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フレデリックの音楽の国

逃げ込んだ先にあったフレデリズムに魅せられて

2月20日、フレデリックの新アルバム『フレデリズム2』が発売された。

記念すべきニューアルバムの発売日は、三原健司(Vo./Gt.)と、三原康司(Ba.)の誕生日でもあり、奇跡的なリリースタイミングに感動を覚えた。

しかも、この日はライブまであった。ファンにとっても、本人たちにとっても、最高の1日だったであろう。
この日のライブのMCで、フレデリックの音楽を国に例えていたのだが、その表現がとてもしっくりくるバンドだと常々感じている。
私たちはそれぞれ、自分の日常の中で様々なことに心を揺らす。
辛かったり、哀しかったり、腹が立ったり、泣きたかったり。逆に笑いたかったり、叫びたかったり。これらの感情を持て余している私たちが、彼らの音楽の国に逃げ込んで、その中で勇気や元気、癒やしや涙をもらう。
素直に、素敵だなと思った。押し付けがましくなく、常に居てくれる。

彼らの曲の言葉を借りるなら、
“ずっと待ってる” 
“例え時代が合わなくったって同じ涙を知っているんだろうから”
“例えあなたの時計止まってもまた会えると信じて止まらないから”
“今この日をこの瞬間を待ち望んでいた”
(「シンクロック」歌詞より抜粋)
フレデリックは、どこまでも深く、大きく、優しいバンドだ。
 

そんな彼らの、『フレデリズム2』というアルバムについて、今行われているツアーの感想を踏まえながら、じっくりと解き明かして行こうと思う。

まず、今回のツアーについては、1回きりしか行けないことがわかっていたので、その1回に全力をかけていた。
存分に楽しんで、踊って、揺れて、歌ったわけだが。

ライブで燃え尽きたはずなのに、もっともっとフレデリックの音を聴きたい、ずっとライブ空間に居続けたい、という思いが湧き上がって止まらないような、そんな余韻が残る、最高のライブだった。
既存曲のパワーはもちろん、強者揃いの新曲に殴り込まれて、今でも、余韻が抜け切らないまま、ふわふわと過ごしている。

ライブで聴いた新曲の完成度に驚くと同時に、はやく他の楽曲が聴きたいとそわそわしながら、リリース日を待っていた。
 

そして、先日、念願叶って我が家へやってきた『フレデリズム2』。
言葉では魅力を言い尽くせないので、とにかく手に取って聴いてほしい、というのが本音だ。
拙い言葉にはなるが、個人的な感想を綴りたいと思う。
 

まず、アルバムのスターターを飾るのは「LIGHT」。
これまでのフレデリックとは一味違うアプローチのダンスミュージックに仕上がっている。

ツーステップを踏むような軽快なダンスミュージックでもなく、ゆったりゆらゆら揺れながらディスコのようなテイストでもないこの楽曲は、発表当初から異質だった。
シンセの音とバンドのサウンドを融合させたサウンドが印象的な楽曲で、ファンの中には、フレデリックらしくない、と言う人もいる。

今までのフレデリックにはない雰囲気の楽曲だが、個人的には、人間味あふれるMVも含めて、かなり好きな楽曲である。
EDMの要素を用いつつ、バンドのEDMとしてしっかり成り立っている。そのセンスには、脱帽した。

また、シンセの要素が多い分、機械的に聴こえがちであるところを、ライブでは、情熱的に、熱力高く聴かせていて驚いた。

正直、「LIGHT」を初めて聴いたときは、楽曲は好きだが、ライブでどのように化けるのか、全く想像がつかなかった。
しかし、そんな心配は杞憂だった。
息を呑むような照明演出、三原健司のボーカルとしての表現力、エレクトロのサウンドに味つけを施す赤頭隆児のギター。見事にライブで化けた「LIGHT」は、音源とは一味も二味も違った、魅力的な顔を見せてくれた。
 

2曲目は、アニメのタイアップとしても話題となった「かなしいうれしい」。遊び心ある多彩なクラップと、繰り返される歌詞が印象的だ。
歌詞には、対称的な異なる2つの感情が盛り込まれていて、読めば読むほど、聴けば聴くほど面白い。

