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LILI LIMITにそっと花束を

ラストライブ「size L」@周南RISING HALL、そしてMO MOMAへ

2012年山口県で結成されたLILI LIMITが、その始まりの地で幕を閉じた。ロックバンドの形態でありながら、電子音を混ぜ合わせて自在に解体・再構築をしていく。そのしなやかで端正な音楽性は次世代感に満ちていたのだが、6年の活動をもって解散となった。個人的には、2010年代後半のシーンを担っていくと思っていたし、その緻密な楽曲やライブが単純に大好きだったので、解散はあまりに残念だった。しかしその最後の瞬間を見届ける機会が用意されたことはありがたいことで、迷わず周南RISING HALLへ向かうことを決めた。

解散前や活動休止前のツアーは何度か足を運んだことがあるが、正真正銘のラストライブに行くのはこれが初めて。何もかもがこの日終わるという独特の緊張感が開演前から会場を満たしていて、とても新鮮だった。定刻になりSEもなく、するっとステージ上に現れた5人。1曲目に選んだのは「LAST SUPPER」。最後の晩餐、というこの日の為に捧げられたような曲だ。アッパーなリズムだが、思うように体が動かず粛々とした気分で見守ってしまった。初っ端から<あの日々にバイバイ>で、<また僕ら再開 できること願いながら>である。あまりにもシチュエーションに刺さりすぎていた。

しかしこのオープニングのおかげでこちらも覚悟が決まった。続く「Open」「h.e.w.」「Girls like Chagall」という、初全国流通盤『Etudes』の冒頭の曲順を再現した流れからは、没入と開放が一体となったLILI LIMITにしか生み出せない空間を仕上げ始めていた。ギターロック然とした疾走感も掴みどころのない軽妙さも取り込んで、独自の美学で設計された彼らのサウンド。それはデビュー作から既に完成されていたことが明白になった3曲だった。プレイし慣れた楽曲が生き生きと躍動するその時間、メンバーの表情は明るく晴れやかだった。実際の心中は推し図れないが、今この瞬間に5人全員が嬉々として演奏している事実にとても感銘を受けた。

ループするフレーズで踊らせる「Unit Bath」、ダークで攻撃的な「Observe」、丸谷誠治が繰り出す土着的なビートが印象的な「N_tower」、ややダウナーな楽曲も様々なバリエーションで魅せてくれるのがこのバンドの強みだ。最前列で観ていたので、一音一音の発され方にアイデアが溢れていることがよく分かる。そこは鍵盤で、そこはサンプラーで、そこもギターなの?そこはベースなの?という、楽器の多彩な使い分けは視覚的に楽しくて驚ける。

LILI LIMITとしてのラストリリースとなった配信シングル「signal」も披露された。ハイファイなサウンドと、響きを重視した語感で紡がれた史上最も明るく前向きなポップチューンだ。この曲では、ボーカル牧野純平の動きがすこぶる伸びやかだった。2018年初頭にライブを観た時は直近リリースのEPのモードに合わせて殻にこもったようなクールさがあったのだが、今日の彼は観客と目を合わせ、優しい視線を送り続けていた。初めてこのバンドを聴いた時に感じた、”スタイリッシュなのにたっぷりの人間味”という印象は彼が担っていたものなのだと最後の最後にして初めて意識することになった。

開始から11曲目が終わるまでノンストップで楽曲を届けたこの日。ようやく挟まれたMCで牧野は「seta gaya」で歌詞を飛ばしたことを誤魔化しつつ、「今日を楽しんで終わりたい」旨が語られた。そして、「どうしても歌いたかった、娘のことを歌った曲を」と、「Suite Room」が演奏された。彼の書く歌詞には、強く”生活”が刻まれている。ユーモラスなフィルターを通して描かれる、暮らしの風景はとても愛おしく、このバンドの持つ人懐っこさを象徴している。また、大切な思い出を丁寧に抱きしめていることが伝わってくる。亡くなった愛犬への思いを綴った「lycopene」と「A Short Film」を続けて披露した流れは、彼の大事にしてきた感覚が温かく輝いていた。

