2035 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

「色褪せない名曲」とは

スピッツに見る「色褪せる美学」

音楽シーンにおいて、しばしば「色褪せない名曲」という謳い文句を目にすることがある。
しかし当時小学5年生の私は、この表現に疑問を抱いた。「色褪せる」「色褪せない」の違いは、定義はなんだ。いつの時代が色褪せていてどの地点を境にして色褪せていないのか。当時ひねくれていた私には考えても考えても謎が深まるばかりだった。

それから約8年経って、改めて考えてみようと思う。
 

まずは、実際に「色褪せない曲」とはどんなものなのか。
例えば、Mr.Childrenの「HANABI」はどうだろう。
HANABIは2008年にリリースされ、同時に連続ドラマ「コード・ブルー」の主題歌に抜擢された。そして、ドラマの続編や映画化などを経て10年経っても、主題歌はずっとHANABIのままだった。更に、大手音楽アプリのLINE MUSICでは、米津玄師やあいみょん、TWICE、最新のバンドらに混じってランキングのベスト100以内に留まっている。
かたやMr.Childrenというバンド自体も、今年で結成30年という大ベテランながら、昨年発売の最新アルバムでは初週31万枚という好セールスを記録している。CD衰退期においては目を見張る数字だ。
これを見るに、HANABIは紛れもなく色褪せていない。音楽も、その音楽を手掛けたアーティストも全く色褪せていない。10年前の曲でありながら今も音楽シーンのど真ん中いにる。

そして「色褪せている曲」だが、一番極端な例は「演歌」だろう。
もちろん、石川さゆりの天城越え、北島三郎のまつりなど今でも若者がカラオケで歌うような名曲はごまんとあるが、それでも現代音楽とはかなり乖離している。今時、ミセスやヒゲダンなんかに混じって演歌が流れることはまず無い。これは時代の流れやその時々での世間のニーズで移ろっていくものなので仕方がない。
 

しかしつい一ヶ月前、この持論を根底から揺るがしかねない事態が起こった。それがまさに「スピッツ」という存在である。
とある日、私は趣味の一人カラオケに行った(決して友達がいないわけではない)。そこでスピッツのチェリーを歌ったのだが一部のメロディがあやふやで分からなかった。家に帰ってチェリーをYouTubeで確認したのち、不意に関連動画で目に入った「スピカ」を聴いた。
その瞬間に衝撃が走った。自分でもよく分からなかったが、ぼんやりと「なんだこの曲は…」という感じで即座にハマってしまった。
私は急いでスピッツのベストアルバムを借りた。よく知っている曲も初めて聴く曲も味わいながら聴いた。そして見る見るうちにスピッツの虜になっていったのだ。(その後改めて確認したら、ベストアルバムにスピカは入っていなかった。本末転倒。)
 

ベストアルバムを大体聴き漁って得た感想だが、スピッツの楽曲は色褪せていると思う。人の歩調ぐらいの緩やかなテンポ、最低限のバンドサウンド、そして草野の少し曇ったような美声。確かに素晴らしい曲達ではあるが、どう聴いてもこれぞ90年代って感じの曲ばかりな印象だった。

しかしこれこそスピッツの凄さなのだ。スピッツの曲たちは色褪せているとか色褪せていないとかいう話じゃない。「色褪せても名曲」なのだ。
もちろん、先ほど挙げたチェリーや空も飛べるはず、楓なんかは若者もよく聴く、色褪せない名曲だともとれるだろう。しかし曲としてはやはり一昔前の空気を感じる。

例えば、大きな橋を支えているネジに、数十年経ってもその形相を変えることなくピカピカのままのものと、錆び付いてボロボロになりながらもしっかり橋を支えているものがあるとしよう。
もちろんMr.Childrenのような未だピカピカのネジもひたすら凄いのだが、スピッツのように錆び付きながら現役のままのネジも凄いのではないか。むしろ私は後者の方に魅力を感じる。
錆び付きながらも未だ壊れずにその仕事を全うしているネジにこそ美学があり、それこそがスピッツの魅力ではなかろうか。私がスピカを聴いたときのぼんやりとした衝撃は、まさに「色褪せても名曲」というものだった。
 

そんなスピッツも、90年代という現役バリバリの時代があったわけで、今の若者が聴いている曲だって20年後にはみんな色褪せてしまうかもしれない。特に宇多田ヒカルやBUMP OF CHICKEN、コブクロ、ゆず、いきものがかりあたりの中堅どころはそろそろその域に足をかけ始める時期ではなかろうか。
20年後の音楽シーンで、あなたが今まさに熱中しているアーティストがどんな立ち位置にいるのか。色褪せていないのか、はたまた色褪せても名曲なのか。そんな想像をしながら音楽と触れあってみるのもまた一興ではなかろうか。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい