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2017年5月25日

SAKO (57歳)
38
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

新録 THE YELLOW MONKEY IS HERE

~今なぜ「新録」ベストなのか。そのモヤモヤを彼らは鮮やかに塗りなおしてみせた~

 メジャーデビュー25周年の今年、ドキュメント映画やドームライブといったイベントが発表されるなか、このベストのリリースも同様にアナウンスされた。
 発売日はデビュー日と同じ、5月21日。15年休んでいて、昨年復活したばかりでもう25周年って。ということは、まあ、こっちに置いといてもらって、話を進めよう。

 まず、思ったのは、「なぜ新録ベストなのか?しかも4,5年前に発売した、ファンベストをもう一度演奏しなおす意味って?」正直なところ、新譜のアルバムが聞きたかったので、やや複雑な思いはあった。2013年に発売されたファンベスト「イエモン」。このころはまさか再集結してくれるなんて夢にも思ってなかったので、20周年にベストが出ても、しょせん切り貼りされたベスト。やっぱり心悲しく切なく思いながら、アルバムを手にした記憶がある。同封されていたDVDは相当楽しかったが。
 そんなベストを改めて今の彼らが演奏したらどんな音になるのか。もちろん興味はそそられるし、聴きたいのは本音だ。でも、ライブで彼らの「今」は身体の隅々まで浸透しているし、う~ん、どうなんだろう。と、複雑な心境ではありながら、まんまとポチッとしていた。(笑)

 結論からまずは言おう。最初の一音から最後の沈黙まで、恐れ入りました。言葉でどのように表現したらいいのかわからないくらい、次から次へと畳み掛けてくる彼らの「今」のサウンドに完全ノックアウト。しばらく立ち上がれないほどの衝撃を受けた。どんだけ彼らは進化し続けるのか。その骨太なパワー、美しいメロディーライン、完成度半端ないアンサンブル。どれをとっても凄まじい。途中、いくつかの曲でストリングスやブラスを使用していたが、5つの(4人プラスキーボード)の音だけで、これだけの重厚なサウンドが出せるものなのか、改めて驚嘆するとともに「彼らが今、ここにいること」に幸福感を感じずにはいられなかった。

 さて、それでは本題といこう(前置きが長い)。
1曲1曲は、アレンジそのものを変えているもの(船山氏プロデュースのストリングスやブラスを加えて)。ギター、ドラム、ベースのラインを細かく変えてはいるが、曲全体それほどいじっていないもの。とあるが、どの曲も、びっくりするくらい「イエモン」とは別物である。また、曲と曲の間も短く、臨場感がたまらない。「まるでライブのよう」というコピーは間違っていない。

