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2017年5月22日

Ammy (23歳)
12
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シャボン玉は奏でる音に乗って

クラムボン at 日比谷野外大音楽堂

ライブで沢山のシャボン玉が宙を舞う光景。
映像を観る度に、いつかあの中に自分も居てみたいと思っていた。
その夢がついに叶ったのは2017年5月3日。クラムボン・日比谷野外大音楽堂ライブ。
きっとこの日のことを一生忘れない。
 

クラムボンの野外ワンマンライブは特徴的で、入場の際にお客さんひとりひとりにシャボン玉が配られる。配られたシャボン玉はライブ中好きな時やここぞという時に飛ばせるらしい。
シャボン玉を飛ばすのは野外フェスではよく見る光景で、私自身フェスでなら飛ばしたことはあった。ただ、ワンマンライブとなるとそれは未知の世界で、ましてやバンド側からシャボン玉が配られるなんて。ドキドキしながらスタッフの方から小さなボトルを受け取った。
中に入ると既にシャボン玉が飛び交っていて、何度も行ったことのある野音のはずなのに、まるで初めて立つ場所のよう。目の前に広がるステージへ向かって風が吹いている。「今日は幸せな日になる」、始まる前から直感でそう思えた。
 

それはただファンシーなアイテムなんかではないということを、クラムボンとファンが教えてくれた。
飛ばされたシャボン玉は、楽曲ごとにその表情を変えていく。
 

『サラウンド』ではまさしく歌詞の≪上昇気流に飛び乗っていこうよ≫のように会場の周りの木々とビルに向かって飛んで行き、クラムボンの中でも随一の”ゆるふわソング”である『090』では客席を埋め尽くすほどのシャボン玉が宙を舞い、優しくて柔らかな空間になった。
楽しそうに音に揺られる大人達。飛んできたシャボン玉に手を伸ばす子供達。この空間にいた誰もが皆笑顔だった。
 

日がすっかり沈み、月がステージの真上に登る頃、演奏されたのは『Long Song』〜『tayu-tau』。ライブが始まる前の「真っ暗な中でシャボン玉を飛ばしても…」なんて考えが全くの杞憂だったことに気づいたのはこの瞬間だった。
真っ暗な中で飛ぶシャボン玉がステージの照明の光を反射し、先程とは打って変わって幻想的な空間になっていた。奏でられる音が心地良くて、そのシャボン玉越しに見えるクラムボンが思わず息を呑むほど美しくてかっこいい。音を耳と肌で感じながら、一瞬でもいいからこの空間に溶けてしまいたいと本気で思った。
 

ライブ終盤、ステージに登場したのはTHA BLUE HERBよりILL-BOSSTINO。客席からは大きな歓声と拍手が沸き起こった。そして演奏されたのはもちろん『あかり from HERE』。私の横をすり抜けステージへ向かって飛んでいったシャボン玉を見て思った。今日、そしてこの瞬間に飛ばされたシャボン玉は誰かの想いかもしれないし、祈りかもしれないし、”あかり”なのかもしれない、と。この場所に集まった人々から生まれた幾多もの”あかり”はエモーショナル音と力強いリリックに乗って野音の夜空に飛んでいき、曲が終わった後もそれは途切れることを知らなかった。
 

このライブの様子はクラウドファンディングで岩井俊二監督により映像化されることが決まっている。アンコールの最後に演奏されたのは、岩井監督の好きな曲だという『Folklore』。
シャボン玉を飛ばしながら、眠れない夜に寮の屋上へ抜け出て曲を聴きながら眺めた空を思い出していた。明るい夜空と静かなようで遠くから聞こえる街の喧騒、よく見ると星と星の間を縫うように飛んでいく小さな衛星。シャボン玉越しにあの頃の空を見た気がした。
 

ライブが終わった後、手の中にあった小さなボトルはほとんど空っぽになっていた。
その代わりに、私の心は幸せな気持ちで満たされていた。
柄にもなく周りの人達とハイタッチしたくなるくらいそれはもう最高な気分で。
まだうまく言葉にならない余韻と感動がじわじわと広がっている帰り道、確かに感じたのは「あぁ、クラムボンを好きで良かった」という想いだった。
夢の中にいるような感覚だったけど、夢じゃなかったことを翌日の筋肉痛が教えてくれた。
確かに私はあの景色の中に居たのだ。
 

晴れ渡った空の下、iPodを取り出して昨日の余韻を噛み締めながらクラムボンの曲を再生する。
またあのシャボン玉の景色の中に居られることを願いながら。

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