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King Gnu「白日」のMVを徹底解説

よくぞこらえた!これなら万人に刺さる

快進撃が止まらないKing Gnu。ドラマ主題歌「白日」のMVが満を持して公開された。PERIMETRONのOSRIN(ディレクター)、佐々木集(プロデューサー)両氏に「よくぞこらえた」という讃辞を贈りたい。

「Prayer X」のMVは怖すぎた。『BANANA FISH』というタイアップがありながら、同曲がプチブレイクに留まったのは、このトンガリまくった才能が影響したかもしれない。

ヌー沼の深みにハマると「美しすぎるのは恥ずかしいのね」と理解できるが、King Gnuを知ったばかりの時点では美しすぎる世界観に浸りたい人が多いだろう。

どうあがいても井口理の歌声は美しすぎるのだから。

もちろんKing Gnuの強みは井口の美声のみを押し出さないところにある。キーマンの常田大希は、ドヤ顔で井口の美声を誇ったりはしない。そのセンスこそが信頼につながっている。

男が惚れる男、常田大希。

ただヌーの群れを本気で巨大化させるつもりなら、井口の美声という武器を最大限に活かすべきである。

音楽好きには理解できない話かもしれないが、耳慣れた美しい音のみに反応する人のほうが圧倒的に多い。だから音楽好きにとっては物足りない曲が流行りがちなのだ。

ヌーの群れの根幹にあたるファンはKing Gnuがある意味、革命を起こそうとしていることを理解している。ただ、そこまでおもしろがれるのはどこまでいっても少数派だ。

何しろ、誕生から60年以上経ってもロック自体がサブカル止まりである。その壁すらぶち破るためには、音楽好き・ロック好き以外の皆さんを巻き込まなければならない。

「白日」ならできる。単純に美しい曲という勘違いすら可能だからだ。ヌーファンはわかっている。実は「白日」がどれほど音楽的に複雑か。歌詞の意味がどれほど深いか。

しかし群れを巨大化するためには、井口の美声に浸りきれるMVが必要だ。その点でシンプルな演奏シーンのみに徹した「白日」のMVは大正解。

「Slumberland」でさんざん派手にやらかしたあとだから、そして「白日」が実は複雑な曲だからこそ、ようやく落ち着いた映像でもガマンできる域に達したのだろう。

そんな「白日」のMVを独自に徹底解説する。

撮影場所は福島県いわき市にあるヘレナ国際ホテル。バブル期に造られた未完成のホテルで、撮影施設として利用されている。

ぼくのりりっくのぼうよみ「after that」、みやかわくん「略奪」、KANA-BOON「Fighter」、UVERworld「DECIDED」、MONDO GROSSO「惑星タントラ」、LiSA「Thrill, Risk, Heartless」などのMVも撮影された場所だ。

映像はモノクロというかグレースケール。タイトル「白日」の英語表記と最後のクレジット、PERIMETRONのロゴマーク以外は白・黒・グレーという渋い映像に仕上がっている。

一貫して演奏シーンのみだが、登場人物はKing Gnuの4人だけではない。鍵盤奏者4人とおそらくエンジニアが1人いる。

MVの全体画面における立ち位置を確認しよう。

井口が中央だが、諸事情によりアップでは横顔しか映してもらえないので、左上を向いて立っている。井口と対面するかたちで左上にいるのが常田。

ベースの新井和輝は右上、ドラム&サンプラーの勢喜遊は右だ。鍵盤奏者は4人とも階段の上にいる。勢喜の近くに1人、常田&新井ラインより上に3人という配置。エンジニアは左下である。

勢喜の近くにいるのがWONKの江﨑文武(えざき・あやたけ)。「白日」の音源でピアノ・オルガン・シンセなどを弾いていて、MVではピアノを担当。その他を別の3人が担当したわけだ。

その3人は左から小室響(こむろ・ひびき)、SANABAGUN.の大樋祐大(おおひ・ゆうだい)、Charlesおよびサンプリエの深澤希実(ふかざわ・のぞみ)である。

