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記念撮影

さよならとありがとうを思い出させてくれたBUMP OF CHICKEN

バイト終わり、帰りのバスの中でぼんやり音楽を聴いていると、不意に耳に留まる曲があった。

BUMP OF CHICKEN「記念撮影」

もちろん今までも好きな曲で、これまで何度も聴いた曲だった。しかし、その時は何故だか分からないが、ふと思い出すことがあった。
昨年亡くなった祖母のことだ。
何故今になって祖母のことを思い出したのだろう。散々泣いて、もう昔のことだと割り切れるようになってきたのに。

「君は知っていた 僕も気付いていた 終わる魔法の中にいた事」(記念撮影)

終わる魔法の中に僕等はいる。終わる日が来るのだ。全てのものに。
だが、その事に気付くのが私は遅過ぎた。
私が遠い地で大学に通ってる間に、祖母は逝ってしまった。癌だと分かって死ぬまで、半年もなかった。死に目にも立ち会えなかった。私が最後に見た祖母は、ベッドの上で私の呼びかけに涙を流して頷く、痩せこけたなんとも悲しい姿だった。
その記憶を、私は死ぬ迄引きずっていかなければならない。
元気なうちに、写真の一枚でも撮っておけばよかった。祖母と撮った写真は1枚もないのだ。輝かしい瞬間を切り取った写真がない。
悔悟が、私を責め立てる。
だが、今となってはどうにもならない。
どうあがいても祖母に会うことはできない。
祖母が死んで、私の胸に空いた穴は塞がらない。
 

でも、でも、一つだけ言えるのは、私と祖母の人生は確かに交じり、そこには喜びも、悲しみも、何もかもを含んだ物語が生まれた。

「好きなだけ喋って 好きなだけ黙って 曖昧なメロディー 一緒になぞった」
「聞こえた気がした 遠吠えとブレーキ 曖昧なメロディー 一人でなぞった」(記念撮影)

私が生まれて、祖母は大変喜んでくれたらしい。そして、沢山の愛情を注いでくれた。だが私が大きくなるにつれて会話も、一緒に出掛けることも減った。
そして、祖母は居なくなった。
曖昧なメロディーを一緒になぞることはできなくなって、私は祖母が眠る街を離れ、1人で生きている。祖母が死んで多くの夜を過ごし、一緒になぞった曖昧なメロディーを、今はたまに1人でなぞる。
そのメロディーは、私と祖母が作り上げたメロディーだ。あらゆる感情を超えた、思い出という名のメロディー。
これからの私は、祖母とはもうメロディーを紡ぐことはできない。
だが、それでも私は生き続ける。心に焼き付けた祖母の最後の姿を抱いて。

「君は笑っていた 僕だってそうだった 終わる魔法の外に向けて 今僕がいる未来に向けて」(記念撮影)

写真の中の祖母は笑っている。
終わる魔法の中、終わる魔法の外へ私は向かっていく。
何十年後になるかは分からないが、いずれ全ての魔法は解け、私も祖母のいる場所へ行く日が来る。
その時、私は祖母と並んでレンズの前に立つ。
そして、笑いながら撮影するだろう。
初めての記念写真を。

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