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永遠に生きられなくても

銀杏BOYZ 「世界がひとつになりませんように」

 2019年が始まって2週間と1日。私は1限の授業を受けた後、急いでバスに乗った。向かうのは地元の駅。駅に着いたら電車に乗って、そして地下鉄に乗り換える。その後は飛行機だ。目指すのは日本武道館、銀杏BOYZの「世界がひとつになりませんように」。

 銀杏の武道館公演があると知った時、何が何でも行かなくちゃ!と思った。武道館へ向かう坂を一人で登りながら、銀杏のグッズを身につけた人とたくさんすれ違った。それでも、まだ実感が湧いていなかった。武道館の中に入って、席に座って開演を待つ。誰もいないステージを眺めながら、どうして私はこんなに銀杏が好きなんだっけとぼんやり考えていた。
 

 銀杏BOYZの歌詞には、絶対に届かない「夢」と、すぐそばにあるもののような「永遠」がよく登場するような気がする。

“夢で逢えたらいいな 君の笑顔にときめいて” 『夢で逢えたら』

“わたしはまぼろしなの あなたの夢の中にいるの” 『駆け抜けて性春』

“ふたりの夢は空に消えてゆく” 『東京』

“夢でも 夢でも 届かないのに 夢さえ 夢さえ 捨てられない” 『ボーイズ・オン・ザ・ラン』
 

“恋は永遠 愛はひとつ 夕暮れの街 泣いたり笑ったり” 『恋は永遠』

“永遠に生きられるだろうか 永遠に君のために” 『BABY BABY』

“出会えた喜びはいつも一瞬なのに どうして別れの悲しみは永遠なの” 『東京』

“君と僕なら永遠に無敵さ” 『エンジェルベイビー』

普通は逆だと思う。「夢」は頑張り方次第で届いたり届かなかったりする。一方で「永遠」は果てしなくて、まだ誰も見たことがないものだと思う。

私が初めて聴いた銀杏BOYZの曲は、ベタすぎるかもしれないけれど『BABY BABY』だった。どんなシチュエーションで聴くことになったのか、それはもう覚えていない。けれど、“夢の中で僕等 手をつないで飛んでた 目が醒めて僕は泣いた”の部分にひどく打ちのめされたことは、今でもずっと忘れていない。それはもう、サビの“BABY BABY~♪”が遠く聴こえたくらいに衝撃だった。眠りについて、そして起きるということを生まれてからずっと繰り返してきたけれど、それがこんなに残酷に感じられたのは初めてで、とてつもなく悲しい気持ちになったのだ。それでもなお、“永遠に生きられるだろうか?”と歌うこの歌のことが、初めは不思議でたまらなかった。永遠になんて生きられないだろう。だけど、すぐに分かった。これは“かけがえのない愛しいひと”のための歌だったのだ。だとしたら、永遠に生きなくてはいけない気がした。かけがえのない、という重さをその時初めて知った。そして、私にとっての銀杏BOYZもかけがえのない音楽だと言えるくらいの時間が経っていった。

 銀杏BOYZを聴いている時、胸の底の方に溜まったドロドロを両手で救い上げられているような気がする。そして、それの見せ合いっこをしているような気分になる。“ねえ ほんとは僕 こんなんだよ”。それはそのまま、『ナイトライダー』を聴いている時と同じ気持ちだと思う。嬉しいような、恥ずかしいような、やっぱり苦しいような。でも、私はそんな夜に救われてきたのだ。どうしようもない気持ちになった夜は、銀杏の曲を再生させる。誰にも気づいてもらえない私を、銀杏BOYZだけには見せてきた。開演の時間ぴったりに、その人は武道館のステージに現れた。

 銀杏の曲の中の一番好きなフレーズとして、私は『ぽあだむ』の“さみしーから手つないで!”を挙げたい。たったそれだけのことが、私は人より苦手なのかもしれない。どうしても、申し訳ないとか、私なんかとか、そんなことを思ってしまう。私はとても難しい人間で、自分に自信があるようで無い。時には自分でも想像のつかないところでポキリと折れてしまったりする。そんな私に もしも君が泣くならば僕も泣く、と歌うあなたが手を差し伸べるから、私はその手を掴む。“さみしーから手つないで!”。銀杏を好きでいるということは、私にとってそういうことだ。

 2019年が始まって2週間と1日。武道館で過ごした時間は私の永遠になった。あの3時間が、永遠には生きられない私の永遠だと思う。あなたと私の世界はひとつじゃない。ひとつである必要もない。そして、2019年が始まって2週間と2日。私は朝早く九段下のホテルを出て、飛行機に乗って地元に帰った。空港からそのまま学校へ向かった。一人で銀杏を聴く夜は、きっとまたすぐにやって来る。だって、“病んでも 詰んでも 賢者でも バグっても”、私は銀杏BOYZが好きだ。永遠に生きられなくても、永遠に大好きなのだ。

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