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熱く、強い唄。歌う意思に満ちた時間。

石田洋介ワンマンin宇都宮IZAKAYA2019.1.13

この音楽文を利用している人の中でどのくらい「石田洋介」というシンガーを知っている人がいるのだろう。
 

わからないけれど、ざっと書いておくと、シンガーとしてのキャリアはもう30年近く。

ここ10年ほどは、自身のシンガーソングライターとしての活動以外に、ご当地キャラクターのためのキャラクターソングをたくさん書いて歌っていて、そちらのほうがもしかしたら「世間」とやらには通りがいいのかもしれない。
「ご当地キャラクターソングの帝王」という愛称がいつの間にか定着したほどの人だ。

いい歌を歌う。凄い喉をしている。
とりわけここ1年ほどはさらに強い充実を見せていて、声の塊が頬をかすめていくような感覚を何度も何度も覚えてきた。
石田洋介のライブを聴いて、初めて共演したアーティストの多くは感嘆する。それほどの歌い手。
 

最近は自身のサポートバンドにTHE GOT KNEED STONEというバンドを従えているが、この面子もすごい。
ベースは元・バービーボーイズのエンリケ、最近はたくさんのバンドやユニットで一年のほとんどをライブ、ツアーで過ごしている素晴らしい大先輩。
ギターはザ・パーマネンツの田光マコト、ドラムは東京60WATTSほかで活躍している森利昭、キーボードにノロッス・トリオの東海林仁美、コーラスに「歌ってみた」などでも活躍、ゆきゆっき。
 

弾き語り、フルバンド、3ピース…ライブの形態も様々でスタイルを固めない。
どの現場でも必ず異なるスタイル、異なる音を聴かせてくれる、何よりもその声、喉の凄さ。
翳りの強い歌詞、バックボーンに持っている豊かな音楽の素養を惜しみなく注いだ、80年代を思わせるどこか懐かしい音を奏でる。
そういうアーティスト。
 

その石田洋介、2019年最初のワンマンライブは宇都宮IZAKAYA。
山口伊津巳(izzy)というこれまた凄腕のギタリストが経営する料理のとってもとっても美味しいライブレストランでのライブ。

この夜がまた、非常に力強い、全体を通しても覚悟のような、なにかとても強いものが流れるセットリスト、時間だった。
 
 

石田洋介 vo. & g.
東海林仁美 key.
 

「ソウルシンガー」という、自身が何度も救われてきた音楽、先達への敬愛を込めて歌った大きな曲で幕開け、というところでもう違っていた、と思う。

IZAKAYAは店主izzyさんの作る料理が絶品な店なのでオープニングに「おいしいものを食べよう」を持ってきたり、このところの傾向だと明るい曲で始めたりが多かったように思うのだが、今年新年一発目のワンマンは強い、タフな音で始まった。

東海林仁美(以降、ひとちゃん、と呼ぶ)の鍵盤も強い。
石田洋介のどこまでもどこまでも伸びていきそうな声を太い音で支える。思わず客席で声が出る。
時折、歌の隙間を縫うように鍵盤の音が飛び込んでくる、そのカラフルさに客席で痺れる。

いきなり、身体全体と耳とを音で席巻される。

どんな想いで石田さんが歌っていたかはわからない。これは永遠にわからない。だから推測はしない。

が、そこに、何か強い覚悟のようなもの、意思、歌うことへの強い意識は確かに存在していたと思う。
この夜の選曲はどれも、輪郭のはっきりした、太い、強いものだった。
 

何か違うぞ、という思いに包まれているうちにも、ライブは進む。
 

「きたのまち」「すんきでげんき」と、どちらも昨年作られた新しい、しかし、昨年一年、全国でたくさんたくさん歌って練りこんできた曲が続き、これも鍵盤が素晴らしく美しかった。この2曲は、昨夏やはりここIZAKAYAさんで、そして翌日の仙台で、ひとちゃんの鍵盤とのアレンジを初めて披露したのだった、そのことを思い出す。

続いて披露したのは新曲「きずな」。
つい先日の「新春ご当地キャラクター歌合戦」というご当地キャラクターのイベントで初めて世に出たばかりの新曲(作詞は別の方、石田さんは作曲のみ)。
しかも、その際はフルバンドに5人のボーカリストでの歌い継ぎというスタイルだったものを、石田さんのボーカル、ギター、ひとちゃんのコーラス、鍵盤、というガラリと異なる構成で。

このふたりきりの「きずな」もとてもよかった。

歌合戦の際はラスト近くの5人のハーモニーが素晴らしく豊かで、ゴスペルの空気が芬芬だったが、そぎ落とされたシンプルな石田さんひとり(ひとちゃんのコーラスはけして強くはない)の唄にも力強さが漲っていた。
歌い出す前に、いいでしょ、ゴスペルみたいで、と一言。Woo…と何度もスキャットを繰り返していたのが印象的。

歌詞のストレートな明るさをそのまま音にしたような、音が駆け上がっていくサビに世界が開けていくような快感がある、光を感じる曲。
それでも後半、陰りのあるメロディもあって、そういうところは石田洋介だなぁとも思う。
石田さんの原曲はどんな風なのかな…と思っていて、また聴きたいと思っていたので大変に嬉しかった。
言問姐さんのために書かれた曲はなかなか歌われるチャンスがないのだけれど、これはとても普遍的な世界観でもあるしこれからも色んな場で歌ってくれるといいなと思う。
 

ひとちゃんの鍵盤は前々から洒脱だったけれど、ここ1年、どんどんその音が豊かになっていっていると思う。この夜も何度も不意に耳に飛び込んでくる装飾豊かなその音に客席で跳ねたくなる思いがした。
石田さんもその音に任せてみたいのか、「満天の星」では2番の半ばまでギターを弾かずに歌っていた。

