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絶妙なタイミングで届けられた想いを受け取った時

いつも不思議なタイミングで救いに来てくれるBUMP OF CHICKEN 藤くんの唄

 2019年4月11日の夕方、私たちリスナーは『流れ星の正体』というプレゼントを貰ってしまった。
翌日は、ボーカル藤くん本人の誕生日だというのに、先に私たちが貰ってしまったのだ。

 Instagramに短く区切って上げられたその曲を再生すると、ギターを抱えた彼が動き出した。
その透き通った歌声と歌詞を一言も漏らさないように耳を澄ませる。

 身体中を集中させて聴くうちに胸が詰まって、鼻の奥がツンとする。優しく、力強く、丁寧に届けられるその唄の、3つ目の動画のサビのところで目の周りが熱くなってきて画面が見えなくなった。どの言葉も、今の私の胸にザクザク刺さる。

本当に凄い人だ。彼は。

どうしていつも絶妙なタイミングで
私の心を撫でてくれるんだろう。
(何で分かるの?私のこと)
涙目になりながら、何度も何度も再生する。
いや、これはただの偶然だ。でも偶然とは思えない"何か"を感じる。
 

 今から2ヶ月ほど前、お腹の中に大きな腫瘍が見つかった。

血液検査、CT、MRI、この2ヶ月の間に沢山の検査を受けた。
放っておくと破裂、悪性に変化するなどの危険性があるとの事で、手術で切除することを勧められた。
でも内心、どこかホッとしている自分がいた。
 実は腫瘍が出来たのは2回目だ。
『この病気は高い確率で再発します』と言われていたし、ストレスが一番の原因になることも知っていた。ある意味、こうなることを望んでいたところもある。
 前回の手術のあとで『お金を出して治してやった。大変だった』と家族が愚痴を言っているのを聞いてしまっていたから。

(ああ、もうこれで終わりにしよう。今度再発したら次は治療するのは止めよう)その時、そう決めたのだ。
再発するのも分かっていた。

 今回の腫瘍は、前回摘出したものの丁度2倍の大きさになっていた。『かなり大きくなっていますので、切除することをお勧めします』と言われたが、ドクターには『一旦持ち帰っていいですか』とお願いして、その答えを保留した。
 

 まだ腫瘍が発覚する前、BUMPのツアーが発表された時に、(もしもチケットが取れなくても全部の会場に行こう)と決めていた。
次は無いかもしれないと漠然と思っていたから。
直ぐに宿と飛行機も手配した。
自分の身体の中の変化を無意識に感じていたのかもしれない。

 (もしもLIVEに参戦出来なくても、BUMPを通じて知り合えたフォロワーさんたちに会っておきたい)
こんな私と仲良くしてくれた人たちににお礼がしたい。
 

 今、この文章を書いている時点で、今回の腫瘍の事はまだ誰にも話していない。発覚した2月から、誰にも話せずずっとひとりで考えていた。
 複雑な家庭環境で育ち、元々疎遠だった父親は既にこの世には居ないし、産みの母親は何処にいるのかも分からない。ましてやこんな重たい話、友人になんて話せない。友人の前では"明るく和かな私"なのだ。

(手術はしない)
そう決めていたのに、毎日楽しく呟いていたTwitterも、あれから呟けなくなっていた。

 幼い頃から存在を否定されて育ってきたせいもあるかもしれないが、私は自分のことを誰かに聴いてもらうのがとても苦手だ。
その理由は何となく分かっている。恐らく怖いのだ。人も自分のことも、信じられないのだと思う。話す事で、相手の気持ちを暗くさせてしまうことも怖い。
 自分を大切に出来ないから、いつも(自分を大事にして)と唄う藤くんの声が突き刺さる。

このまま、例え最悪の状態になったとしても、黙っておけるギリギリまで誰にも言わないでおこうと思っていた。
時間が経つにつれ(これは大した事ではないんじゃないか?)とか(このまま忘れてしまおうか?)とも思い始めていた。

 生きているだけで素晴らしい。生きたくても生きられない人もいる。だから命は大切。そんなことは分かっている。分かっているんだ。わたしもそう思う。もしも命を投げ出そうとしている人がいたら、私も全力で止めるだろう。どうか生きて欲しいと思う。
でも駄目なのだ。自分の事は。

 病院には、手術をどうするか電話で連絡することになっている。でも、電話出来ないまま10日が過ぎた。
そんな時、流れ星の正体の動画がアップされたのだ。

《ひとりにせずに掬えるように
 旅立った唄 間に合うように

 命の数と同じ量の一秒
 君はどこにいる 聴こえるかい
 君の空まで全ての力で》
(4/11日公開された『流れ星の正体』より抜粋)
 

自分たちの音楽を愛してくれるリスナーに、1秒でも早く届けたいと想う、切ないほどの彼の愛情と想いを感じる。
私たちリスナーと彼らは相思相愛だ。
私はまた彼の愛を受け取ってしまった。

自身の誕生日の前日に届けてくれたこの楽曲が、閉じ込めて鍵をかけたはずの私の心を大きく揺さぶっている。
まるで今の私を全て分かって(間に合うように)と言ってくれているような気がした。
こんなタイミングで届けてくれたこの音楽に、リスナーを想う彼の楽曲に、私の決断は失礼なのでは無いか?
私は手術を受けるかどうか、迷い始めている。

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