登場人物が把握できたところで、順を追って映像を見てみよう。最初に登場するのは横顔の井口。

ヒゲを生やしてメガネをかけると『闇金ウシジマくん』シリーズの山田孝之のようだが、衣装は白いトレーナーにダメージジーンズ。

プロデューサーの佐々木集がこの野暮ったさを絶賛している。

続いてピアノ江﨑とドラム勢喜の後ろ姿、井口を含めた3ショットが挟まる。そして「白日」のタイトルが表示され、全体像が映し出されるという流れになっている。

さらに黒い服に身を包んだ常田が登場。

常田が黒・井口が白という対比は、切れ者のアッシュ・純真な英ちゃんという『BANANA FISH』の登場人物を重ねて見ているファンにとって垂涎ものだろう。

ベース新井の横揺れ、勢喜の後ろ姿に続いて、常田の背後に映り込むのがサングラスをかけた大樋。2019年2月15日にSANABAGUN.の正式メンバーになったばかりだ。

<真っ新に生まれ変わって 人生一から始めようが>

印象的なサビだが、耳コピの段階では「始めようか」だと思っていた。「か」と「が」の違いで意味はまったく異なる。

「やり直そう!」と促しているのではなく、やり直したところで結局はリセットできない人生を自覚する内容。作詞をした常田の中には悟りきった老人が入っている説を再確認するばかりだ。

<へばりついて離れない 地続きの今を歩いているんだ>

尋常ではない歌声の高低差。普通なら誰もが歌いたくなるサビで、こんなにも難しい音程の上げ下げなどしないだろう。

<もう戻れないよ、昔のようには>

「もう」の部分の入りが普通より4拍早いところもおもしろい。その分「もう~~~」と伸ばすことになる。作曲をした常田の遊び心。こうした仕掛けにも奇才ぶりを感じる。

<曖昧なサインを見落として 途方のない間違い探し>

「サイン」のところで常田が目を細めるのがツボという目ざといファンもいる。たしかに「白日」にも様々な仕掛けが施されているが、見落とすと「シンプルに美しい曲」になってしまう。

「見落として~」の部分で後ろ姿が半分映るのは、「白日」のMVに唯一登場する女性、深澤希実。ベレー帽を被り、メガネをかけている。

<全てを忘れさせてくれよ>

「白日」は全編ユニゾンだが、メインボーカルは井口と常田の交互。2番のサビの最後で、井口はのけぞっている。

実は既にカラオケで「白日」を歌ってきたのだが、この「忘れさせて~」の部分だけは高音すぎてオクターブ下げる作戦に出るしかなかった。無理やり歌うと恐ろしいキンキン声になる。

女性でも高音すぎるのに、美声のまま見事に歌い上げている井口。これは地球人全員がのけぞるべき才能といっても過言ではない。

続いて一瞬映るのが、柄シャツに身を包んだ小室響の後ろ姿。顔は拝めないが、オルガンを弾いている。

ヌーファンなら小室響という名前に聞き覚えがあるだろう。King Gnuのカラオケに挑戦した動画を友人の勢喜に送ったところ、既読スルーでツイッターにアップされてしまった人物だ。

そう、King Gnuのカラオケはこの上なく難しい。ツインボーカルでコーラスを重ねた曲も多いから、1人ですべてを歌おうとするととんでもないことになる。

「白日」に至っては全編ユニゾンなので、高音と低音の両パートが並立するという変わったカラオケになっていた。小室氏を含め、地球人全員にぜひ挑戦してもらいたい。

間奏では常田のギターが唸る。そして美しく儚くシリアスな「白日」にはおよそ似つかわしくない陽気なサウンドが突如として舞い込む。

<朝目覚めたら どっかの誰かに なってやしないかな>

これまでの達観した「白日」の主人公はどこへ行った? 聞き流して欲しいほどの戯言が飛び出す始末である。

地球人全員の想像をはるかに超えたであろう変化球だが、これぞKing Gnuの真骨頂。こうしたおもしろみがわかるとヌー沼からは抜けられない。

通常サイズより大きめというシンバルを叩きまくる勢喜にもシビレる。

<取り返しのつかない過ちの 一つや二つくらい 誰にでもあるよな>

「時には~」という出だしでは真っ白だった井口が、「あるよな」で真っ黒な腹の底を見せてしまった。そんな展開だ。

ここから「うんざり」を挟んで「真っ新」のサビへと畳みかけるくだりは狂気の沙汰である。神がかっているとも言えるだろう。

ラストまで聴いても「白日」がシンプルに美しい曲という人がいるなら、確実にサインを見落としている。それでもヌー沼にハマっている群れの皆さんは温かく見守ることだろう。

なぜなら群れの巨大化には必要な勘違いだという常田の企みがわかるから。何はともあれ、地球人全員に「白日」のMVをご視聴いただきたい。

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