牧野がステージから捌けて、4人のみでのセッションから「ENCLOSE」「COLORS」という、『LIB EP』収録曲の流れ。今年2月にリリースされ、よりエレクトロニカ/HIP-HOPに接近し、黒瀬莉世が奏でるシンセベースを基調とした楽曲群は、これまでの楽曲と比べるとミニマルで異端なものだった。この大胆なモデルチェンジを経て、彼らがどこへ向かっていくのかと興味深かっただけに、やはり解散は残念でならないと強く思った。

終盤に差し掛かり、メジャーデビューシングル「Living Room」が届けられる。イントロで牧野は、「WILD BUNCHの景色が思い浮かびます、僕らの夢が叶った瞬間、みんなのおかげです」と叫んだ。山口県にある大型フェス、僕も彼らの初出演の現場に立ち会っている。素晴らしいバンドと出会い、その目標達成に直面できる喜び。万感の思いで、その時の景色がフラッシュバックしてきた。エモーショナルさとは距離を置いたバンドだと思っていたが、この曲ばかりは素直な気持ちがダダ漏れだったように思う。

本編ラストは「at good mountain」。2015年夏、Mrs. GREEN APPLEと赤色のグリッターの競演ツアー福岡公演のゲストにLILI LIMITが呼ばれ、その機会にこの曲のMVを観たのが彼らと出会ったきっかけだった。澄んだ空気を含んだ清廉な楽曲。初めて聴いた時、このジャンルレスな音楽は何だ?!と震えた記憶がある。最後の最後まで、彼らは形容しがたいバンドであり続けたと思う。”言い当てにくさ”とは時に分かりづらさに繋がるものだが、彼らは不思議な存在のまま、僕らの心へと飛び込んできてくれた。

鳴り止まぬ拍手を経て、アンコール。静謐な始まりから、至上の高揚感へと誘う「in your site」は、LILI LIMITとして初めて形になった楽曲であり、ギタリスト土器太洋が加入を決心した節目の曲だと言う。そんな風に、これまでの思い出を振り返り始めていよいよ終わりの時が迫っていると実感する。軽快に跳ねる鍵盤が印象的な「zine line」が、実は毎日ヘアアイロンで癖毛をなおしているキーボード志水美日へエールを送るというテーマで書かれた曲だということが明かされたり裏話も交えながら、最後のひと時を味わっている。「Festa」の祝祭感は、彼らの新たな門出を彩っているようだった。

まだ足りないとばかりにダブルアンコール。土器は「終わる実感がない」と語り、牧野も同意する。ここまで一言も喋らなかった丸谷に話を振るが特にまとまらない。そのグダグダ感を志水が指摘した後に、黒瀬が「これがLILI LIMITでした」と笑顔で締めた。それぞれが素のまま、飾らずにそこにいた。バンドという結びつきがほどける寸前の、とても穏やかな瞬間。そして「本当にありがとうございました」と牧野が語りながら、正真正銘のラストソング「RIP」へ。この曲をきっかけに、バンドが大きく飛躍していったのだというが、「Rest In Peace(安らかに眠れ)」を連想されるこの曲が最後に鳴るというのも、美しい円環のように思える。

5人が1人ずつ舞台上から捌け、客出しBGMとして「STREET VIEW」がかかる中でも、観客はなかなか動こうとしなかった。泣いてる人も沢山いて、それぞれにこの余韻を噛み締めているようだった。曲繋ぎやステージング、全てにおいて続いてくべきで、大きくしていくべき新しいモノだったと思える。惜しい気持ちにもあるが、5人の清々しい去り際を見て、きっとこれからの何かに繋がっていくと確信した。発展途上であり、未知に満ちた結末の先で、また5人と出会えればいいな、と心から思えた。

そしてその日から1か月足らず。LILI LIMITの土器大洋、黒瀬莉世、志水美日が新たなバンド、「MO MOMA(モーモーマ)」を始動させた。そのファーストライブの映像をインスタグラムで観たのだが、間違いなくLILI LIMITで培ったもののその先が鳴っていた。シンセベースを主体としたサウンドは「LIB EP」以降を感じさせるし、黒瀬と志水がツインボーカルで奏でるハーモニーは、LILI LIMITの豊かなコーラスワークをより拡大化したものだろう。ドラムレスであったり、英語詞であったり、新たな要素も加えてある。あの突き抜けた解散ライブは、このプロジェクトの胎動だったのかもしれない。次なる景色はもう広がり始めている。

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