シングルとしてリリースされていたこともあり、すでにライブの定番曲である。観客の満場一致のクラップが響き渡る光景は、他のバンドではなかなかお目にかかれないのではないだろうか。
 

3曲目の「エンドレスメーデー」は、実は、トレーラーが公開された時点では、あまり曲のイメージが湧いていなかったのだが、フルバージョンを聴いて一気に好きになった。

まず、イントロの赤頭隆児のギターが格好良い。彼は、フレデリックという強烈かつ独創的なバンドの個性に溶け込みつつ、決して食われない、しっかり主張した聴かせるギターを弾くので、本当に唯一無二のギタリストだと思う。

Aメロ、Bメロのバックで鳴っている音色が心地いい。
そして、なんと言ってもサビが最高に面白い。トレーラーのときから、サビのドラムに何かしら不思議な感覚を抱いていたのだが、この楽曲はサビのドラムにオチがないのではないかという結論に辿り着いた。
要するに、ずっと同じように鳴り続けているイメージだ。

私はドラムに詳しいわけではないので、技術的な言及は避けるが、感覚として、今までと違った面白さを感じた。

“夏”と“雪”が共存した歌詞は、この曲のストーリーを動かしているように感じられ、そこに乗るボーカル三原健司の歌声がクセになる。
 

そして、4曲目は、トレーラーの段階から目をつけていた「対価」。個人的には、こういうミディアムテンポのフレデリックの楽曲が大好物なので、待ってました!との思いで聴いた。
跳ね上がりすぎた期待を裏切ることなく、さらにその遥か上を行く仕上がりに思わずニヤけてしまった。

弟、三原康司の紡ぐ、切なく哀愁漂うメロディーが、兄、三原健司の歌声にぴったりと合う。
三原康司の創るメロディーラインは、懐かしいようでいて、新鮮で、大胆なようでいて、緻密だ。彼の曲作りのセンスについては、さすが、の一言に尽きる。

歌詞では、“間違ってたんだな”と繰り返すこと、そして、“傷”や“涙”、躊躇いや戸惑いなどの言葉で切なさを漂わせる一方、
“ふたりのあすのために”
“僕らは強くなるよ”
といった前向きなフレーズも組み込んで、巧みに人の感情の動きを表現している。
三原康司という人物の感性の中で紡がれる、綺麗でいて、鋭い言葉が印象的である。

「対価」のような雰囲気の楽曲を歌っているときの三原健司の歌声が、私は特に好きだ。
全身にじんわり染み渡り、胸の奥をぎゅっと掴んで離してくれない。
切なくて哀愁漂う歌声に、色気が加わり、一気に楽曲の世界観に引き込まれる。
ボーカリストとしての三原健司の魅力を存分に堪能できる、ミディアムテンポのナンバーに仕上がった。
 

フェードアウトしていく「対価」のアウトロから、一瞬にして心を攫っていくのは、5曲目の「逃避行」だ。
MVのネオパラパラのインパクトも然ることながら、音遊びも、言葉遊びも、最高に楽しい。

思いっきり踊れて、ライブにもぴったりの楽曲である。ぜひとも、じっくり聴き込んで、クラップのタイミングを覚えたい。完璧な状態でライブやフェスに臨みたいところだ。

トレーラーを一度聴いただけで、サビの“ばっくれたいのさ”のフレーズが頭から離れなかった。新たな中毒曲の誕生、間違いなしである。

ラスサビの、
“ばっくれたいのさ 退屈をしらばっくれたいのさ”
のフレーズの言葉の詰まり具合が特に面白くて、印象に残っている。
 

6曲目は、前作『フレデリズム』の風味を色濃く残した「スキライズム」。
まず、タイトルが良い。“好き”と“嫌い”という、相対する言葉を結ぶ、遊び心溢れるタイトルから、フレデリックらしいなと感じた。

この楽曲のMVが公開されたとき、1曲目の「LIGHT」とは真逆の反応が目立った。フレデリックらしい、原点回帰だ、と。

たしかに、フレデリックのイメージとして「オドループ」や「オンリーワンダー」を思い浮かべると、王道のフレデリックの曲らしい作りになっている。

ループする歌詞と、わかりやすくダイレクトに頭に残るメロディー。
私は、「スキライズム」を聴いて、フレデリックの王道が、さらに進化して、より懐が深くなっている印象を受けた。
ぐるぐる回るMVも、とても斬新で、楽曲だけでなく様々な部分でも楽しませてもらっている。

