボーカルがまるでずっとその雑踏の中にいたかのようなさり気なさで気負いなく歌い始める。そこへドラムのキックが号砲を鳴らすと突然壮大なコーラスへと突入する。

「かかか、カッチョイイ……」

このアルバムへの期待が一気に膨らむ。
素人なので、彼らがこだわった低音云々の話はわかってないかもしれないが、印象としては各楽器の位置関係に奥行きが感じられた気がする。ベースやドラムのキックが遠くからなり、スネアやギターが手前で鳴っている感覚。とにかくいろんな音が別々に聞こえる。そうなるとディテールが聴きたくなる。流し聴きができない。夢中になる。「これはなんつーか、困ったアルバムだぞ」とニヤニヤしてしまう。

気づくと口ずさんでいるのは「クロックワーク」「サーカス」「荒野を歩け」「UCLA」「さようならソルジャー」「ボーイズ&ガールズ」。歌うとやっぱりアジカンの曲は気持ちがいい。歌詞の語感がメロディーにマッチしていて、無理がない。その歌詞もまた、無理のない肯定感に満ちていている。彼らが歌う対象は年々広がっているにもかかわらず、ぼやけることなく確実に個人の射程に届いてくる。

インタビューを読むと彼らがいかに音楽を愛し、楽しみ、そしてそれを自分たちだけで消費するんじゃなく、共有しようという意識が強いかがわかる。それはツアーに若手のインディーミュージシャンがフロントアクトとして、多数参加していることからも読み取れる。「このアルバムをきっかけに色んな音楽を愛してよね」と言われているようだ。

演奏、音作り、メロディーセンス、ソングライティング、そして何より音楽への愛情。これまで四人が真摯に取り組んできた全てが形を成し、ニューアルバム「ホームタウン」に詰め込まれている。

あー、どうやらこの人達引退しないくせーな。
私はツアーチケットを購入した。今度は肩の力を抜いて、軽やかに楽しめそうである。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい