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大人になる事と夢を見なくなる事はイコールではない。

〜きのこ帝国/夢みる頃を過ぎても に寄せて〜

学生時代にどんな夢を見ていただだろうか。
自分自身に問いかけた際に、幼ければ幼いほど、無謀かつ輪郭がはっきりした夢を思い出す。
高校生の時、俺は教師になるんだって意気込んでたあいつらは一人も教師にならなかった。
世の中で言う夢やら理想というのは、どうやらそういう物らしい。

かく言う僕もその一人だと思う。小学生の時はどんなにサッカーが下手でも
J-POPの【夢は諦めなければ必ず叶う】という思想に毒され、プロサッカー選手になれると信じていた。
だが、サッカー選手になれるのは、ほんの一握りで、 無論、僕は手を伸ばせる所にも辿り着けなかった。
 

専門学生の時に人生というのは、20代をピークに下降して行く人がほとんどだと教えられた。
【夢や憧れだけで仕事は出来ない。】
この言葉は、社会人になって何度も言われた言葉だ。
この言葉は、やがて僕の中で鋭く尖って抜けない棘となる。
『この先、夢を見れなくなったら、どうなるのだろう。』
『生きている意味は見出せるのか?』
『このままダラダラ命を消費して死ぬのか?』
僕は途端に不安になった。
 

そんな風に考えていたある日、
きのこ帝国から【夢みる頃を過ぎても】
という曲が配信された。

僕自身、きのこ帝国を好んで聴いており、日比谷野音公演や新木場スタジオコースト公演など、
ワンマンには足繁く通っていた。

あのバンドは変わったや昔の方が良いとか言う人たちは絶えないけれども、
私はボーカルの佐藤千亜妃さんが作る曲が、息をするように好きだったから関係がなかった。

『あいつをどうやって殺してやろうか』と考えている暗い曲も、
『”クロノスタシス”って知ってる?』と聞いてくるお洒落なファンクさを感じる曲も
どちらも【素敵】の一言でいいじゃない。そう思っていた。

余談はさておき、僕はこの【夢みる頃を過ぎても】と言う曲が刺さった。
夢を応援するという歌を、嫌という程聴いて自分を奮い立たせてきたが、
【夢みる頃を過ぎても】という視点は初めてだった。この視点が、その時の僕には刺さった。

曲自体はエモーショナルでストリングスなども入ったロックバラードだ。
きのこ帝国の歌は、メロディーが綺麗で、唯一無二なバンドサウンドだ。
シューゲイザーやJ-POPなど様々なサウンドにカテゴライズされがちだが、
そのカテゴリーの多さが、曲の振り幅を物語っている。
そもそも彼女達は、そこで勝負していない。【きのこ帝国】は【きのこ帝国】なのだ。

この曲は、僕らのような社会人1〜3年目に向けて作られた曲のように感じてしまう。
理想と現実の狭間で迷っている人たちへ向けた歌。そんな風に感じる。

蝶になれない蛹を例えに、夢を叶える事が出来ない人がいる事を、
息継ぎが上手くなる事で、苦しさを思い出せなくなってしまう事、
変わりゆく街並みに、変わらないものはないと気付いてしまう事。
それでも、その中であの頃のように、屈託無く笑って見せて欲しい事。

そして、最後に夢から醒めて、現実を受け入れることによって、この歌は終わる。当たり前の毎日に戻って終わるのだ。

私はこの歌が希望の歌に感じた。
『【夢みる頃を過ぎても】どうですか?』と僕自身に問題提起された上で、『あなたがどう思っていても良いけど私は、こう思っているよ』と自然に優しく包み込む歌だ。

これこそが夢や人の応援の仕方なんだなと思った。
自分の価値観を押し付けるのではなく、相手の意見を聞いた上での会話だ。
それも【きのこ帝国】として長くやってきたからこそ生み出せた音楽なんだと僕は思う。

僕は聴いて以来、この曲とよく会話をしている。
ある日は、まだ現役で生きていきますよ!と強がったり、
ある日は、そうだよな、こんな暗くいても意味はないよなと考え直したり、
聴く日によって色が変わる。そんな曲だ。
 

きっと生きてて死ぬほど楽しい日々なんて続くこともないし、来ないかもしれない。
この曲を聞いて、それでも別に良いかなと思えた。少し嫌だけど。

ただ一つ言えることがある。
私は音楽業界の裏方として働いているのだが、
いつか きのこ帝国と一緒に働いてこの想いを直接伝えたい。
その時が来るまでは、きっと僕の【夢みる頃は過ぎない】のだろう。

それが僕の今の夢だ。

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