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bonobosと永楽館

こんな所でbonobosに出会えるなんて!

2018年夏頃より、兵庫県豊岡市で少し変わった企画が行われた。
「ミュージシャン・イン・レジデンス」と銘打たれたこの企画は、ミュージシャンが市に滞在し、その体験を基に曲を作るというものだ。その記念すべき第1弾(第2弾以降があるのかどうかは知らないが)として白羽の矢が立ったのがbonobosである。
bonobosのボーカリスト蔡氏が豊岡市に滞在し、そこから得たものを曲にした。「アルペジオ」と名付けられたこの曲は、旧1市5町が合併してできた豊岡市をイメージしたものだ。そもそも全く色の違う1市5町であったので、そのバラバラ加減をギターの弦に見立てて曲を書いた、というのは蔡氏のコメントだが、そのコメント通り「これ」というつかみどころのない曲調である。しかし、何故か癖になるエモさがあり、リピートしてしまう。
そんなエモかっこいい曲を引っ提げて、関西最古の芝居小屋である永楽館にて2019年3月28日にライブを行うということで観に行った。
芝居小屋との名の通り、永楽館は歌舞伎役者の片岡愛之助氏が毎年興行をされている様な、いわゆる「和」の空間だ。そこにbonobosがどのように魅せてくれるのか、正直、期待半分不安半分の気持ちであった。
そんな中、始まったSEは地元の盆踊りの様な曲。それが永遠とも思えるような長さで流れている。人力で開閉させる舞台の幕は、なかなか開かない。体感では1時間くらい流れているのでは?(多分実際は5分程度だと思われる)と思った矢先、ギターやベース、ドラムにキーボードの音がその盆踊りのような曲に自然に乗って聞こえて来た。一気に客席の鼓動が高鳴るのが肌で分かる。
さて、1曲目はどうくるのか?わくわくと共にどきどきする。そんな何とも言い表せない感情の中、ボーカルの蔡氏の「りんご~」という歌詞が穏やかに、しかし、鮮明に耳に入ってくる。「三月のプリズム」だ。温かい熱を帯びたこの曲が会場全体を包み、一気にbonobos色に染まっていく。歌詞の情景が、豊岡の町の中で再現されていく。なんと心地よく、至福の空間なのだろうか。もちろん、照明などの加減もあるだろうが、完全に永楽館とbonobosがマッチしている。すごい、の一言だ。永楽館という空間を最大限に活かし、なおかつbonobosの良いグルーヴ感が本当に魅力的であった。
「あなたは太陽」では、豊岡市民の誰もが(もちろん、他から来た方もそうだろうが)、それぞれ想いの強い固有の土地を思い出し、そこで育てられているオクラや川を泳ぐ魚たちに想いを馳せたことだろう。
そして、「アルペジオ」。冒頭の歌詞「ダンス~」のところの「ダ」が跳ねる様に蔡氏の口から飛び出してくる。まるで、豊岡市のシンボルであるコウノトリが飛び立つ様みたいである。曲の中盤は、何とも表現のしようのないリズム感。しかし、これがスルメのように癖になる。噛めば噛むほど美味しい。「たった1週間ほどの滞在で何が分かるのか」との声を聞くこともあったが、むしろ、個性のバラバラな豊岡市をたった1週間で表現できるまでに持っていけていることがすごいと思う1曲であった。
本編最後は「23区」。少し心が寂しさを覚えるようなこの曲も、今日は本当に温かい。曲中メンバー紹介も行われ、しっとりと本編が終了した。
メンバーが舞台袖にはけ、オーディエンスのありがとうの拍手がアンコールの拍手へ変わった。しばらくするとメンバーが再び登場し、最後の曲「THANK YOU FOR THE MUSIC」。ここまで、芝居小屋という性質上、着席でのライブだったが、メンバーから「最後はみんな立って踊りましょう!」と、最後は全員立ってハンズクラップで大団円。何度も記すが、なんとピースフルでハートフルな空間だったのだろう。
豊岡市を含む山陰方面は交通の便がなかなか悪く、フェスなどはあっても、そもそもライブハウスが少なく、このような素晴らしい単独ライブが開かれることが少ない。ぜひ、この機会をきっかけに、音楽やバンドの地方における新たな可能性が開かれることを願ってやまない。ありがとう!bonobos!

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