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ほんとにそう思ったんだ

YUKIの歌声に感じる母の思い

故郷の母からの荷物が届いた。段ボールの中には「体調崩さず頑張りなさい」というメモとともに、たくさんの荷物が詰め込まれている。
母に聞くと、母の日のプレゼントのお返しだという。こんなにたくさんお返しをされると、僕が渡したプレゼントとは割が合わないよ。なんてことを考えながら、いくつになっても、母は息子のことが心配なんだなと感じた。

母の愛情は無償の愛だ。こんな歳になって、お母さんありがとう、なんて言うことすら照れくさい。いつまでも母に愛情を注いでもらうことすら恥ずかしい。
それでも母に心配はかけまいと思っている。母のためにいつかは恩返しがしたいと思っている。だって、トラブルメーカーでお馴染みのoasisのリアム・ギャラガーですら、母の話をしながら涙を流すのだ。胸を張って「お母さん愛してる」と言える方が、むしろロックなのかもしれない。

さて、母の愛と同じくらいに僕の心を支えてくれる歌声がある。今年でソロデビュー15周年を迎えたYUKIだ。

社会人二年目の夏だったと思う。僕は神戸国際会館こくさいホールの前から9列目、ほぼ真正面からYUKIの歌う姿を見ていた。

目の前で歌うYUKIはとても可愛くて、いや、むしろ美しかった。まるで絵本の中にいるような舞台セットの中で、彼女は優雅に歌い、踊っていた。

そこには大人の余裕があった。若者のような爆発力があるわけではなく、ベテランのような落ち着きがあるわけでもない。しかし、彼女は女性として、母として、そして一人の歌い手として、自分のすべてをさらけ出していた。

ライブ会場が一体となって盛り上がる中、ライブの中盤、彼女は観客に言った。

「ここからは座って聞いてください。」

初めての経験だった。コンサートの途中で座るなんて。
そして彼女はゆっくりと歌いだした。

「涙の河を泳ぎきって
旅は終わりを告げ
光の音に導かれて
此処まで来たけど」

浦清英氏が弾くピアノの伴奏のみで、YUKIは「プリズム」を歌う。僕は鳥肌が立った。

「YUKIが僕を見てくれた」なんて青臭いことを言うつもりはないが、目の前で歌うYUKIの姿、その目、その顔、そしてはっきりと聞こえるその言葉を聞いていた。

「あなたは今も しかめ面で
幸せでしょうか
愛してくれる優しい人
みつかるといいね」

「三日月が ゆらりついてくるよ
私を見透かして
見たことの無い場所へと まだ
歩いていけると 思ったんだ」

ピアノの音が止まる。YUKIが黙った。会場が静まり返った。まるで三日月がゆらりと輝く草原で、僕は一人でいるようだった。そしてYUKIは息を吸った。

「ほんとにそう思ったんだ」

こんなに美しい歌を聴いたのはいつ以来だろう。
僕は心臓をつかまれ、ぐっと感情を飲み込んだ後、なぜか故郷の母を思った。

僕が幼い頃から母はよく話していた。大きくなったらこの家を出なさい。そして、私がいけなかった場所にどんどん行きなさい、と。
僕たちを一生懸命育てるために、母はもしかしたら自分の可能性を諦めたことがあったのかもしれない。単純な言葉ではあったが、僕は母から何かを託されていると、そう感じていた。

「ほんとにそう思ったんだ。」

YUKIのその言葉に僕は母の心を重ねた。そして母のためにも、もっとしっかりしなければと思ったのである。

月日は流れ、YUKIは今年ソロデビュー15周年を迎えた。
「なにを大げさなことを書いてるの」と、今にも母の声が聞こえてきそうだが、あの日のライブの記憶がよみがえり、僕はYUKIの曲を聴いている。

「近い未来 哀しい事があなたをおそうとしても
私が愛してるから 美しい瞳で見てほしい」

YUKIの「愛に生きて」の歌詞だ。
何があっても愛してくれている。そんな母の愛情を感じながら、僕は実家に帰る電車に乗っている。

家に着いたらこないだ行った、母の知らない街の話をしよう。
母はきっと喜ぶはずだ。

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