1.悲しきASIAN BOY
 最初のエマのレスポール、「ギュウ~ン」でズギューンとヤられる。期待と不安のもやっと感が、この一音であっさり払拭され、魂奪われてしまうのだ。加えて低音がよく録れているので圧倒的な迫力でサウンドが迫ってくる。これは機材の進歩なのか、技術なのか、それともプロデューサー(ロビン)の思いなのか、ヒーセのベースとアニーのドラムの素晴らしさが際立つ。改めて、彼らの特異性、才能に感服する。サビの部分にはストリングが入っていて、これもなかなかオツである。ロビンは、ライブさながらに自由に、でも丁寧に歌っている。ラストのエマのギターソロは文句なくかっこいい。
2.パール
 とにかく、これだけは言っておきたい。今回のアルバムの中で、パールが最高である。
 ギター、ベース、ドラム、キーボード、ボーカル。これだけであのサウンドが出せるのか。今回のアルバムはバラードですら、疾走感というか爽快なサウンドを感じるのだが、パールはとにかく特別な完成度だった。なんといっても、メロディーラインの美しさが心をとらえて離さない。ラストサビのキーボードからギターが駆け巡り、ベースとドラムが絡む。この瞬間、何もなかった自分が急に涙した。再集結を思い出したわけでもない。この曲の歌詞に共感したわけでもない。ただ、このサウンドに涙腺が反応して涙が出てきたのだ。こんな感情は、まだ10代だったころ、キングクリムゾンの「エピタフ」を初めて聞いたとき以来だった。それほどに「この」パールは特筆すべく傑作だった。
3.太陽が燃えている
 ストリングスとブラスを加え、曲の印象をがらっと変えている。聞いていると、オーケストラとイエローモンキーの前に立って、指揮棒を振ってみたくなる(実際に振ってみた)。心躍る曲に仕上がっている。
4.プライマル。
 出だしの「ジャカジャン!」で「あれ?何の音?」と違和感を覚える。なんと、ティンパニーであった。これは好き嫌いがあるたろうが、私としては、なくても良かったかなと思う。しかし、この曲はスペースシャワーが番組で企画した、「THE YELLOW MONKEY IS HERE」のベスト1なのだ。こんなこと、彼らが解散したころには考えられなかった。私もこの曲は本当に切ない曲で、平常心で聞くことは長くできなかったのだ。しかし。代々木初日で、彼らは見事にこの曲を代表曲にしてしまった。今はこの曲を聴くと、あの日の興奮と感動を思い出さずにはおれない。カーテンが下りた瞬間の歌詞になると、やっぱり心拍数が上がった。アルバムのこの曲は、よりロック色の高い曲に仕上がっている。
5.WELCOME TO MY DOGHOUSE
 野性味あふれるこの曲は、やはりベストとして外せない。ライブでもおなじみとなった曲である。ボーカルは甘すぎた過去版より、ずっと聴きやすいロビンの大人の声であり、アコギがよく聞こえてバランスがとてもいい。なんといっても、ドラムとベース、特にベースソロがワイルド感満載で、これが25年以上前に作られた曲かと思うとロビンの才能に改めて感服してしまう。
6.追憶のマーメイド
 今回、最も船山色の強い1曲だろう。ライブでは長い期間演奏されていないだけに、この曲を聴くのは楽しみの一つだった。彼らが愛する昭和歌謡を彷彿とさせるアレンジになっていたが、総じて悪くない。このアレンジでも、違うアレンジでもいいので、またこの曲をライブで聴きたいと思う。
7.BURN
 ライブで聴いたそのものと言っても言い過ぎではないかも。しかし、ピアノの美しさは新しいキーボードを担う鶴谷氏の能力の高さを如何なく表している。特にサビのボーカルとピアノの掛け合いは美しい。かといって、ギター、ベース、ドラムが遊んでいるわけでは決してなく、これだけのメンバーであれだけのサウンドを生み出すことに何度も言うが、圧倒される。
8.SPARK
 あのイントロ。どうやって誕生したのだろう。ジャアン!ドドドドドドドド!ってもうめった打ちですよ。迫力は年齢とともに増したのか?信じられないくらいのパワーに圧倒される。スパークではなんといっても、ギターリフが好きである。いつ聞いてもテンションが上がる。
9.楽園
 このアルバムの特徴として、ベースとドラムのリズム隊の音がとても拾いやすい。アニーのドラミングの多彩さはもちろんだが、ヒーセのベースは本当にすごい。もはや語りつくされた感があるが、彼のベースは時々低音のリードギターを思わせるほどメロディアスなのだ。この楽園は彼のベースのメロディーラインがクールである。また、エマのギターも細かいところだが、アレンジが進化していて、キーボードとの絡みが絶妙である。ロビンも楽しそうに歌っている(ロビンはどの曲もほんとに楽しそうに歌っているが)。
10.真珠色の革命時代
 ギターのアルペジオが美しい。メカラウロコ同様、ストリングスを使用している。アレンジが船山氏になっているが、それだけで大分印象が違うのがやはりすごい。ストリングスが奥行や幅を広げるなかで、エマのギターソロは負けない存在感。また、右から左に流れるドラムも心地よい。そして、なんといっても、エンディングが秀逸だ。ライブでは、そのまま流れてサブジェクトレイトショウにいくのだが(これもまたかっこいい)、このアルバムでのエンディングは何とも潔くはっとさせられた。
11.SO YOUNG
 ピアノが全面にでる序盤から、バンドサウンドへと変遷していく、バラードである。この曲が作成されたときは、ロビンにとってつらい時期でもあり、楽曲も混沌した暗いイメージだったが、ここに至っては、この曲すら、「でも今は前を向いて生きていっていいんだ!」みたいな雰囲気に聞こえてくるから不思議である。
12.天国旅行
 この曲もギター2本とベース、ドラム、キーボードだけで紡がれているのかと思うとその深みと重厚さに驚きを隠せない。長い曲で、インストルメンタルが壮大重厚、歌詞も重く、ボーカルの気持ち次第で聞いた人を落ち込ませるような曲だ。ロビンはそれを知ってか知らずか、とても丁寧に歌っている。そして、むせび泣くようなギターの高音がこの曲をより一層高みへと導く。最後のリフ、からのアルペジオ。全てが計算尽くされたような完成度の高い楽曲である。今回のアルバムでは、キーボーディストの変更がもたらす変化と、彼らの技術的な進化、年齢による思いがうまく作用して、代表曲としても恥ずかしくない楽曲に仕上がっている。
13.SUCK OF LIFE
 柔らかな感じの入りからちょっと戸惑うが、ロビンがマイクスタンドを回すであろうあたりでは、もういつものSUCKになっている。やっぱりテンションが上がってくる。ドラミングが軽快なためか、駆け抜けていく爽快感が増したように感じた。ロビンのボーカルもアドリブが飛び出す。安定の一曲である。
14.花吹雪
 とにかくイントロから聞かせる。歌詞も心に入ってくる曲だし、人気曲というのも頷ける。この曲はキーボードが生きる曲である。三国氏が演奏していたときも、彼の色がよく出ていた。さて、鶴谷氏は? 実はライブで初めて聞いたときは、違和感があった。いつもと違うメロディを奏でられたもので。でも、それも慣れてしまうとこちらのほうが好きになるから不思議である。ところで、一箇所ミスタッチがあったと思うのはもちろん私の勘違いだよね。
15.JAM
 この曲に関しては、大きくいじる必要はないだろう。「今」の彼らが演奏するだけで、それは十分なのだから。解散発表後の最後の「JAM」は悲愴だったけど、再集結後の「JAM」はまさに魔法。そして紅白の「JAM」は神がかっていた。このアルバムの「JAM」についても多くを語る必要はないだろう。ところで、ライブでいつも2番のサビをファンとともに熱唱するが、数え切れないのは「夜」ではなく、「罪」。夜は、1番なので。
16.バラ色の日々
 ついにラストの曲。本音を言うと、再集結まで、バラ色は私の中ではベスト5にも入っていなかった。なぜなら、あの頃のこの曲には、なにか中途半端なものを感じていたから。その気持ちを変えたのは、やはり再集結後の初ライブだった。技術的なことを言えば、歌詞もメロディもそれぞれのパートのアレンジもこんなに凄かったのかと再認識。このアルバムでも、細かいアレンジ変更があり、何よりもギターパート、ギターソロのカッコよさがもう半端ない。これは他パート、ベースやドラムに加えてロビンのギターがソロを活かしているのが大きい。
 だが、この曲を以前と違うものに聞こえさせる本当の理由は、解散前には幻だったバラ色の日々が、今、本当に始まっている。それをメンバーが強く信じているからこそハートに届く、ということだろう。

