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スクリーモの美しさを実感した夜

Story of the Year@渋谷CLUB QUATTRO ライブレポート

 21世紀に入り、The Usedを筆頭にスクリーモ、ポスト・ハードコアという音楽が世界的に勢いを増してきた。激しい絶叫とエモーショナルなクリーンを歌い分け、激しさの中にも叙情的なメロディが鳴り響くその音楽スタイルは多くのロックファンを魅了し、現代のラウドミュージックシーンにおける一つの基準となっていった。日本でもThe Usedは勿論、Finch、Saosin、Funeral For A Friend、Alexisonfireなど、挙げていったらきりがないほど多数のスクリーモ、ポスト・ハードコアバンドが人気を博していることだろう。それらのバンドと共に、21世紀スクリーモの代表格ともいえるのがStory of the Year(以下SOTY)だ。

 前回の来日から約6年。最新作『Wolves』を携え日本に帰ってきたSOTY。来日公演は東名阪のクアトロで行われ、名阪ではSurvive Said The Prophetが、東京ではSHADOWSがそれぞれゲストアクトとして出演した。「Flare」のビートダウンハードコア調のインストナンバーから「All I Want」「Senses」と、開幕から容赦なく爆発的な疾走ナンバーを立て続けにかましていくSHADOWS。普段の彼らのライブであればこの開幕でフロアは一気に荒れていくものだが、この日は外タレのゲストということもあり様子見の客が多いせいか、静かに見ている客が大半だ。しかし、「Chain Reaction」や「Into The Line」、「My Direction」「Fail」とライブが進んでいくうちに、大きなシンガロングやSHADOWSのライブらしいサークルピットが出現する。メロディック・パンクやスクリーモ等から多大な影響を受けている彼らの質の高いエモーショナルなメロディと強烈な疾走が、会場に集まったSOTYのファンたちの心をがっつり掴んでいったのだ。ただこれは、彼らのライブパフォーマンスやメロディの質を考えたら当然の結果であろう。ラストの「BEK」では、フロアは完全にいつもの彼らのライブになっていた。

 素晴らしいゲストアクトが終了しSOTYの開演を今か今かと待つ会場には、The UsedやFuneral For A Friendが鳴り響く。スクリーモの重要バンドがSEとして流れていては、転換中でもテンションは上がりっぱなしだ。周りを見ているとSEに合わせて名曲を口ずさむ人も多くみられる。

 20時を過ぎたあたりだろうか。SEが鳴りやみ会場が暗転する。完全ソールドアウトとなったパンパンのフロアは一気に前方に詰まっていき、無数の拳がつきあがる。SEをかき消すかのような怒号のような歓声がものすごい。6年ぶりの来日だ。散々待たせた日本のファンたちのSOTYに対する愛が一気にあふれた瞬間だったのかもしれない。
 強烈なドラミングと共にメンバーが次々とステージに現れる。そのまま一気に「And The Hero Will Drown」に流れ込むと、待ってましたと言わんばかりにフロアは荒れ果てていく。そのまま最新作『Wolves』から「How Can We Go On」、1stアルバム『Page Avenue』から「Dive Right In」と、新旧織り交ぜたセットリストでフロアをあげていく。激しさの中にもどこか美しさを感じるメロディをかき鳴らす彼らの音楽に対し、ソールドアウトとなった会場全体が拳を突き上げ衝動のままにシンガロングする。その光景は、彼らの曲の雰囲気と相まってとても美しい。「We Don’t Care Anymore」「Take Me Back」「The Antidote」といった、おそらく全世界で昔から歌われ続けてきた曲たちから、「Miracle」や「Bang Bang」などの最新作からの曲まで、彼らがいつの時代のどの曲を演奏しても、フロアからは大きな歓声とシンガロングが巻き起こる、終始アットホームな雰囲気に包まれていた。
 ライブが進んでいき次々に演奏されていくSOTYの名曲たちを聴きながら思ったが、やはり彼らの曲の中でも特に素晴らしいのが「Sidewalks」「My Home」「Until the Day I Die」といった曲たちだ。これらは決して激しい曲ではなく比較的大人しめの曲なのだが、おそらくSOTYの魅力を最大に感じられるのがこれらの曲たちであろう。美しいメロディと甘く時に力強く歌い上げる声が、例え歌詞の意味が分からなくとも、何となく感情の奥深くまで染み込んでいく。目を閉じて曲に全神経を集中していると、どこか感情が満たされていくような感覚に陥っていくものだ。特に、ライブ終盤で披露された「My Home」での会場全体のシンガロングはとても美しく、ライブが終わった今でも音源を聴きながら目を閉じると、当時のクアトロでの光景を思い出しながら口ずさんでしまうものだ。
 ただ忘れてはいけないのは、冒頭の「And the Hero Will Drown」や「Take Me Back」、東京公演だけ披露された「Choose Your Fate」、ライブ終盤に披露された爆走スラッシュチューン「”Is This My Fate?” He Asked Them」など、ライブにところどころ挟まれる激しい曲たちもまた、彼らのエモーショナルなライブ空間を作り上げる良いスパイスとなっていることだろう。時に激しく時にエモーショナルに進んでいくライブは、全体を通してある種のストーリー性を感じる。ラストに演奏された「Until the Day I Die」は、彼らのライブという一つの物語を締めくくる素晴らしいエンディングテーマであったことは間違いない。
 
そんな美しくエモーショナルな楽曲を演奏していたSOTYであるが、そのライブパフォーマンスは思った以上にエネルギッシュだ。キャリア15年以上たったバンドではあるが、縦横無尽にステージを駆け巡り力強く演奏している彼らの姿はとても若々しい。ただ、キャリアが長いだけあって、その演奏技術は非常に安定している。特にボーカルの歌声がとても良い。たまに不安定なときもあったが、基本的には音源と何ら変わりない美しい歌声で歌い上げる。もし、彼らのようなスクリーモでボーカルが技量不足であった場合、そのバンドの魅力は確実に半減するだろう。それだけボーカルの実力というのは大事であるジャンルだと思うのだが、SOTYに関してはその心配をすることはなさそうだ。

約90分間にも及ぶ彼らのステージは、終始アットホームな雰囲気の中幕を閉じた。日本人の洋楽離れという話はよく聞くが、今回の公演を見ていると、そのような話は実は嘘なのではないかと疑ってしまう。完全ソールドアウトとなったパンパンのフロアに、会場全体で沸き起こる大きなシンガロング。終始熱狂の渦に包まれたクアトロを見ていると、まだまだ日本での洋楽ロック人気は終わってないなと感じた。曲がすべて終わりメンバーがはけた後も鳴りやまない拍手と歓声は、SOTYに対する日本のファンたちの抑えられないほどの熱い思いがあふれた瞬間であったことだろう。

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