また、歌詞の中の、
“嘘の自分で好かれるよりもホントの自分で嫌われよう”
の部分が特に印象的だ。
真っ直ぐでシンプルな言葉に、勇気をもらえる。

誰もが持っている、相対する2つの感情の揺れを鋭く捉えた歌詞が、軽快なリズムに乗って紡がれていて、心を掴まれた。
曲の終わりが唐突なのも、計算され尽くしていて、良い。何度もリピートしたくなる楽曲だ。
 

王道のフレデリックで安心させたあとの7曲目。良い意味での恐怖を覚える。「他所のピラニア」は、初期のフレデリックを彷彿とさせる、妖しくて、怪しい楽曲だ。

爽やかなナンバーや、踊れるポップなナンバー、お洒落なダンスミュージックに、ミディアムテンポのバラード。
どれも見事に《フレデリック》という大きなジャンルの中に食われて、吸収されているが、「他所のピラニア」のような曲なしにして、フレデリックは語れない、と個人的には思っている。

フレデリックには、良い意味でねっとりとした変わり者っぽい側面がある。
「SPAM生活」や「峠の幽霊」など、ほんのり気持ち悪さとミステリアスさを漂わせる楽曲は、ファンの間でも人気が高い。

「他所のピラニア」には、そのねっとりとした要素を感じる。心に残る、とか、胸を締め付けられる、とかとは違った、脳内に侵入されて、染められていくイメージだ。

一見しただけでは歌詞の真意も、メッセージも読み取ることは難しい。だからこそ、面白くて奥深い。
その歌詞を彩るおかしな音遊びが、また楽しい。怖いのにクセになる、フレデリックの深い部分の魅力を詰め込んだ楽曲だ。
 

8曲目は、ミニアルバムの表題曲である「TOGENKYO」。
ミニアルバムのあまりの完成度の高さに、これ以上のアルバムなんてあるのか…?と真剣にビビっていた頃が懐かしい。

この楽曲もフェスやらライブやらで充分すぎるほどよく育った、安定のナンバーだ。

やはり何度聴いても良い。繰り返すフレーズも、楽曲のテンポも、音の変遷も巧みである。「他所のピラニア」の不安定な雰囲気から一転、「TOGENKYO」の安心感が心地いい。

フレデリックの楽曲の振り幅の大きさがよくわかるような曲順なので、アルバムを通して聴くとより楽しめる。
 

9曲目は、トレーラーでイメージしていたものとは全く異なる楽曲の展開に驚かされた「YELLOW」だ。

今まで聴いたことのない、語りかけるようで、ふっと力を抜くような三原健司の歌い方が新鮮だ。
“YELLOW”のフレーズをきっかけに、曲が思いもしない方向に舵を切ったので、さらに衝撃を受けた。
そして、ラスト1行の歌詞を歌う三原健司にまた驚かされて、あっという間に1曲が終わってしまった。

ゆっくり再度聴き直してみると、「YELLOW」が、アルバム全体の中で異質な空気を放っていること、楽曲のイメージとしては「LIGHT」の異質感に似ていることに気がついた。

どちらも光をテーマにしている楽曲であり、フレデリックに新しい風を起こしている印象だ。
EDMの色を濃く出してはいるものの、メロディーラインは違ったところにいるような、不思議なバランス感の曲である。
 

曲の振り幅に楽しく振り回されつつ、だいぶ終盤に近づいてきた10曲目に「CLIMAX NUMBER」がやってくる。
一言で表すなら、フレデリックの冬ソング、だろうか。

とにかく曲が可愛い。途中に顔を出すギターが格好良かったり、常時後ろで奏でられるベースが楽しげでお洒落だったり、と、聴いていてわくわくするナンバーだ。

双子のハーモニーもとても心地いい。かなりポップな楽曲に仕上がっていて、ラスサビのコーラスはまるで聖歌隊のようだ。音が踊っている、という表現がしっくりくるような、キュートな楽曲である。

歌詞の“君”を誰に置き換えて聴くのかによって、楽曲のストーリーはどんどん膨らんでいく。
こんな風に、想像の余白を残してくれる歌詞は、フレデリックの魅力のひとつだろう。
 

