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暗闇から極彩色の人生へー

the HIATUSが10年かけて掴んだ色とりどりの世界とは

初めて聴いた曲のイントロは美しいピアノの音だった。
その時の衝撃は、未だに忘れられない。

昨年行われたthe HIATUS「Monochrome Film Tour 2018」。
リリースのない中での全国ツアー、そしていつもとは少し趣の違う会場でのライブとのこと。
一体どんな内容なのか、情報は一切入れず、少しの緊張感と大きなワクワクを胸に会場へ向かった。

会場へ入ると、ろうそくが揺れる幻想的な装飾。
ますますどんな展開になるかわからない、期待感がさらに大きくなる。
そして、1曲目のイントロが鳴った瞬間からもう、
一気にthe HIATUSの世界へ持って行かれ、脳みそを鷲掴みにされる。
「Roller Coaster Ride Memories」で幕を開けた本編。
静かなピアノのイントロから、湧き上がるような、たぎるような演奏で中盤から終盤まで一気に駆け抜けていく。
武道館の時もこの曲で始まり、同じように全身がゾワゾワした感覚を思い出した。

次々に背後のスクリーンに映し出される映像。
そこには、ステージ上でリアルタイムに写しているメンバーの映像に
スイッチングをしてVJがエフェクトをかけた映像が、
瞬きをする間もないくらいに展開されていく。
その映像の前には、息を飲むような、鬼気迫る演奏をするメンバーの姿。

ライブが終わった後に、このツアータイトルの答え合わせができた気がした。
なんの捻りもない率直な表現になるけれど、
この日しか上映されない、1本の映画を観終わった気分だった。
一夜限りの「Monochrome Film」。

これだけ五感をフルに使って観る、聴く、というライブは他に体験したことがない。
とにかく終わった後は、良い意味での疲労感に包まれ、
外に出ると冬の始まりを感じる寒さを感じながらも、
とんでもないものを見た、という興奮と体の奥底から湧き上がる熱さと、
じんわりと感じる暖かさが全身に広がっていた。

the HIATUSが始動してすぐのライブで見た細美は、
今にも崩れ落ちてしまいそうに脆く儚く、
見ているこちらがつらくなるような、そんなライブだった。

あれから何十回もthe HIATUSのライブを見てきた。
突き刺さるように鋭い目で歌い、誰も信じない、誰も近づけない、
そんな空気感さえ纏っていた。
目を背けたくなる時もあった。

最初はどう受け止めていいか戸惑いもあった。
休止したあのバンドの残像を、どこかで追い求めていた自分もいた。
だからこそ、全く違うこのバンドの音を素直に受け止めきれなかった。

でもそこから、自分がとことんどん底に落ちた時には、このバンドの音楽が側にあった。
暗く、鬱々とした、混沌とした心を、突き放すわけでもなく寄り添うわけでもなく、
静かにそっと、そこにあるような。
一緒に堕ちるところまで堕ちて、這い上がり、そして必ず最後にはうっすらと一筋の光が見えてくる。

「不眠症」と歌っていたバンドが、7年後に作った曲は「極彩色の人生」ー。
そう笑って話した細美。
「助けて」あの痛くてつらくて仕方なかった「Insomnia」を、こんな風に笑って話す時が来るなんて。

「Monochrome Film Tour 2018」に行って、今までうっすらと見えたあの一筋の光は、キラキラとしたあたたかい光になっていた。
極彩色に彩られた曲を、心底楽しそうに演奏するメンバー。
満面の笑顔で歌う細美。
アンコールの最後に演奏されたこの曲で、そんな5人の姿を見て、
ああ、苦しいことを乗り越えた先には、こんな景色が広がるんだ、
そんな綺麗事のようなことを、本気で思った。素直にそう思えた。

暗闇の中でもがき苦しんでいた5人は、
これだけの月日が経ち、しっかりと「バンド」という形になり、
光のある世界に導いてくれるバンドになっていた。

あの頃感じた危うさや脆さはもうどこにもなかった。
しっかりと地に足がつき、そして、強さと優しさが、確かにそこにあった。

今年は結成10周年。
いつも新しいことに挑戦し続けてきたthe HIATUS。
誰も理解してくれないかもしれない、でも自分たちが最高においしいと思う創作料理を出し続けてきたthe HIATUS。
そんな創作料理を10年間、私たちは噛み締めて、大事に味わってきた。
それがどれだけ幸せなことで、奇跡的なことなのだろうかと思う。

今年はそんな創作料理をまた出してくれると言う。
次はどんな世界が広がっているのか、どんなところへ私たちを連れて行ってくれるのかー。

予想もつかない新しい音を心待ちにしながら、今まで与えてもらったたくさんの、難解で愛おしい料理たちを改めて味わいたいと思う。

きっと、良い意味で裏切ってくるのだろう。
the HIATUSは、いつだってそんなバンドだ。

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