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憂鬱の置き所から、小さな一歩目を

『LAMP IN TERREN ワンマンツアー“BABY STEP”ファイナル』に寄せて

―自分がやってることを自分が1番、この世で1番、信じること、愛すること―

これは、LAMP IN TERRENの音楽が、
私の未来を照らしてくれた2019年3月16日の備忘録だ。
 

この日は私にとって特別な日だった。3か月ぶりのLAMP IN TERREN(以下、「テレン」と表記)。一目惚れした2017.12.9から怒涛のペースでライブに行っていたので、こんなに久しぶりだったのは昨年の活動休止ぶり。そして会場は活動休止前最後のライブ、2018.4.21、MARCHファイナルと同じ恵比寿LIQUIDROOM 。あれからもう11カ月もたったのだなあ、と思い返しながら恵比寿の街を学校帰りのダサい制服で大荷物を持って歩く。
心がそわそわしていた理由はそれだけではない。私はこのツアーが発表された瞬間にこの日を一つの区切りとすることを決めていた。私は今年高校3年生になる。受験生というやつだ。「ライブ禁」をいつからするか、誰のライブを最後にするかというのはライブ大好きな受験生にとって非常に重要な問題である(たぶん。)そして、私は高校2年生の生活が終わろうとする3月に1番大好きなバンドがワンマンツアーをやってくれると知ってそれをこの日に決めた。

今思うと、「BABY STEP」というツアータイトル、MCの内容、セットリスト、すべてが絶好の「ライブ禁前最後のライブ」だった。私の「小さな一歩」はここから始める。

恵比寿駅に着いて、私は某ファストフード店へ向かった。実は、メンバーに手紙を送ろうと思っていたのに、慌ただしくしているうちに当日になってしまっていたのだ。急いで手紙を書きあげる。内容は決めてあったものの、急いで書いたものを渡してしまった後悔はあるが、この手紙が自分にとって伏線のようなものになった。書いてよかった。

恵比寿LIQUIDROOMに到着。私は勢いでチケットを1人でとってしまっていた!でもこの1年間でテレンのライブでたくさんの人に出会った。テレンのライブは1人で来ても全然独りじゃない。全国各地から女性も男性も年上も年下も、みんな1つのバンドが好きという理由でここにいる。ワンマンライブって最高だよなあと思う瞬間、その1である。笑

 会場への階段にはBABY STEPの文字が。上手6列目くらい。開演まであと30分。「楽しみだなあ」「早く始まってほしいけど始まったら終わってしまう」そんな葛藤をよそに、時計はゆっくりと着実に進む。いつも通り。

 目の前のスピーカーから、ピアノの音が聴こえてくる。クラシックに疎い私でも聞いたことがあった曲。「ショパン夜想曲第2番」。会場のざわざわと、スピーカーから鳴るピアノの音量が反比例する。心拍数が上がっていく。フロアの灯りが消えて、私たちの楽しい楽しい夜が静かに幕を開ける。

ボーカル松本はピアノの前に座っていた。ブレスまで聴こえる静かな幕開け。緊張が走る。空気が張り詰める。彼らの背中でLAMP IN TERRENの文字がぱっと赤く瞬いた。その瞬間、私はもう泣いていた。

【I aroused】
アルバム『The Naked Blues』の1曲目。この曲を1曲目に持ってくる彼らが大好きだ。強さと弱さ、両方を持って暗闇を歩いていくような曲。

<眠るように私は目を覚ます あるがままで光る ‐I aroused‐>

次の曲はこれしかないと思っていた。アルバムで、これ以上ないほど美しく繋がれた2曲。それが忠実に再現される。

【New Clothes】
MARCHでは野音発表の後テレンの決意がこの曲に乗せて演奏された。ARCHではLAMP IN TERRENはこの曲で私たちの前に帰ってきてくれた。色々な思いが詰まった決意の歌だ。美しく力強いメロディに乗せて裸の王様は堂々と歩いていく。

