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バンドは改名すると変わってしまうのか?

CIVILIANツアー“Hello,civilians.” 2019全国編・名古屋に寄せて

Twitterで音楽関連のアカウントをつくるきっかけはそれぞれだと思うけれど、わたしの場合はチケットの入手困難なアーティストの情報を得る為だった。そして同じアーティストを好きなひとたちとの交流が深まるにつれて「あなたならこのアーティストも気に入ると思う」とおすすめをされることもある。
CIVILIANというバンドはその最たるものだ。
人生の半分以上をCoccoと共に生きてきたわたしは、CIVILIANのボーカルギター・コヤマヒデカズがナノウ名義でカバーしたCoccoの「遺書。」を聴いて、彼の歌い方に一気に引き込まれた。そこからどんどんCIVILIANの楽曲を聴くようになった。
CIVILIANは2008年に結成されたスリーピースバンドだ。2016年7月18日にLyu:Lyu‬から改名して、同年11月23日にメジャーデビューを果たした。
改名前のLyu:Lyuの曲を聴いていると、‬内へと向かうエネルギーが強くて、今にも消えそうな光を見ているような気持ちになる。一方でCIVILIAN名義で初めて世に放った「Bake no kawa」にはこんな言葉がある。

『奪われたものを全部 取り返して笑おうぜ』

わたしはこれがCIVILIANの軸なのだと感じた。‪
Lyu:Lyu‬とCIVILIANは、同じようで違う。
‪Lyu:Lyu‬というバンドが選ばなかったことや喪ってしまったことを、もう二度と手に入らないと受け止めながら、それでも音楽を続けていこうとしている意志を言葉とメロディーとリズムにすべて詰めたのがCIVILIAN。
しかしそれ故に離れてしまったリスナーもいるらしいというのをわたしは徐々に知ることになる。
「名前が変わって別物になってしまった」。
もしくは「メジャーデビューして変わってしまった」。
わたしにもそう感じて離れてしまったアーティストは少なからずいるから、しかたないとは思う。人間は変わる。アーティストとリスナー、どちらかが変わればそれは自分に向けた音楽ではなくなる。

ところが、そんな憂いをすべて吹き飛ばしてくれたのが今回の彼らのツアーではないだろうか。
2019年1月末から彼らは“Hello,civilians.” 2019全国編と銘打って全国を回っている。MCを意訳するがコヤマ曰く今回はリリースツアーではなくて「コヤマヒデカズという固定概念」を破る挑戦らしい。地方公演を幾つか観に行ったのち、2月24日の名古屋CLUB QUATTROのセミファイナルで、わたしは‪CIVILIANの最高値を目撃した。
コヤマヒデカズの圧倒的歌唱、パフォーマンス。
有田清幸の力強く空間を支配するドラム。
純市の、時には主張しながらもすべてを支えてくれるベース。
CIVILIANとして世に放った曲も、‪Lyu:Lyuから演奏し続けてきた曲も、あんなに心に刺さって感情を抉ってきたことはなかった。自分の過去を許したくないから泣かないように決めているCIVILIANのライブで何度も雫が頬を伝った。
また、この日の夜、Lyu:Lyu‬の頃から彼らの姿を観てきたリスナーの賞賛をわたしは幾つも耳にした。
もしかしたら、CIVILIANから‪Lyu:Lyu‬が解離していた時期はあったのかもしれない。しかしこのツアーで、彼らは‪Lyu:Lyu‬とCIVILIANの統合を果たしたのだ。

何故わたしがCIVILIANに惹かれるかというと、思春期の失敗や恥を思い出させてくれる作品が多いからだ。
人間には「忘れる」という機能が備わっている。
辛い過去を思い出す必要はない。
それでもCIVILIANの音楽を聴くと、強制的に呼び覚まされてしまう。
……ライブから数日経って、彼らの曲を聴いている。
「顔」の歌詞にこんな一節がある。

『間違いだらけの私は 今日も 確かに生きている ずっと こうして生きてゆく』

過去に再び傷つけられた後に、彼らは、それでいいよとわたしを肯定してくれる。
名前を変えたくらいで変われるなら、人間は、わたしは生きることにこんなにも苦労しないだろう。
同様に、CIVILIANと‪Lyu:Lyu‬は違うようで同じ、地続きの音楽なのだと認識させられた。
‪Lyu:Lyu‬は自殺したと思っているかつてのリスナーは多いかもしれない。それは違う。死んだように見せかけて生き延びていたのだ。‪CIVILIAN(一般市民)のひとりとして、Lyu:Lyu‬という存在も、これまでやこれからのリスナーも、生きている。そしてそのなかのひとりであるわたしにこれからもメッセージを送り続けてくれるのだろう。

来たる3月17日、マイナビBLITZ赤坂でのツアーファイナルでは、ゲストにmajikoやアイドルグループのまねきケチャを招いてのパフォーマンスになるという。
このツアーで大きな進化を果たした彼らが、どんな傷を抉りながらも回復させてくれるのか、美しい景色をわたしに見せてくれるのか。今からとても待ち遠しい。

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