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時を繋いだ、ロストマン

BUMP OF CHICKENの旧曲に呼び起された過去、現在、これから

新年早々、友達と口論になった。

長年の友人達が集まっての飲み会の席だった。
私が、BUMP OF CHICKENのヘビーリスナーであることは、仲間内は皆、知っている。事ある毎に、彼等の存在を口にし、常に彼等のグッズを身に付け、ツアーがあれば、県外へ遠征もしているから。どんな感情の日も、BUMPの唄は寄り添ってくれ、時には、手を引っ張って起こしてくれる。私にとっては、「好き」という言葉ではとても足りない、かけがえのない大切な存在。ただ、感じ方は人それぞれだと思っているので、私は、親しい友人にも、BUMPを聴くように無理強いしたり、曲の感想を求めたりすることはなかった。

しかし、この日、友人の一人が、BUMPの話題を出してきた。
「箱根駅伝の時、CMで流れてたね。でも、これ以上、CMとかで使われたら、嫌じゃない? ライブのチケット、取りにくくなるでしょ?」

その発言に、私は、感情的になり、「は?嬉しいんだけど?」と返してしまった。

今年、テレビCMに、BUMP OF CHICKENの楽曲『ロストマン』が起用されたことは、リスナーにとってはビッグニュースだった。『ロストマン』のCD発売は、2003年3月。つまり、約16年の時を経て、今、新たな形でスポットが当たったのだ。
当時、すでにリスナーだった私は、それだけで、胸が熱くなった。
しかも、そのCMが流れるのは、箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)の中継中だけだという。箱根駅伝には、私の母校である大学も出場している。これは、観ないわけにはいかない!

正月早々、私はきちんと早起きをし(箱根駅伝のテレビ中継は午前7時スタート)、選手達の姿に見入った。
私自身は、スポーツの経験は無い。なので、この舞台を迎えるまでの日々、思い等は、想像はしても、しきれるものではなく、「自分にできない、すごい事を、やってのけた輝かしい人達」という目線で、選手を眩しく見つめていた。母校の後輩にあたる選手達も、決して身近な存在ではない。何かを探しに、わざわざ地元を離れ、多様な人材が集まるであろう東京の大学に入学したものの、何も成し遂げられなかった自分。卒業後も、どう生きたいのかがわからず、アルバイトで食いつないでいた数年間。結局地元へ戻り、就職したけれど、そこでも大きな挫折を味わい、退職・転職をしたばかり。
晴れ舞台に立ち、自分の足で進んでいく選手達を応援しながらも、そうはなれなかった自分を、少し惨めに感じてもいた。

そんな中、きた! 『ロストマン』起用のCM。
耳に馴染んだギターのイントロと共に、目に飛び込んできたのは、馴染みのあるユニフォームだった。母校のユニフォームだ。

【状況はどうだい 僕は僕に尋ねる
 旅の始まりを 今も 思い出せるかい】

今の自分が、あの頃の自分に尋ねているのか。はたまた、あの頃の自分が、今の自分に問いかけているのか。それは曖昧だ。けれど、その歌詞を聴いた瞬間、過去と現在が、一気に繋がった感覚を覚えた。

【選んできた道のりの 正しさを 祈った】

正しかったかは、答えが出ない。うまくいかない事だらけだから、どこかで間違えたのかな、って思う。
ただ、地元を離れて大学進学したのも、すぐに就職しなかったのも、その後のいろんな事も、自分で選んできたのは、確か。

ぐるぐると思いが巡る私の耳元で、グッと音量が上がる。

【破り損なった 手造りの地図
 シルシを付ける 現在地
 ここが出発点 踏み出す足は
 いつだって 始めの一歩】

涙が溢れた。
いろんな事があったけど、私は今も、生きて、選びながら歩いている。
自分なりに考え、行動してきたあれこれが、正しかったかどうかは、わからない。
でも、それはきっと、私に限ったことではない。
私達は、迷い、悩みながら、行く道を自分で選ぶしかない。その時々の状況で、選べない道もある。不可抗力で、道が閉ざされる事もある。だけど、選ぶ道があるという事は、道が一つではないという事でもある。
まだ見ぬ世界へ繋がる道もあるだろう。振り向けば、自分の通ってきた道もあるだろう。もし、これまで歩んできた道の途中に、大切な何かを置いてきたと思うなら、取りに戻る事だってできるはずで。
そう考えれば、自分の過去を悔んだり、選択を否定する必要はない。今から踏み出す一歩が、行きたい場所へ、繋がるのだから。
これから、どうにだってなる。
 

・・・何十回、ひょっとすると何百回も聴いてきた『ロストマン』が、今年、私の中でも、新たな意味を持ち、あの頃の自分を許し、これからまた進んでいく、原動力のような存在になった。

それだけに、友人の、ネガティブなニュアンスの言葉が、引っかかったのだったが、後に、その友人から、娘さん(中学生)が、最近BUMPを聴き始め、「ライブに行きたい」と言い出した、と聞いた。その望みを叶えてあげたいと思っていた矢先、楽曲のCM起用を知り、それがまた、良い曲だったことから、「これはますます人気が出るのではないか、娘の望みは叶わないのではないか」と、心配になったことから、出た発言だったという。

そうだったんだね。
自分の趣味を押し付けたくはない、と思ってきた私だけれど、彼等の唄に出逢い、笑顔になれたり、救われたり、生きる力を取り戻す事ができる人がいるなら、出逢ってほしいなと、今は思う。
感じ方は人それぞれ。そのうえで、『ロストマン』リリース時には生まれていなかった人と、世代なんか超えて、BUMPの唄の話なんかができたら、それも、素敵な事だと思う。
いつまでも立ち止まっていても、行きたい場所には行けない。
ムッとしてしまった事、きちんと謝って、進もう。【さぁ 行こうか】
 
 

(文中の歌詞は、全てBUMP OF CHICKEN『ロストマン』より引用)

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