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救助を求めているのは誰?

King Gnu「The hole」の傷口に寄り添う

King Gnuのメンバー4人はさとり世代になるだろう。

誰もが能天気な夢を思い描ける時代もあったが、その結果がバブルの崩壊。生まれてこの方ずっと不況では、将来に夢や希望を抱けないのも仕方がない。

しかしKing Gnuの常田大希はその名前のとおり「希望しかない」と断言する。絶望しか転がっていないと感じる人が多い現代の話だ。すべてを飲み込んだうえでのポジティブ宣言。

そんなどん底状態を優しく包み込んでくれるのが「The hole」である。求めた救助がやってくる、というコンセプチュアルなアルバム『Sympa』。そのラストから2曲目に収録された、衝撃のバラードだ。

おもしろい音楽が売れない。ミュージシャンはもちろん、音楽好きなら誰もが感じてきたことだろう。ダンスミュージックが好きな私は長年「誰かガツンとメインストリームに挑戦してくれないだろうか」と願っていた。

サカナクションを知ったとき「挑戦している人がいた」と心を躍らせた。しかし結局メインストリームでの勝負に疲れ果てたのだろう。「グッドバイ」を聴いてそう感じた。

やっぱりダメか。

日本の音楽シーンを語るうえでサカナクションが果たした功績は非常に大きく、私自身サカナクションのファンであることに変わりはない。ただメインストリームで居続けるには無難になるしかない状況が見え隠れした。

<僕が傷口になるよ>

そこまでわかったうえで常田は「傷口になる」という歌詞をしたためたのだろう。

常田自身は破壊者であり傷そのものだ。嫌われない歌声をもつ井口こそが癒しの傷口。そんなコンセプトのKing Gnuそのものが傷口になってくれるということ。

そうか、私は救助を求めていたのだ。そしてKing Gnuが新たな挑戦者となってくれるわけだ。

ボロボロに傷つくことも想定し、5枚目くらいでバンド名を冠したアルバムを出して終わらせるストーリーすら冗談めかして語っている。

King Gnuの代名詞といわれる「Flash!!!」のように、期間限定のバンドという美学を貫くつもりかもしれない。そう考えると、King Gnuが傷口になってくれるのは今だけ。今という瞬間を濃密に堪能すべきと思い知らされる。

<愛する誰かが自殺志願者に>

「The hole」には非常にデリケートな歌詞が出てくる。明日すら想像できないほどの絶望を感じたとき、このまま生きる意味はあるだろうか?という考えがよぎることもあるだろう。

どん底を知る人間はネガティブな音楽など聴きたくないものだ。現実がどうしようもないのに、楽しむための音楽まで暗いなんてやりきれない。「The hole」はそんな心の穴を埋めてくれる。

井口理が最もリスペクトしているミュージシャンは七尾旅人らしい。「The hole」の作詞をした常田もよく知る話だろう。七尾旅人の「きみはうつくしい」では、切実に救助を求める人の心情が浮き彫りになっている。

「The hole」は「きみはうつくしい」のアンサーソングになっているかもしれない。そう夢想している。

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