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バンプが私にくれるもの

泣いた時はあの二曲を

 

小学校五年生の時、お兄ちゃんが引きこもりになった。いつも遊んでくれる、背が高くて勉強が出来て自慢のお兄ちゃん。よくリビングで走り回ってお母さんに二人で怒られた。お兄ちゃんはいつも笑顔ですごく優しかった。そんなお兄ちゃんがみるみるうちに変わった。真っ暗な部屋に一人。昼夜逆転の生活。昼間会ったとしても私なんか眼中にない。心臓は動いているのに死んでいた。焦点が合っていなかった。時には手をつけられないほど暴れた。窓は三回蹴破って割った。そのため床に血が落ちてる時もあった。小学生の私にとってただただ恐怖だった。

両親はお兄ちゃんに付きっきりになり、私のことは見てくれなくなった。寂しかった。なんで私だけ、なんで私のこと見てくれないの?、なんで私だけ家に友達呼んだらダメなの?、いつになったらお兄ちゃんは普通になるの?私のいる意味は、生きている意味はどこにあるの?
いつも何をしてもそれだけを考えていた。

ある日両親に泣きながらそのことを訴えたことがあった。両親は私を前に泣かなかった。けれどずっとごめんねと、ただずっと申し訳ないと。私はお母さんにお父さんにそんな顔をさせたかったわけじゃない。少しだけ私の方を見て欲しかった。

その日から私は仮面を被ることを決めた。家の中でも地雷を踏まないようにお兄ちゃんが暴れないように、親戚の前でもお兄ちゃんが来ない分余計に明るく振る舞った。家の中和剤になって家を和ませることに心血を注いだ。それが私の生きる意味だと思っていた。中学生になりクラスの中でも仮面を被ったままだった。誰にも言えなかった。明るく振る舞うだけが私にできる唯一のことだった。

だんだん私はバランスを崩した。心の中では泣いているのに顔は笑っていた。つらかった。仮面を被り過ぎて自分がなんなのかも分からなかった。部屋で一人でいると誰にも気付かれないように声を殺して泣くようになっていた。そんな時に決まっていつもBUMP OF CHICKENの曲を二曲聴いた。一曲目はangel fallという曲である。

「それから知ったよ あなたの戦い 怯えた夜でさえ 戦場にいた」

「輝きに埋もれ 見えなかった傷の 意味すら誰にも 解らなかった」

「騙されて泣いた 馬鹿にされて泣いた 使われて泣いた 愛されたかった」

そう、認められたかった。たった一言でいいよく頑張ったねって言って欲しかった。バンプだけが私の欲しい言葉をくれた。

二曲目はギルドだ。

「その場しのぎで笑って 鏡の前で泣いて 当たり前だろう 隠してるから 気付かれないんだよ」

「愛されたくて吠えて 愛されることに怯えて 逃げ込んだ檻 その隙間から引きずり出してやる」

もっと素直になれ。もっと周りに頼ったらいいんだよと背中をさすってくれる。私の悲しみに寂しさにそっと寄り添ってくれる。

藤原基央が紡ぐ言葉がバンプが奏でる音がすべてが私の体に染み込んで満たしてくれた。この二曲だけじゃない、何度も何度も背中を押してくれた。感謝してもしきれない。胸を張って自信を持って言えることが少ない私だけれどこれだけは言える。バンプが私を救ってくれたと。

泣くたびに変わろうと思う、バンプを聞くたびに思う、家族のために生きるのではなく自分のために生きようと思う。何度も泣いてゆっくりでも確実に仮面をずらしていく努力をした。本当の自分が分からないなら、わからない自分が本当の自分だと思うようにした。

今の大学生の私を小学生の私が見たら何というだろう。少しは成長したね、と言ってくれるだろうか。もし言ってくれるとしたならそれは誰でもないバンプのおかげである。
 

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