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プラネット・アースを貴方に

プリンス2007年作品のアナログ盤を買った人は決して外袋を捨てちゃ駄目

 さてさて、発売したてのプリンスの再発シリーズ三本立て。娘は『ミュージコロジー』が、息子(と私)は『3121』が好きということだ。それでは、我が家でプリンスの2007年作品『プラネット・アース』こそが大好きだという人物はいないのだろうか?否。最終兵器、我が妻が居る。生前、『プラネット・アース』を「ここ最近の作品の中で一番好きだわ」と言っていたのが強く印象に残っている。当時、我が家で『ミュージコロジー』『3121』『プラネット・アース』を一番聴き込み、歌詞をきちんと読んでいたのは妻だし、日本の大多数のプリンス・ファンと同様、これらの作品と密接に連動しているはずのフル・コンサートを実際に体験することは勿論、映像ですら堪能することはできないでいた。そんな妻が惚れた一作がプラネット・アースだ。信頼できる。

 表題曲“プラネット・アース”はピアノで始まり、プリンスの切実なヴォーカルが入り、楽器演奏が重ねられ、往来するコーラス、そして1曲目から容赦なしに咆哮するギター・ソロと、ドラマチックな展開が待っている。妻は、「マイケル(・ジャクソン)みたい(な曲名)」って言っていたっけ(MJの本『ダンシング・ザ・ドリーム』の冒頭を飾る詩“PLANET Earth”のこと。同じタイトルでも、内容は両者でかなり違う。寧ろMJの“アース・ソング”の方がプリンスの“プラネット・アース”と共通項が多いだろう)。

 2曲目“ギター”は文字通りの曲。2作品前のアルバム『ミュージコロジー』からの“コール・マイ・ネーム”では「君のことを歌った曲を作らずにはいられないんだ」なんて甘~いことを歌っていたが、この曲で突き放すように歌っている「君のこと愛しているんだけど、僕がギターへ捧げている愛ほどではないんだよな」なんてあたりがプリンスの本音だったりするのかもしれない(この歌詞読んだ時、ちょっと痛快に思ってしまったのは、プリンスが女性への愛をあまりにたくさん歌っていたことへの嫉妬だったのだろうか?!)。このアルバム・テイク、まだフェイドアウトする必要がないところで終わってしまうのが何とも罪作り。どうせ、ライブでは延々ギターを弾きまくっていたんだろう!

 ジャジーなバラード“サムホエア・ヒア・オン・アース”、ウェンディ&リサの参加が嬉しいアップテンポなのにどこかのどかなギターリフが印象に残る(カントリー?)ポップ“ザ・ワン・ユー・ワナ・シー”、前述の“コール・マイ・ネーム”と同様またまたグラミー賞で最優秀男性R&Bヴォーカル・パフォーマンス賞を取ったソウル・バラード“フューチャー・ベイビー・ママ”(将来僕の子供のママになるのは君だという求愛ソング/せめて各国の名前が登場する歌詞の中では日本も候補地にして欲しかった)、そして“ギター”での突き放した態度とは一変、セレブとの夢のような恋愛ファンタジーをラップで歌い上げる大人のラブソング“ミスター・グッドナイト”に、ストーリーとしては続き物のようでいて曲調ががらっと朗らかに変わる“オール・ザ・ミッドナイツ・イン・ザ・ワールド”へと繋がる。
 
 アルバムのハイライトの一つと言えるのが、架空のスーパーモデルを歌った“チェルシー・ロジャース”だ。我が家ではこの曲を聴くと、ダフト・パンクの“アラウンド・ザ・ワールド”でミュージックビデオに登場するキャラクター達がベースに併せてコミカルな振り付けをする様が思い浮かぶねーなんて言っていたが、この曲に参加しているシェルビー・J.のヴォーカルは本当にパワフルだし、ライブではさぞや見応えがあっただろう。コーラスがウェンディ&リサっぽい“ライオン・オブ・ユダ”を経て、やはりウェンディ(&リサ)が関わっているであろう最終曲、戦争と平和と愛と解決を歌う“レゾリューション”で終演となる。

 良い作品だ。とは言え、個人的にこの時期のプリンスにはちょっとしたわだかまりがないわけではない。それは、THE EARTH TOUR(地球ツアー)と銘打ったツアーのはずなのに、会場がロンドンのO2アリーナ(21NIGHTS IN LONDON)からピクリとも動かなかったことだ。まぁ、「僕がカムバックしたわけではない。ファン達がカムバックしてきたのさ。」などと至極真っ当なことを言うプリンスのことだから、地球のあちこちからツアーで俺様を観に来てくれたまえ、とでも思っての命名かもしれない。あぁ、でも、ギャラ高騰にもほどがある時期だったわけだが、やっぱり日本に来て欲しかった!当時はほぼほぼ諦めていたけれども。 武道館二十一夜なんて、夢のまた夢だし。

 あと、妻とこの作品の良さについて、正に今、もっと話をしたかった。そしたら、きっとこの文章も、もう少し芳醇なものとなっただろうに。。。

 CD/LPには、今回の再発にあたって一新された当時の彼の軌跡がうかがい知れる充実した解説や対談、そして対訳(これも新たな和訳!)が付属されている。

 あっ、そうそう、このアルバム自体は決してマニアックなものではなく、プリンス初心者にもお薦めだが、アナログ盤の仕様はなかなかそそられる。「特殊レンティキュラー・カバー・ジャケット仕様」なるもので、思わず「レンティキュラーってなんだ?」と検索してしまった。地球を見下ろす胸毛のプリンスがジャケットに、と思いきや、角度を変えると(中田ヤスタカが書くPerfumeの歌詞かっ!)地球の表面模様のかつてプリンスの名前だったシンボル・マークがどーんと浮かび上がるのだ。見る角度によってはシンボル・マークが地球に突き刺さったりしていて、冷静に考えればちょっとした狂気だ。CDも同じ仕様ではあるが、迫力が違う。同じ3D仕様の映画でも、家のパソコンで観るのと映画館で観るのとが違うのと同じくらいのインパクトの違いだ(言い過ぎか?)。店頭で見掛けることがあったら、是非手に取ってじっくり見て、そのままレジに直行していただきたい。

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