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祭りの終わり、21年目の始まり

THE BACK HORNよ、無限の荒野のその先へ

祭りが、終わった。

2019年2月8日 THE BACK HORN 20th Anniversary『ALL TIME BESTワンマンツアー』~KYO-MEI祭り〜

結成20周年の祝宴は、アーティストの聖地と呼ばれる日本武道館で大団円を迎えた。

開演直後に聞こえた、昨年10月からのツアーに足繁く通った人にはお馴染みの手作りSE。

命を吹き込まれたように走り出す狼。走馬灯のように流れる作品の森を駆け抜け、その先へと辿り着く。

神秘的な雰囲気から一転、文字通り炎の幕開けで場内はこれまたダブルミーニングでヒートアップ。

アンコールを含め新旧入り混じった21曲は、これでもかというくらい私たちを情緒不安定にさせた。
 
 
 

終わった直後も、家に着いてからも、これを書いている今ですら。

心は武道館から帰って来ていない。

どの音や景色を思い出しても幸せな気持ちになっては、自然と涙が出てきてしまう。
そう、未だに情緒不安定なのである。

ツアーは各地で毎回セットリストが違い、いわゆる『レア曲』を聴く機会に何度も立ち会えた。イントロで沸く歓声、奇声。あの頃聴いた、もしくはCDでしか聴けていなかった、待ちに待っていた『あの曲』を円熟した今のTHE BACK HORNが奏でてくれたのだ。

この有難さに心酔するとともに行っていたのは、THE BACK HORNと自分との出会いと、思い入れのある曲についての回顧だ。

『美しい名前』

音楽に合わせてマッチの火が連鎖して灯っていくMVが斬新で綺麗だと評判で、近所のCDショップにあるモニターで繰り返し流されていた。

もちろん自分も釘づけになった。
その声とそのメロディーと、その歌詞に。

【何度だって呼ぶよ 君のその名前を だから目を覚ましておくれよ
今頃気付いたんだ 君のその名前がとても美しいということ】

ぽつりぽつりと独白を始め、やがて悲しい結末を受け止めきれず堰を切ったメロディー。
目の前の大切な人へ語りかけ、諦めずに呼び続けるかのように感情移入したボーカル。
その大切な人への無力さと愛情を、愚直なまでに表した歌詞。

生きている。この音楽は生きている。
音楽は、ここまで人の感情を表現することができるのか。

公式サイトのバイオグラフィーを見る。
朴訥な4人の男が『生』と『死』、すなわち人間の諸行無常さをこんなにも美しく泥臭く叫んでいるのだ。
好きか嫌いかの天秤にもかけない流行歌が、自動的に耳に入ってきていただけだった当時10代の自分。
ロックのロの字も寡聞な女子高生は、ロックとはなんぞやを知るより早く『THE BACK HORN』という音に心を奪われてしまった。
それから程なくしてライブを観るという娯楽(のちに生きがいとなる)にのめり込んだのは言うまでもない。

安物のCDラックがTHE BACK HORNで埋め尽くされ、引き出しから無造作に詰められた過去のライブチケットがはみ出し始める頃、社会に放り出された(元)女子高生は仕事における自分の存在意義に強く疑問を感じていた。もはや自己肯定感なんてものは皆無。暗くて狭くて重くてどうしようもない一日が積み重なってできた毎日は、真綿で首を絞めるように生きている感覚を蝕んでいく。やがて感覚は殺されて、原因不明の闇が茫々と広がるだけ。
じわじわとエモーショナルな表現を書き連ねたが、一言で表すならば「消えたい」。
まさか自分が、こんな気持ちになるなんて想像もしなかった。

『Running Away』

ミニアルバム『情景泥棒』のリード曲。英語タイトルに驚きつつも再生ボタンを押した。

【「必要じゃない」なんて
誰にも言われちゃいないのに
「もういっそ消えようか」
感傷に染まってる闇夜 暴いて】

心の暗澹を、心臓ごと抉り取られた。

この希死念慮をTHE BACK HORNは「そんなこと言わないで」などと陳腐な否定はしなかった。無理にライトを浴びせてはこないのだ。真っ暗な洞穴にいる自分をわざわざ迎えに来て、気が済むまで泣かせてくれた後に出口を目指し歩幅を合わせながらゆっくりと歩いてくれるような、そんな景色が見えた気がした。
共感なんて聴き手の勝手な思い込みだけれども、自分にとってTHE BACK HORNは鏡、そして命の恩人なのである。

「みんなが今日まで生きてこられたことをお祝いする祭りでもある」

今回のツアーで山田将司(Vo.)が頻繁に口にしていた言葉。

大好きなTHE BACK HORNを、大好きな仲間たちと、生きて感動を分かち合えること。もちろん一人で噛み締めたって良い。人生のほんの一部分、たったそれだけのことをこんなにも祝福してくれると、今まで自分が選んできた選択肢は間違いではなかったのかとすら思えてしまう。そこに存在することができたすべての人たちの、奇跡の集大成。

祭りは、終わった。

しかし同時に21年目が始まり、THE BACK HORNはこれからもずっと続いていくのだと確信できた公演でもあった。鳴らす音楽では言わずもがな、ライブハウスで聞いていたような飾り気のない、だけどその先への未来に対する信念を含ませたMCでも強く感じた。

THE BACK HORN、あらためて20周年本当におめでとうございます。
21年目もまた生きて貴方たちに会いに行きます。

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