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未来を照らす道しるべ

04 Limited Sazabysがライブハウスのヒーローを全うした「SOIL」ツアーの記録

04 Limited Sazabys “SOIL tour”が2019年2月21日にバンドの地元Zepp Nagoyaで幕を閉じた。

年を跨ぐこと4ヵ月。全国36公演を回ったロングツアーは、バンドを続けて10年間の栄養が詰まったアルバムを提げたレコ発ツアーであると同時に”ヒーローになったフォーリミ”の凱旋ツアーでもあった。僕も関東から全国に飛び出して何ヶ所かツアーを回ることが出来た。
 
 

2018年は地方の小さいライブハウスを回った対バンツアー。その中には前作「eureka」のツアー以来、およそ2年ぶりに訪れる場所も多く、地元のファンの「待ってました!」という空気があらゆるところで滲み出ていた。
 

10代〜20代前半の若手バンドが多く名を連ねた対バンのラインナップ。今やYON FESをはじめ若手をフックアップする存在としてもフォーリミの存在感は大きい。自らの影響力の大きさを自覚しているからこそ、このツアーでは若手バンドを地方に発信する役割を担ったのだと思う。

目撃した対バンの中から何組かピックアップすると、まず北海道の旭川と帯広公演に出演したSIX LOUNGEは「フォーリミのおかげで初めてこの街のステージに立てた」と話していた。彼らの地元の大分から1,500キロも離れた北の大地にロックンロールが鳴り響いた。

「フォーリミ先輩が俺らみたいなクソ無名なバンドを呼ぶってリスキーなことをしてくれたからには、ライブで返すしかない」と意気込みを語ったのは鹿児島公演に出演したヤングオオハラ。沖縄からビッグウェーブを起こす弱冠20歳のニューカマーはここから更に勢いをつけ、見事にYON FES 2019の出演を勝ち取った。

そして対バンツアーのファイナルの宮崎と熊本公演に出演したtetoは、前回の対バンツアーとYON FESを共に経験した言わば”常連組”として、フォーリミの背中を見てきた成長の軌跡を存分に感じさせる熱演を見せてくれた。
 

もちろん主役のフォーリミも「SOIL」の曲をライブで育てながら競演を重ね、若い刺激を自らの力へと、そして久々に訪れた地方のライブハウスへと還元していった。
 
 
 

2019年に入ってからは全国の主要都市の大型ライブハウスを回るone man seriesへ。

ワンマン初日の札幌公演で、GENさんは対バンツアーを振り返り「僕らも“これはチャンスだ”と思うきっかけを先輩がくれたおかげでここまで来れたから、今度は僕らがチャンスを与えられる側になろうと思った」と話していた。

ここ数年のフォーリミにとっての“チャンス”といえば、Hi-STANDARDやマキシマム ザ ホルモン等のツアーに参加したこと。その両者とも出演したAIR JAMも記憶に新しい。偉大な先輩から渡ってきた世代を継承するバトンは、フォーリミに更なる強さと継承者としての責任感を与えたと思う。
 

さらに「20歳とか23~24歳ぐらいに自分の人生について1番迷ってた時期に“こういう大人がいてくれたら良いのにな”って思っていた大人に自分がなりたい」とMCを続けた。20歳の時に初めてフォーリミを観て今年で24歳になる僕に、この言葉はあまりにも胸に突き刺さってしまった。

モノと情報に満たされ過ぎて満たされない時代に、選択肢が多過ぎて正解が分からずにいる僕らの世代にとっての未来を照らす光。テレビに映る戦隊モノを見ていた頃から20年越しに現れた正真正銘のヒーローなのだ。
 
 

アルバムの1曲目「message」には、フォーリミの武器であるKOUHEIさんのツービートに乗せて<僕には君を強くする責任があるんだ>というメッセージが叩き込まれている。
バンドの原風景を感じさせる英語詞メロディックパンクをこのタイミングで鳴らすのは「今なら過去のどの時期の自分にも会いに行ける、昔の自分に対する言葉がリスナーの想いを代弁する言葉になる」という“ヒーローになったフォーリミ”の自信と覚悟を表明するためだったのだとツアーを通じて再実感した。
 

