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救世主の存在

LAMP IN TERRENよ 世界を変えてくれ

私は急いでいた。追われている“何か”から逃げるように。それはそれは必死に。
けれど、その“何か”は分からなかった。

この時期はどうも苦しくなる。自分の進んできた道が間違っているように感じて不安になったり。それを助長するかのような何気ない言葉。そして自分で決めたはずの確固たる軸がぶれ始めて、霞んでしまったほんの数センチ先の未来でさえ、今の私にとっては全てが苦しい。小さな事の積み重ねが雁字搦めになって私の首を閉めていた。
 

2019年3月1日午前2時。真っ暗な部屋で目を閉じていた。けれど、この日はいつもならあっという間に襲うはずの睡魔が全くなかったのだ。眠ることを諦めた私は、ふとTwitterを開いた。いつもの癖だ。そして、ふと今日、3月1日にLAMP IN TERRENが仙台でライブをすることを知った。
そして、次の瞬間には仙台行きのバスと帰りのバスのチケットを買っていた。
衝動的だった。その時には、つい3日前のこと、渋谷スターラウンジでの定期公演で上機嫌にボーカル松本が口にした言葉だけがわたしの心の中を一人歩きしていたのだ。
「今回のツアーの俺ら、今までで1番かっこいい自信があります。」

今回のツアー、私が見に行かなくてどうする。
「心のままに動くのも大事!」
そんな呟きも背を押し、ライブ当日にLAMP IN TERREN 、ワンマンツアー2019「BABY STEP TOUR」仙台公演へ行く運びとなった。

それから数時間後、私は泣いていた。身体中の水分を全部吐き出したくらい、大量に。

始まってから後半戦の途中まで、彼らに申し訳ないくらいに変な顔をしていたと思う。もしステージから少しでも私の顔が見えていたら、とんだ感じの悪い客に見えただろうし、未だに自己嫌悪に陥る。
苦しかった。日々のしがらみに雁字搦めになった私の心にチクチクと針で刺されている気分だった。彼らが酷く眩しく見えたのだ。今まで寄り添ってくれていた彼らの音楽が、手のひら返したかのように私から離れていく、そんな気がしてならなかった。悔しいくらいにカッコよくて、悔しいくらい自分が嫌になって、その眩しさを無意識に避けるように、眉間にシワを寄せ、気持ち悪い巧笑を浮かべてたのだと思う。
いつもなら有り得ないくらいに、頭の中で映像化できるくらいに鮮明に覚えている彼らのライブもあの日は、ポツリポツリの記憶しかない。

ただ、そんな曖昧な記憶のなかで、生々しいくらいに残っているものがある。

それはラスト1曲が始まる前に、少しずつ紡いで言った松本の言葉だった。
「俺は、誰よりも孤独を知っている、孤独のスペシャリストだから。もう皆で手を繋いで歩いていくのは辞めました。すぐ隣にいるけど、引っ張っていきたい。もっともっとでっかいとこまで皆さんを引っ張っていきます。世界を変えていきます。自分を好きになって。」

そして、そのままぶつけるように演奏が始まった。今回のツアーのタイトルにもなっている“BABY STEP”。
知らない間にカチコチに固まっていた表情と全身に走っていた緊張感と切迫感が一気に解れていったのが分かった。と同時に、今の今まで枯れたとさえ思っていた涙がボタボタと止めどなく落ちていくのが分かった。

〈ねぇ もっと 単純でいいよ 足りないものばかりで できた世界の上だろう〉

ずるいよね。私の拗らせた心もたった数分でかっさらっていくんだから。

「難しく考えないでもっと単純に、今この瞬間は嫌いでも明日は好きになってるかもしれない。」

確かそんな事も言っていたような気がする。
未来なんて考えたってどうせ答えなんてでない、無理に大人のフリしてガチガチに固めた小手先の未来なんていらない、自分のペースで歩けばいい。
ほら、昔から通知表にはいつも書かれていたではないか、マイペースの王様だって。何を忘れていたんだろう、何をそんなに焦っていたのだろう。
そんな単純なことさえ見えなくなっていたなんて情けない。
けど、どこか誇らしい。

無我夢中になって、身体中が熱くなって、頭を振って、大声で歌って、叫んで、私にとってあの日はそんなライブではなかったかもしれない。
けれどそれ以上に、孤独のスペシャリストとして、私をあるべき道に連れていってくれる、そして引っ張っていってくれるような、私にとってLAMP IN TERRENは救世主であることに変わりはなかったのだ。

「俺らのライブは純粋に楽しいだけじゃなくて、日々の嫌な事や苦しい事、辛い事を重ねて消化するのも、貴方にとって楽しむって事だと思うんですけど、どうですか?楽しんでますか?」

私はしっかりと楽しんでいた。この言葉が肯定してくれたように。
たまにはこんなに夜があってもいいんじゃないか?
そう思った。なんて何でもないように言っているけれど、この言葉にどれだけ救われたか。でもやっぱり少し照れくさいから内緒にしておくことにする。
 
 

私は走っていた。“日々のしがらみ”から逃れるために。救世主の存在に縋って。
もっと単純でいい、自分を愛することを忘れるな。

〈僕が僕として生きることこそが 偉大な一歩目だから〉

LAMP IN TERRENよ 世界を変えてくれ。私の世界を明るく照らしてくれたように、私の心を真っ直ぐと導いたように。
 
 
 

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