【Water Lily】
「こんなにライブ映えする曲だったっけ」というのが率直な感想だった。アーティストにとって曲はわが子のようなものであるのだろうか。初披露のARCHからこのツアーファイナルの間に大切に大切にメンバーとファンに育てられてきたのだろう。飲みこまれそうになる美しさに、まさに睡蓮のような凛とした力強さが加わっていた。ギター大屋のギターソロが美しく響き、ボーカル松本は憑依されたかのように美しく音楽に合わせて動く。心は透き通った水で飽和状態になる。

【Dreams】
彼らなりの応援歌だ。テレンの音楽は無責任じゃない。いつでもすぐ隣にいてくれて、時には私たちの手を引いてくれる。だから楽しい時もつらい時も聴きたくなる。いつだって一緒に嵐の中へ。

【at (liberty)】
迫力がありすぎて、美しすぎて、呆気に取られていた。テレンの曲は曲調に関わらず、葛藤や不安をどこかに持っていることが多い。それでも諦めることはない。それがテレンの曲の魅力の一つだ。この曲を聴いていただければ納得していただけるだろう。

【亡霊と影】
ベースラインが魅力的すぎるこの曲。この曲も本当に進化し続けている。

<どうか 不安な夜も 生きる意味がありますように
 どうか 忘れゆく日も 生きる意味がありますように
どうか 弱い僕にも 生きる意味がありますように ‐亡霊と影‐>

このフレーズにはいつも泣かされてしまう。
 

ベースとドラムの音だけが会場に鳴り響く。ベース中原が前に出て力強く弾く。彼は私にとってのベースヒーローだ。

【凡人ダグ】
ライブでははじめまして。やっと聴けた。
「どっちがおかしくなれるか対決だ。まあ俺が勝つけどね。」
いつからそんなに煽るのがうまくなったのですか、などというなんとも上から目線な感想を抱きつつ、フロアは狂っていく。私は狂ったように、憑依されたように音楽をする人たちが大好きだ。だからこういうテレンも最高。日々の憂鬱を吹き飛ばしたければ、拳を突き上げて音楽に身を預けるのが1番だ。本人たちも“殴り込み転調”と言っていたように、力強く転調してもう1度、これでもかという程フロアを狂わせる。

【heartbeat】
個人的に大好きな曲。鼓動の音が聴こえた瞬間にまた涙で視界が滲む。動悸の音と、背中のLAMP IN TERRENの文字とが連動する。血液のように低音が体中を巡る。サビの瞬間に拳を突き上げる瞬間は言い表せない気持ちよさがある。

<僕は放ち続ける 君が君を見失わぬ光を ‐heartbeat‐ >

【innocence】
バチバチってこういうことだろう。とにかくかっこいいのだ。かっこよすぎて泣くなんていうことはテレンのライブ以外ではない。

【Beautiful】
 アルバム「The Naked Blues」収録曲の曲名だけが発表されたとき、「Beautiful」という曲名がなんだか少し異質に感じられた。端的に言うと直球でシンプルで「テレンっぽくない」と思ったのである。それを配信でコメントしたことがあった。「Beautifulというタイトルが意外でした。」松本は「そっかー。でも聴いてもらえばわかると思う。」そう答えてくれた。
 遠くから見ていたら、儚く美しかった雷が、近くで見たら綺麗すぎて、なんだか少し怖くて、でも心地よくて、かっこよかった。力強くも優しい楽器の音が空気を切り裂く。この曲が終わったとき、拍手が起きなかった。身動きが取れなかった。鳥肌が立っていた。呼吸すらも忘れている自分に気づいた。閃光が会場の空気をすべて奪い去ってしまったようだった。それぐらいこの曲が美しかった。

【花と詩人】
ピンク色の照明が優しく会場を包む。シンプルな曲だからこそ、歌詞が心に直接響く。まっすぐな気持ちはまっすぐ届く。
 

ここから空気が変わる。
「緊張したでしょ?」そう言って松本は笑う。
後半戦の始まりだ。会場の温度が一気に上がるのがわかった。
 

<魔法の様な唄を唄って―――目映い今日を色付けていく―――>
 

一緒に歌っていたファンを「しーっ」と指を立てて静める。

<さぁ 消えない光に向かっていくよ
眩しいこの世界で鳴らすおーーーーーーーーーーーーー…………。
おーーーーーーーーー………>

松本が笑顔で目いっぱいに声を伸ばして私たちを焦らす。フロアから笑いが起きてしまうほど伸ばす。1回吸ってまさかのまた伸ばす。この瞬間が楽しすぎて、楽しいことはいろいろあるけれども、こんなに「楽しい」の密度が高いことって人生においてそんなにないだろうなと思う。楽しいという気持ちが頭の先から足の先まで満たされる。会場を満たしていく。

