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大人になることは、素直な気持ちを受け入れることから

BUMP OF CHICKEN PATHFINDER DVDを見て

PATHFINDERツアーのDVDをBUMP OF CHICKEN結成23年目といわれる2月11日に見ている。
 このツアーは「アルバムひっさげないツアー」としてBUMPのメンバーが希望したのを実現されたものだ。このDVDは本当にうまくできていて、曲ごとのイメージを大切に扱っていることがよくわかる。どの箇所から見ても映像がキラキラしていて、幻想的な夢の空間にいるような錯覚を覚える。カメラもいろんな角度からメンバーの動きや表情を見事に映してくれて、4人の結束がじかに感じられる。楽器のギター、ベース、ドラムなどの奏でる音たちがとても心地よく聴こえ、満たされた気分になる。歌やコーラスがリアルに耳に残る。本当にライブに来たような臨場感を味わえる。
 今まで見たBUMPのDVDも感動したけれど、さらに進化している気がする。このライブのセットリストは最高の曲ばかりで、私の中の汚れた思いを浄化してくれる作用があり、温かい気持ちのままでいられる。付属のCDも、メンバーの絆を物語にしたような流れを感じる。だから定期的にDVDは見るし、CDは眠る前の安定剤として聴く。まさにPATHFINDERのDVDは私の心の動きをリセットしてくれる大切な装置だ。
 
 私は4年前、rayの曲からBUMPの曲が好きになった。現在高3の次男は7年前から好きだったが、当時はメディアで姿を見ず、私はあまり興味がなかった。rayの曲も発売当初はボーカロイドとのコラボもあって、若者向け過ぎて苦手意識を持っていた。
 ところがBUMPが初めてテレビで歌った場面を見て、その曲を聴いて、私の胸が騒いだような気持になった。虹を待つ人で曲に壮大さを感じ、rayのメロディーにすんなりと引き込まれた。そして彼らを応援するファンの姿を見つけた。虹を待つ人では大きな掛け声をかけて、rayでは一斉に皆で手を振って。楽しそうだなあ、なんだかうらやましいな、あんなふうに共有すること、私最近してないな・・・その頃、長男や次男は高校生と中学生で、思春期の息子たちへの接し方が難しくなっていた。成長の喜びはあるけれど、親子の会話が無くなりつつあることを素直に受け止めれず、寂しさや虚しさを感じていた頃でもあった。

 テレビで見たBUMPの曲の感動を味わいたくて、ベスト盤や昔のアルバムを借りて聴いてみた。その中には思春期の誰もが感じているのに、うまく言葉にできない心の引っ掛かりがたくさん出てきた。10代の頃の正直な気持ちに寄り添った曲の数々。大人になっていくことの怖さ、将来の不安。素直な気持ちを忘れたくない、失くしたくない、でも自分の体は大きくなり、心もそれに追いつかなきゃとジレンマが切々と歌われていて、私はだんだん思い当たることがあった。あれ、私は息子たちの話をちゃんと聞いていたのかな?表情を見てあげられていたのかな?必要な時、必要な場面で寄り添っていられたのかな?しだいに先生に諭されているようで、反省する気持ちがわいてきた。
 
 PATHFINDERのDVDでは、pinkie、花の名、涙のふるさとのあたりで涙が出そうになる。大学進学のために、間もなく家を離れる予定の次男との別れの唄のようにイメージしてしまうから。この3曲の連なりは、今の時期の私には少しつらく感じる。
 親バカなことは充分に承知している。段々と近づいてくる別れの時、大学で実家を離れることなどよくあるだろう。何を大げさな、と思う人もいるかもしれない。成長は嬉しいけれど、やはり寂しさの方が先に立つ。生まれてから今まで一緒に食卓を囲んだ、その生活が変わることが怖い。前々から分かっていたことで、私も仕事や趣味を楽しむための準備はしていたけれど、私はこれから、次男がそばにいない日常を受け入れられるだろうか?

 BUMPの曲は親としてだけでなく、今の大人になった自分の立ち位置も分からなくさせる時もあった。偏った正義感、上から目線、都合のよい言い訳や屁理屈、上辺だけの見栄・・・客観視できない自分という存在に次々気付く。こんな立場なのに、大きな顔してモノ申すなんて、何やってんだ自分。歳をとったら偉いなんて誰が言った?大人になるってどういうこと?今頃になって気付いたことが恥ずかしく、とても情けなかった。

「本当の声はいつだって 正しい道を照らしている
 なんだって疑っているから とても強く信じている」
「無くしたくないものを 見つけたんだって気付いたら
 こんなに嬉しくなって こんなに怖くなるなんて」
       (PATHFINDER DVD アンサーより抜粋)

 自分自身と向き合うことを、息子たちが生まれてからの子育て中はできていなかった。というか、あえて避けてきたような気がする。自分が何者であるかという問いに答えられず、自信がなくなって怖かった。ただそれだけ。けれど、弱さや醜さを持つ自分の心のありさまを、DVDを見てから気付くようになり、自分から受け入れられたことが私には大きな収穫となった。誰かに言われてでなく、自分から、がポイントなのだ。

「旅立つ人よ 声が聴こえる 「愛しい人よ あなたの中に」
 星を廻せ 世界を掴め 僕らの場所は 僕らの中に どんな時も」
        (PATHFINDER DVD fire sign より抜粋)
 
 DVDのfire signでの赤や黄色の光線に囲まれての演奏シーン。夕焼け空を背に歩く学生時代の4人のメンバーの姿を想像してしまう。みんなでくだらない話をしながら、ラ~ラ ララ ラ~ラララと楽しそうに歌いながら帰っていたんだろうな。誰もが持っているはずなのに忘れてしまった、素直で、純粋な少年の心を持って。
 BUMP OF CHICKENというバンドは、大人になる過程で、グレーであいまいになってしまう自身の軌道修正のために、音楽の道を選んだのだろうか。そしてその楽しさを皆にも気付いてほしくて、こうして形に残してくれるのだろうか。押しつけがましくなく、聴く人が自ら気付くように魔法をかけて。その魔法の仕掛けは、彼らが曲を聴く人々を信頼しているから、というのも答えの一つであるかもしれない。DVDの演奏の合間に見られる4人の仕草や笑顔にほっこりしながら、そう推測してみた。

 社会の中で大人になっていくうちに、自分を見失うことがあるかもしれないけれど、誰もが持つ、素直さ、純粋さ、正直さを大切にすれば優しくなれるだろう。だから自分の選んだ道を信じていれば大丈夫だね。
 
  

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