ここ最近のフォーリミの活躍ぶりは順風満帆そのものに見える。しかしながら彼らの楽曲には今も悔しさが付いて離れない。彼ら自身に“まだまだこんなもんじゃない”という満たされない気持ちがあるからだ。
そんな気持ちこそが、僕らが抱えるネガティブな感情を代弁してくれている。1曲の中に絶望のトンネルと、そこを抜けた先の微かな希望が共存しているのだ。

<喜びも苦しいし 悲しみも楽しい>と「Password」で歌ったように、幾多の困難を乗り越えたフォーリミだからこそ鳴らせる楽曲が「SOIL」には詰まっている。曲の演奏が終わる度に力強いガッツポーズを見せたRYU-TAさんの姿は“メンバー自身がフォーリミの音楽に救われている”ことを物語っているようだった。
 

その後も何ヶ所かでワンマンライブを見届け、バンドのホームタウン、超満員のZepp Nagoyaで迎えたツアーファイナルは<いつかこうやって話した頃の 夢が醒めないまま>と歌い出す「Milestone」からスタートした。続けて<醒めない夢を静かに観たい>と歌った「monolith」で一気に熱狂のレッドゾーンへ。

音楽以外の退路を切る覚悟を歌ってから5年、醒めないまま転がり続けるフォーリミの夢物語にマイルストーンを打ち立てた。ツアーファイナルで見せたこの2曲のリレーに、早くも目頭が熱くなった。
 

ワンマンシリーズに突入してから、GENさんが「みんなのおかげでパンクロックに就職出来た」と頻りに口にしていたのが印象に残っている。

ライブ後半のMCで「音楽は目にも見えないし形もないし、お腹が膨れるものではないし、言ってしまえば必要ないものだと思う。だけどライブハウスの”あの曲のあのサビが来た瞬間の気持ちの高まり”はどんなAIにも数値化出来ない。そんな感情の揺らぎを愛して信じていきたい」と話していた。

必ずしも万人に必要のない音楽で何を表現して、どんな価値を見出そうとしているのか、そして僕らは音楽に、ロックバンドにどんな価値を求めているのか。そんな問いに対する1つの答えだった。
それ以上の答えは考えない方が良いかもしれない。音楽を純粋に楽しむ余白が減ってしまう気もするし、考え過ぎても重荷になってしまうから。
 

36本に渡るロングツアーの最終盤、大勢の歓声と拍手で迎えられたアンコール。
HIROKAZさんのギターの音色に乗せて「ここにいる間は何者にならず全身で音楽を感じて、生きてる実感をキャッチして持って帰って欲しい」とGENさんが想いを語り、アルバムのラストを飾る「Squall」を力強く響かせた。
日常のネガティブを洗い流すべく降り注いだ五月雨は、このツアーで多くの人を生身の自分自身へと生まれ変わらせたはずだ。
 
 

今回の旅の先先で、GENさんは「SOIL」というアルバムについて「10年バンドやって来た今だからこそ、自分たちは何処からやって来て何者なのかっていうのを再確認するようなアルバムを作った。だから特別新しいことはやってないけど、古くならないものが出来たと思う」と話していた。

結成して10周年の2018年にメンバーは全員30歳になった。「SOIL」は人生で大事な20代を04 Limited Sazabysに捧げた彼らの10年を総括する作品だ。

ファンから見た「こんなフォーリミが見たい」という声に全方位に応えてるアルバムだと思うし、この先「フォーリミってどんなバンドなのか」と問われた時に必ず差し出すアルバムになったら良いと思う。
 

今回のツアーでは全国を駆け回り「ライブハウスのヒーロー」を全うした。バンドの出自に立ち返った作品を掲げたのだから、ライブハウスの距離感でヒーローは1番輝きを放つことが出来たのだろう。もちろん、ここが天井でこれより大きいステージは目指さない、という話ではない。

この1年間でライブハウスもアリーナもフェスの巨大なステージも経験してきたフォーリミは、今まで以上に自由を手に入れ一方で責任を背負いながら、10年かけて育てた「SOIL」という土壌にこれからどんな種を撒いてどんな花を咲かせるのか。僕たちファン一同は大きな期待を寄せている。
 
 

新しい道を切り開いていく04 Limited Sazabysとの夢みたいな現実の物語からまだ醒めないままでいたい。10年間の記念碑を掲げて回った旅が僕らにとって、バンドにとって、そして日本のロックシーンの未来を照らす道しるべになりますように。

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