<鳴らすおーーーーーーー…とーーーーーーーーーーーー>

(真面目にライブレポを書こうと思ったのに表記がもはやよくわからないことに。楽しい。)
さっきまでの緊張から解き放たれた私たちは無敵だ。声を出して拳を上げる。私はベース中原の笑顔に何度も救われてきた。今夜も最高の笑顔を浴びながら私も笑顔になる。これ以上笑えないという程笑うので絶対変な顔になっている。

サビで「任せていい?」と言って松本が手で指揮をする。

<今日も願いを大きな声で 他でもない僕が唄おう ‐キャラバン‐>

フロアに僕らの唄が響く。
テレンの歌詞にはたくさん「歌」という言葉が使われている。
いつまでだって歌っていてほしいと心から思う。
彼らの歌と共に未来へ行けますように。

【オーバーフロー】
テレンへの愛を1番歌える曲。私は「好きが溢れる」という変な言葉をよく使う。特にテレンのライブを見た後はしつこいほどそう言っている。でもこの曲を初めて聴いてからやっぱり好きという気持ちは、愛は、溢れるものだと思った。キラキラした音楽に包まれて私の中でまた好きが溢れていく。

<もういっそフルボリュームで叫ぶよ 君に愛されたい! ‐オーバーフロー->

この言葉に答えるように、負けないように、心の限り歌う。
過去最高にライブハウスに愛が溢れていた。びっくりするほどの声量だった。

【地球儀】
私はこの曲が世界で1番楽しくてキラキラで幸せな曲だと思っている。
それなのにいつもイントロで泣きそうになる。ライブも終盤の合図だ。

<リズムなんて合っていなくていいさ 行こう>

松本がドラム川口のスティックを取って私たちを指揮する。
楽しい「いつものこれ」もMARCHから始まったのだっけ。

<ここから始めよう 音に乗って>

この言葉がいつも私の心に刺さる。
私はライブハウスに逃げてきている。いつもこの曲を聴くと「ここから」と思う。
少しするとまたライブハウスに逃げてしまう自分に嫌になる。
でもこの日は本当にここから始められる気がした。
彼らの音楽に乗ってどこまでも行ける気がした。

<僕らなら歌っていけるよ ‐地球儀‐>
どこまでも。
 

【月のこどもたち】
火照った体が少しずつまた静かな夜に包まれる。

<お互いに照らしていられるから ‐月のこどもたち‐>

松本は最近よく、「自分たちは太陽ではなく月だ。」と口にする。太陽じゃなくたっていい。その優しい明かりに何度救われただろうか。バンド名に込められた意味「この世の微かな光」という意味も、彼らの音楽に触れたらきっとわかる。まだまだ光は大きくなっていく途中かもしれないが、このバンドはこの世の確かな光だ。
 

ギターをそっと鳴らしながら松本が話しだす。
このMCが、私が今まで生きてきた中で1番刺さった。涙が止まらなかった。
私は開演前、手紙を書いた。以前、松本がキャスで手紙の話をしているときに、「どんなところで自分たちの音楽が鳴っているのか知りたい」と言っていたのを思い出したので、自分のことを書いてみることにした。
 
 

私は、ライブハウスに逃げてばかりいる自分が大嫌いだ。

あのフロアの中にいた900人中で8番目くらいに自分のことが嫌いだと思う。わからないけど。

テレンと出会った高1の冬。私はバンドの魅力に取りつかれていた。現実逃避の癖がある私に、ライブハウスは絶好の逃げ場だった。学校で禁止されているバイトをして、月3くらいのペースでライブに行って、やるべきことから逃げた。成績はどんどん落ちていった。正直言って、それまでの私には勉強しか自信を持てる部分がないと思っていた。それを自ら壊した。そしてまたライブハウスに逃げる。こんな生活を結局高2の秋まで続けた。気づいたら自己嫌悪の塊になっていた。憂鬱はライブに行かないと解消されない。負のループに陥っていた。

