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2017年5月24日

布瀬 夢軸 (19歳)

People In The Box 進化の輝き

十周年と『Things Discovered』リリースツアー

深夜に聞いた『She Hates December』の衝撃を今だに覚えている。ラジオの電波の鈍い雑音が時折混じる中聞いたそれは、確かな美しさと自然な複雑さを抱えていた。
 

People In The Box(以下People)は、少し特殊な性質を持ったバンドだ。曲調の振り幅が大きく、ロックバンドと呼んで括るにはあまりにも窮屈すぎる。時に陰鬱に、時に輝かしく、しかしどれにも美しさを伴い響く。ライブだって客が手を上げ押し合って盛り上がるものではない。しかし客一人一人がステージ上の三人に注ぐ己の情熱は、どんな激しく盛り上がるバンドのライブにも負けていない。三人の確固たる技術力から溢れ出す曲と、客の情熱が静かにぶつかり合うライブは他に類を見ない。
 

私が初めてPeopleを知ってから四年。彼らは今年で1st mini album『Rabbit Hole』をリリースしてから十年という節目を迎える。今年1月18日にリリースされた『Things Discovered』は新曲・再録曲・三人それぞれのプロデュース曲にベスト盤を加えた十周年記念盤とも言えるものになり、それを携えて現在彼らは全国ツアーを行っている。
 

先日私はツアーの仙台公演を訪れた。まだツアーは続いているので本編の詳しいセットリストは伏せるが、公演が終わり私が最初に抱いたのは「改めて恐ろしいバンドだな」というものだった。十周年とはいえ『Things Discovered』のツアーなので、取り立てて古い曲ばかりやるライブではない。むしろこれまでのPeopleから一歩先に進んだ、新しいPeopleを感じさせられた。そしてその新しさは、今まで共に歩んできた過去の曲たちにも着実に影響を与えている。前回のツアーで成長しきったものだと正直私が侮っていた曲たちが、与えられた力を発揮し、持っている輝かしさもヒリヒリとした感覚も、以前ライブで披露された時より格段に上がっていた。その圧倒力を不覚にもライブハウスの最前で浴びてしまった私は、公演後柵に寄りかかり項垂れたまま、動けなくなってしまった。
 

ツアー序盤の仙台公演でこれだけのものを見せられて、ツアーファイナルにはどんなものを見せてくれるのだろう。次の作品ではどんなものを聞かせてくれるのだろう。十年で何度も進化を繰り返してきた彼らが、また新たな進化を遂げようとしている。私達は今まさに、その瞬間を目撃しようとしている。いや、目撃しているのだ。

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