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“ソウルセラー”としての長澤知之の生き様

変わった彼と、変わっていない彼

長澤知之というシンガーソングライターをご存じだろうか。
全く知らないという人も、名前だけ聞いたことあるという人も、一度彼の音楽の世界に踏み入れて欲しい。
とりあえず再生ボタンを押すだけでもいい。
駄目な人には駄目だろうけど、刺さる人にはとことん刺さる。
その音楽に多いに救われる人間が居るはずだ。無論筆者も、もう十何年間もその一人である。
あんまり素敵じゃないこの「今」を生きる、彼の生き様を感じて欲しい。

長澤知之は2006年に“僕らの輝き”でデビューし、これまでにミニアルバム6枚、フルアルバム2枚を発表している。元andymoriの小山田壮平らと共に活動する「AL」というバンドなら知っているという人もいるかもしれない。デビュー13年目の彼だが、これまでの道のりは決して順風満帆なものではなかったように思う。
所属するオフィスオーガスタの恒例イベント“オーガスタキャンプ”。
山崎まさよし、スキマスイッチ、秦 基博等、所属アーティストの中で当初から異彩を放ち佇んでいた長澤知之。デビュー前の2005年から出演し続けている彼だが当初は独特なその歌声から敬遠されていたと言う。
「声が気持ち悪い」
恋しい彼女が作る手料理を思い出し“マカロニグラタン”と幾度と叫ぶ、初期からの名作“マカロニグラタン”を歌い上げれば、
「マカロニくん!」と馬鹿にされたと言う。
その頃の彼は人を睨み付けるように会場を見渡し、一言も発しないまま演奏を始め、演奏が終ればまた一言も発しないままギターを投げ捨てるように置き、ステージを去って行く。
ある意味そんな彼に魅了された筆者だが、当時の観客の反応は辛辣なものもあった。
「無愛想で観客に失礼」「挨拶くらいしたほうがいい」
当時のオフィスオーガスタのスタッフブログにはそんな声が上がるほどだった。
かく言う長澤本人も当時からオーガスタキャンプは好きじゃないと断言し、できるだけ事務所のことを話題にあげるのを避けてきた。
しかしながら、彼はどこかで変わった。
今ではオーガスタキャンプは好きだと公言し、にこやかに楽しそうに演奏するステージ上の長澤の姿がある。
会場を見渡し「ありがとう」と応え、観客に手を振る長澤がいる。

そんな彼が2019年3月20日にミニアルバム“ソウルセラー”をリリースする。
その表題曲“ソウルセラー”は「長澤知之」の生き様がこれでもかと言うくらい表現されている。長澤の歌声とピアノのメロディーから始まる、長澤には珍しい1曲だ。
ただ綺麗に歌い上げるだけではなく、ありのままを感情に任せて吐露するように歌い上げる。
この歌が長澤知之そのものなのである。

“時に人は言うよ「捨て去って素直になろう」 
なぜ素直になるために捨てなきゃいけないんだい プライド 僕は誇りを持って歩く”

職場や学校、普段のコミュニティで 他人の意見に流されてしまった経験はないだろうか。
違うと思ったことを違うと言えず、ぐっと噛み殺した経験はないだろうか。
他人に合わせるのが「素直」なのであれば、そんなものは不必要なのではないだろうか。
素直とは何だろうか。プライドとは何だろうか。
この問題提起に共感を覚える人達はきっとたくさんいるはずだ。
長澤知之の生き様を見て、考える。

彼の音楽は一言でいうと情報過多。
その歌声も独特のメロディラインもその詞も、どれひとつ取っても「特有」で、どれ一つとして欠かすことのできない。すべての要素が混じりあい、「長澤知之」の音楽が完成する。
その音楽は本当に様々で、怒りをぶち撒けるような曲もあれば、合唱曲のように美しい曲も普遍的な愛を歌う曲もある。
一見すると一貫性がないように捉えられがちだが、そこにはいつも「光」があった。

“一夜のアバンチュールの出会いなんか 僕は要らない 心が赤の他人のキスなんか欲しくはない
この世の次元内での恋愛とは違うんだよ 僕と君の光へのメロディ”(僕らの輝き)
“ニュースは相変わらず大変そう 「資本主義の限界です」
僕は眉間にシワを寄せる 格差社会の末端で 窓の外をふと見ると虹…虹!”(蜘蛛の糸)
“あれからもう十何年も月日は経って そりゃみんな変わって当然なんだよ 誰もがそう
でも僕は今も変わらず守っているよ 光 この想い”(ソウルセラー)

どんなに茶化されようと蔑まれようと誇りを持ち歩んで来た十数年間。
受け止める聴き手が増えるにつれステージでの笑顔が増え、変わっていった長澤知之の本質は、ただただ“魂の揺らぎに身を委ねて”表現し続けたデビュー当初から変わらない姿なのである。
彼の生き様こそが、「素直」と呼べるものではないかと感じてならない。

決して彼が日の目を見るのを待ちわびているわけではない。
彼自身もそんな日は特段望んでいないのではないだろうか。
ただ、届くべき人に届いて欲しい。この「今」には「長澤知之」がいる。
この事実がとてつもなく最強な真実であるように思えてならないのだ。

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