何とかしなければと思ったのは高2の秋くらいだっただろうか、「ライブハウスに逃げるのではなく遊びに行けるようになろう」と思った。ライブに行く回数を少し減らした。少し勉強した。「今ならライブハウスに遊びに行けるかも」そう思ってライブに行った。そして、ライブハウスは一生私の逃げ場でしかないことに気が付いた。そのときは、それはそれはショックだった。でもそれを受け入れるしかなかった。でも自分の未来のために、逃げるのを1度やめようと思った。

そして迎えたBABY STEPツアーファイナル。序盤で松本は「ライブは憂鬱の置き所だと思います。それを楽しんでもいいと思う。」と言った。「憂鬱の置き所」の話を初めて聞いたわけじゃない。でも初めてその言葉が私の心の中にすっと入った。私は憂鬱を置きにここに来ていたのだ。それはまさに私が考えていた「逃げ場」という考えに近かった。今まで逃げたことへの後悔はあるけども、私は憂鬱を晴らしにライブに行くことをやめなくていい、と思った瞬間に心が軽くなった。

でも、「逃げ場」と「憂鬱の置き所」という言葉には大きな違いがある。憂鬱を置いたら、また私は現実世界で頑張らないといけないのだ。現実世界で頑張った分だけ、辛い分だけ、置いていく憂鬱が多いほど、きっとライブは楽しい。そのことをもう忘れたりしない。
 

「一個だけちゃんと示しておきたいなと思うことがあります、俺がものすごく長い時間をかけてやっとこさ今自分のことを愛せたのと同じように、自分たちを、あなたたちを、自分をあなたを俺を僕を私をもっともっと好きになれるようにその背中を押せるような音楽、歌を歌いたいなと思います、歌っていきたいなと思います、鳴らしていきたいなと思います。だから今その背中を押します。」
 

私はよく「もっと自信を持て」と言われる。
何もできないのにどこに自信を持てばいいの?と思う。
でも自信を持ったテレンは最強だった。
私も最強になりたい。
今日よりも少しでも自分を信じられるようになって、
愛せるようになりたい。
何も見えなくなったら、憂鬱になったら、
またテレンの音楽に照らしてもらいに行く。
それでいい。

「自分のことが嫌いな人がいるなら、僕らが全力で愛します。」
そう言ってくれるバンドに出会えた私は本当に幸せだ。幸せだからまだまだやれる。

メンバー4人が向かい合う。
【BABY STEP】
はじめの隕石が落ちてきたような衝撃には未だにびっくりさせられる。
ツアータイトルにもなっているこの曲。
LAMP IN TERRENの音楽を私が好きな理由は
「自分が物語の主人公だと思わせてくれること」だとずっと思っている。
主人公なら自分を信じよう。
背中をどーんっと強く押されたのは言うまでもない。
本当に本当に、ありがとう。
 

私がこの世で1番大好きなバンド、
LAMP IN TERRENは、最強にかっこよくて、楽しくて、優しい。
その光は確実に強くなっている。
変わり続けながらも、光であり続け、歌を鳴らし続けてくれる彼らを私はきっと見失わない。

次に彼らが向かう先は、
2019年7月28日。日比谷野外大音楽堂ワンマンライブ“Moon Child”。
1年前の“ARCH”のときより一層強くなった彼らが、果てしない空の下でどのように光るのか。考えただけでわくわくが止まらない。

“ARCH”で
<ここから始めよう 音に乗って 素晴らしい日常の中へ ‐地球儀‐>
と松本が足元を指さしながら歌ったのを私は鮮明に覚えている。
あそこから再び始まった1年間を、彼らの物語を目撃しに行こう。
憂鬱になったら一緒に何度だって彼らの音楽に会いに行こう。
 

さあまたここから始めよう。
この夜は私の小さな、それでも確かな一歩目になった。
私は自分を信じるための旅へ向かおう。
 

<あぁ だって 僕が僕を好きになった瞬間から 世界は 全ては変わっていくのだから
僕が僕として生きることこそが 偉大な一歩目だから ‐BABY STEP‐>
 

またライブハウスで。

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