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ハンバーグを食べさせてくれた、愛しいエンジェル

青春を終わらせてくれた銀杏BOYZ 随想録

 
10年前に知り合い、4年半付き合った彼に振られた。振り返ってすらもらえなかった。もちろん自分にも非があるが納得はいかないし、何より私の全てだった。私の中の判断や思考の軸が彼だった。たかが23年間の人生だけど、今までの私の全てで、これからの私の全てだった。唐突にプツリと切れた繋がりは、褪せた思い出だけを残していった。まだまだこれからだよとも言われるし、私自身もそう思う。けれども幸せ貯金は下ろせないし、目の前の霞んだ景色には耐えられない。誰にも言えず、3日間ご飯が喉を通らなかった。

仕事をしていれば忘れられるし、帰宅後は解けるように眠ることでなんとか虚無感を回避していた。
しかし何より驚いたのは、通勤就寝前に聴く音楽を聴けなくなったことだ。今までの辛い時にもいつだって側にいてくれたヒーロー達も、その時は私を責め、追い立て、孤独にして行くように感じた。
3日間絶食し、電車内で涙が堪えられなくなった時、頭の中に1つのフレーズが流れてきた。

「hello my friend 君と僕なら永遠に無敵さ
さようなら 美しき傷だらけの青春に」(エンジェルベイビー/銀杏BOYZ)

愛しいエンジェルが現れた。
永遠を信じていた、2人でなら無敵だった、美しくキラキラ輝いていた、今となってはボロボロの青春が、風のようなメロディに乗って頭の中を駆け巡った。
救われた気持ち、とは言えないが、落ちた涙は1粒で済んだし、その日の夜にはハンバーグを食べることができた。あのハンバーグを忘れることはないだろう。
 

この時浮かんだ音楽が銀杏BOYZで、峯田和伸の音楽でよかった。長年一緒にいた彼は、銀杏BOYZを聴く私を好まなかったのだ。彼ではなく銀杏BOYZが私の涙を止めてくれたことは、私を私たらしめる何かを示してくれたように感じた。

しかし、これは銀杏BOYZや峯田和伸を崇拝・感謝する文章ではない。
あのフレーズの先には続きがある。

「ロックンロールは世界を変えて 涙を抱きしめて
あの子のちっちゃな手を繋がせて ねえ エンジェルベイビー ここにしかないどこかへ」

確かに銀杏BOYZは私を泣き止ませてハンバーグを食べさせてくれた。
けれども世界を変えてはくれなかったし、涙を止めるだけで抱きしめてまではくれなかった。
依然私は孤独で、何も掴めず、ここにしかいられない。
銀杏BOYZは私を救うヒーローではなかった。

もう少し、あと1歩寄り添ってくれ。すがる思いでさまざまな楽曲を巡った。けれど何度でも頭に浮かぶのは、エンジェルベイビーだけだった。
そばにいてくれたのは、エンジェルベイビーだけだった。
 

世界を変えて、涙までも抱きしめてくれるロックンロールにはまだ出会えていない。私の世界は相変わらず灰色で、時には涙が落ちてここから動けていない。
かつて銀杏BOYZが自身のドキュメントDVDのタイトルにしたように、やはり「僕たちは世界を変えることができない」のかもしれない。

けれどそれでもいい。毎日起きて電車内でも泣かずに出勤し、ご飯を食べて眠る。人肌は恋しくなるが、穏やかな日々が戻ってきている。自分のために時間やお金を使い、自分を軸にして自分を生きる気持ちが出来た。こうやって自分を振り返り、書き起こしている今、気持ちが出来た。

「あなたは僕の始まりで、あなたは僕の終わり」(新訳 銀河鉄道の夜/銀杏BOYZ)

たった今、このフレーズが頭に流れた。
エンドロールのように、このフレーズで私のこの10年の青春、私の全てが終わった気がした。
案外スッキリあっさりした気持ちになってしまった。
始まれば終わるということを、認められた。
 

いつか、唐突に頭の中に世界を変えるロックンロールが流れるのだろうか。
その時にはどんなヒーローが助けてくれるのだろう。
銀杏BOYZは今度こそヒーローになれるだろうか。

いや、銀杏BOYZはヒーローでなくていい。
どん底にいたって、満ち溢れていたって、ひょっこり現れてそばにいて、私にハンバーグを食べさせてほしい。

初めて自分のために書いた文書は、今までになくいびつで、強がりで、情けない。
それでも、自分のために書きたいという気持ちに素直になって書いてよかった。
前述した通り、これは感謝文ではない。
けれど1度だけ。ありがとう。

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