 16曲すべてについてコメントしていったが、もちろん全く足りていない。もっと言いたいこと、伝えたいこと、逆に聞きたいことがたくさんある。しかし、それはやはり私の言葉ではなく、聴いた人がそれぞれに感じて思うことだろう。十人聞けば、十人感じることがある。

 ロビンは今が本当に絶好調なんではと思うくらいに声が素晴らしい。年初に喉をやられて休ませたのが功を奏したのかも。そしてとにかく楽しそうだ。
 エマのギター。レスポールの音が本当に素敵。心をぐいぐい掴まれて、天国に連れて行ってくれる。リフもソロもひっかき音も全部が特別。
 ヒーセのベースは化け物だね。途中でも書いたけれど、低音のギターメロディかと思うくらいのベースメロを弾きだしている。彼がいなければ、イエローモンキーではなくなるだろう。
 アニーのドラム。細かいところまでほんとにきちんと刻んでいる。アドリブも少し入っているかもしれないが、ここでこの音!というドラミングが気持ちいい。スピーカーの右から左(もしくは逆)に走るドラムが最高にカッコよくて好きだ。
 最後に鶴谷氏のキーボード。彼の参加が、イエローモンキーの変化の大きな要因になっていることは確実だ。やはり演奏者が違うというのは大きい。もちろん三国氏も大好きだったし、懐古の念もあるけれど、新生イエローモンキーには、鶴谷氏が必要だったと思う。「今」の彼らにふさわしいキーボーディストだろう。

 さて、そろそろ締めくくり。「THE YELLOW MONKEY IS HERE」は、間違いなく「今」の彼らの音であり、今さらだが「イエモン」とは全く別のアルバムである。このアルバムのPRティザー映像はなぜかモノクロだったが、アルバムの収録曲の全ては鮮やかに美しい色で塗り直されていた。彼らがなぜ、ファンベスト「イエモン」を新録したのか、その訳がよくわかった。上述したが、2曲目の「パール」を聞いたときにすでに全てを理解できた。
 また、「イエモン」は、解散中のアルバムだったため、どうしても切り貼り感が否めなかったのも、彼らにとって心残りだったのではないだろうか。それを言えば、この「THE YELLOW MONKEY IS HERE」は、まるでコンセプトアルバムかライブアルバムのような仕上がりになっている。

 これを書いている今日、本アルバムはオリコン、ビルボードともに第1位を取ったという。当然だろう。そしてその価値あってあまりある作品だ。

 大きな声で言おう。買って損なし、幸せになりたい人は買うしかない。
 

注記:上記レビューの「JAM」での歌詞の引用、「夜」、「罪」は
   THE YELLOW MONKEY、「THE YELLOW MONKEY IS HERE」の歌詞カードからである。

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