客席中を静まり返らせるほどの声量で圧倒して、休憩へ。
 

休憩後は弾き語りを2曲。
Queenのカバー「Teo Torriatte」。そして久々の「静寂〜しじま」。

昨年公開の映画「ボヘミアン・ラプソディ」に触発されて昨年は「レディオ・ガ・ガ」をカバーしたけれども「Teo Torriatte」は若い頃、バンド(吟遊詩人)で活動していた頃にカバーしていた曲なのだそうだ。30年近くぶりに歌う、と。
しかも当時はツインボーカルの低音担当だったそうで、この曲をフルで歌うのは初めてらしい。
「なぜか老化とともに高い声が出るようになった」と少しふざけていたが、昨年からのボイストレーニングの成果でもあるのだと思う。

フレディ・マーキュリーの美しい日本語の歌詞が石田さんの優しい声を通して、心に沁みる。
 

「静寂〜しじま」は本当に久しぶり…おそらくは昨年の長崎以来。
20年近く前、石田洋介トリオ時代の曲。イントロを何度か繰り返し、当時の思い出を少しだけ口にして、それから歌い出した。
歌詞もメロディも密やかでとても美しいバラード。ラブソング。

「Teo Torriatte」のエモーショナルな感触をそのまま引き継いだような、ひとつひとつ音を確かめるような、丁寧な唄だった。
みな、しん、と聴き入る。

歌い終わった後、その空気を振り払うように、この曲は今はもう廃盤のHARVEST TIMEとソニーから出ているこれまた廃盤のオムニバスにしか入っていないことに触れて、しまった、もう手に入らない曲をやってしまった…と笑ってみせた。

そしてひとちゃんを呼び込んで、この先は再び力強い曲を並べる。

実は久々のご機嫌な「ライブハウス」。
懐かしい曲を続けたあとでまさにそれを歌っていた自身の青春時代を俯瞰的に歌ったビートの強い、スモーキーな曲で感傷を振り払うかのようだ。

そして「長いこと歌ってるが実は一度もちゃんと歌えたと思ったことがない、今日は成功したい」(さて、どうだったのか?)という「ハッピーバースデイ」。
自由と魂について歌った、スケールの大きな曲。

この「ハッピーバースデイ」がまたラスト近くの鍵盤にその熱を叩きつけるかのようなひとちゃんの音が、石田さんのやはり熱を帯びた声と絡み合って、とてもよかったのであった。
転がる鍵盤の音が石田さんのテンションを引き上げていったように思う。
 

そして奇跡について、神様がぽんとくれる奇跡なんてないんだよ、自分たちで作るんだよ、と歌う「MIRACLE」。

「東海林仁美がすごく忙しくなる予定」という石田さんの前振りどおり、ひとりでピアニカとキーボードを入れ替えての大活躍!
新しいスタイル! とても楽しかった!

一昨年の「MIRACLE」コンサートでの披露時は寺岡佐和子さんのアコーディオンだったこの曲、弾き語りや昨年末にはアイリッシュフルートなど様々な形で演奏されてきたけれど、ピアニカは初めて。その丸い、空気を含んだ音がフォルクローレな世界を作っていてとても良かった。
 

フィナーレは「PUZZLE」。
誰も大切でない人などいない、と高らかに歌う、愛に満ちた曲。
何とも太い唄だった。石田さんはテンションが高く、やたらにスキャットは多いし、発声練習もエーオ!でえらく盛り上がった。

そして、ひとちゃんとやるときは、必ず2番の「余計なものは 誰かのせい」のところでブレイクを入れてくれるので、これが大好きな私は痺れてしまうのである。

クライマックスでは、観客を2つにわけて、低音・高音でコーラスをさせるこの曲。
今回はIZAKAYAさんには真ん中に大きな柱があるのでそこでパート分け。

「カウンター側」と「じゃない方」。

じゃない方。新しい。
みんな大笑い。

ちょうど人数的には半々だったかな、とてもいいコーラスだった、と観客の一人としては自負しておく。
 

大いに盛り上がっての本編ラストだったのだが、すぐさまのアンコールで「アイタイ」。

彦根のご当地キャラ博というキャラクターイベントのためのテーマソングで、純粋に誰かを恋しく「アイタイ」と思う心を歌った曲だが、これも強いサウンドだった。
客席も「アイタイ!」と大きなコールを何度も繰り返し、店内が一気に熱くなる。
強い高揚感の中でこの日のライブは終了した。
 
 

時間を空けて振り返るだに、全編通して印象的なのはその声、音の太さ、あの場の空気そのものの強さだった。
冒頭に音楽への敬愛を強く含む「ソウルシンガー」を持ってきたことがまず何よりも強い宣言のように思うのだ。

そして、懐かしい曲、昔からの曲、新しい曲。新しいアレンジ。試み。
強い「意欲」が頭から最後まで満ちていた。

石田洋介のライブで、楽しくなかったり、その音に酔わなかったりすることはまずないのだけれど、それでもその現場ごとに濃淡や強弱はある。
アットホームな時もあるし、緊張感の強い時もある。
この夜は宇都宮と言えば必ず来てくれる方々、いつもの顔触れが中心で(また逆に石田洋介ライブは初めて、という方もいらしたが)和やかな雰囲気だったのだけれど、そんな客席ですら何かしんと黙らせるような「圧倒感」があった。歌うことへの強い意思が場を支配していたように思う。
 

唯一無二の唄。
唯一無二の時間。
 

新年初めてのライブにそんな音を聴けて、たまらなく幸せだったし、2019年の石田洋介がたまらなく楽しみになった夜であった。

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