タイトル解禁の段階で、ファンをざわつかせていた11曲目は、「夜にロックを聴いてしまったら」。
フレデリックの転調が大好きな私にとっては、堪らない。

歌詞は、彼ら自身のことを歌っていると捉えることもできるが、私は自分に置き換えて聴いていた。
自分が夜にフレデリックを聴いてしまったら。もしそれが他のバンドならどうだろう、そんなことを考えながら聴いてみるのも面白いかもしれない。

サビのドラムが表打ちなのもまた良い。裏打ちのイメージが強い4つ打ちだが、表打ちにすることで、同じダンスミュージックでも他の楽曲とはまたイメージが変わる。
細かいこだわりが活きるナンバーだ。
 

12曲目は、昨年フェスでもライブでも大活躍だった「シンセンス」。
神戸ワールド記念ホールで初めて聴いたときに、大袈裟ではなくて、電流が走ったような衝撃を受けた楽曲だ。

フレデリックにしては珍しく、ギターソロからスタートする楽曲で、赤頭のギターの音色が光る。
軽快なテンポに乗せて、ハンドマイクで歌う三原健司の自由自在なボーカルが印象的だ。

「シンセンス」を初めて聴いたときの、神戸ワールド記念ホールでの衝撃、野外の夏フェスで聴いたときの解放感、ライブハウスで聴いたときの踊らせるディスコ感。
どれもこの楽曲が持っている資質である。

どんな場所でも光る、新しいセンスを持っている。
まさしく名前の通りの楽曲だ。
「シンセンス」は、フレデリックと新しいリスナーとを繋ぐきっかけになり得ると感じた。

歌詞も、フレデリックにしては強めの言葉が多い。
“歯向かってゆけMUSIC”
“切り裂いて切り開いてゆけNEW SCENE”
“歯向かって向き合ってゆけNEW SCENE”
狭い空間をぶち破って、自由になる。そんな真っ直ぐなメッセージを、ライブでは三原健司が観客を煽るように歌う。
それがまた堪らない。ライブ映えする、フレデリックの新たなステージを支える名曲だ。
 

これだけのボリュームのアルバムを締めるのは、13曲目、「飄々とエモーション」だ。
神戸ワールド記念ホールのアンコールで披露された、あの時から、この楽曲は、たくさんのライブを積み重ねて、よりエモーショナルに、よりパワーのあるナンバーに育った。

これまでのフレデリックをさらに上の段階へ押し上げる、アリーナやドームを見据えた、壮大なスケールの楽曲だ。
三原健司のボーカリストとしての歌唱力、表現力の全てを詰め込んだナンバーで、今までのどの楽曲よりも《歌》を届けることに力を入れている印象を受けた。

シンガロングの部分はもちろん、最近のライブでは定番の、ラスサビ前のロングトーンも含めて、強いメッセージ性を感じる。

“僕の最低も最高もさらけ出して 伝わらない夜を変えて”
“君の最低も最高も声に出して 伝わらない夜を変えて”
歌詞のこの部分、“僕”と“君”が呼応しあっていて、どちらも全てをさらけ出すことによって、変えていこうという、強い意志がみえる。

そして、ラストは、
“伝わらない夜よ 新しい朝を迎えて”
との言葉で締められる。

フレデリックの新しい朝に、私たちそれぞれの新しい朝に。これから前に進んでいくのに、ぴったりの楽曲だ。
 

こうして、アルバムを通して聴くと、フレデリックのオンリーワン感をひしひしと感じる。
こんなに楽曲の幅が広いアルバムは、フレデリックにしか作れない。
『フレデリズム2』は、これからのフレデリックを語る上で欠かせないアルバムになるだろう。

先日発表になった、バンド史上最長のロングツアーのファイナルは、ドラム高橋武の地元にある、横浜アリーナだった。
初アリーナは3人の地元神戸で、2度目の大箱は高橋武の地元のアリーナで。フレデリックは、そういうバンドなのだろう。

アルバムを聴き終えた私も、進化していくフレデリックに負けないように、必死で歯向かっていこうと思えた。

フレデリックの音楽と共に、新しい朝に向かっていこう。
 

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