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ヤバイTシャツ屋さんVSキュウソネコカミ

比較で魅力を再発見する

先に宣言しておく、わたしはヤバイTシャツ屋さんとキュウソネコカミという二つのバンドが大好きだ。
関西のおもしろくてかっこいいバンドといえば「キュウソネコカミ」、「ヤバイTシャツ屋さん」、この2組の名前は多くの邦ロック好きが連想するのではないだろうか。
この文章ではサブタイトルで「比較する」という言葉を使っているが、どちらが優れていてどちらが劣っているという比較ではなく、このバンドのここが良い、とそれぞれの良い点を挙げてどっちも良いよねと主張したいだけの文章なので、どうか安心して読み進めてみてほしい。

平成31年1月19日、20日にMUSIC ZOO WORLDというフェスが開催された。
開催された経緯から内容から当日のライブまで、いろいろと思い入れのあるフェスなのだが、今回はテーマ上、ヤバTとキュウソだけに焦点をあてる。わたしがこのフェスを話題に挙げた理由は、ヤバTのステージでのMCが衝撃的だったからだ。
1日目は「おもしろい生き物の世界」、2日目は「かっこよい生き物の世界」というテーマになっており、キュウソとヤバTは2組とも1日目の出演だった。タイムテーブルは「変なバンド対決!」と称し、ヤバTの次がキュウソという具合に順番が連続になっていた。
私にとっては、大好きな2組を連続で見ることのできる最高の時間である。
そして肝心のMCだが、「変なバンド対決!」と称されているため、対決相手の話を少しする流れがあった。
そこでボーカルのこやまさんが叫んだ言葉。
「キュウソのパクリって言われることがある。どんだけ浅い聴き方してんねんって思う。全然違うし!!!」
言わずもがな、彼はキュウソを批判しているわけではない。
現にこのあと、「キュウソとは一緒にゲームしたりして遊んでもろてて(以下略)」という仲良しエピソードを披露しており、キュウソを悪く言うつもりはまったくないという気持ちを表しているように思えた。このMCは聞く人によっては誤解を与えてしまうようなリスクのある発言だと思うが、それでも、それほど伝えたかった言葉なのではないかと思う。
「関西のおもしろくてかっこいいバンド」という枠であることは同じだが、キュウソはキュウソのやり方で、ヤバTはヤバTのやり方でやっている。それなのに、枠が同じというだけで深く考えずにパクリだの似てるだのと言われることに彼は違和感を感じているのだと思う。
そして自分たちの方が若いだけに、パクリだと言われてしまう、それが悔しく、歯がゆいのだと思う。
あのMCは、「もっとちゃんと聴いてほしい」という彼の心の叫びだったのではないかと思う。
そんなふうに言われることがあること、そして歯がゆい思いをしていることを知らなかった私は、「こやまさんはこんな思いを抱えていたのか。」と衝撃を受けた。

このMCをきっかけに、私はキュウソとヤバTはどこが共通していてどこが異なるのかを考えるようになった。
すると、比較すればするほど両者の魅力が浮き上がってきた。
両方のバンドが大好きな私なりの考察に、少しだけ、お付き合いただきたい。

まず、共通点はおもしろいところ。
歌詞を読むだけでクスッと笑えてしまう、そんな遊び心のあるバンドだ。
ヤバTはまずバンド名からして笑わせにきているし、キュウソは時にコスプレをしてライブをすることがある。
コミックバンドと間違われることもしばしば。
また、メンバーの仲が良く、メンバー同士の会話が漫才みたいになるところも共通している。  
でも、両者は実はすごく真面目で、「売れたい」と明言して全力で夢に向かって突き進んでいる。
それが、最高にかっこいい。応援したくなる。
「売れたい」と口に出すことはダサいという考え方もあるだろうが、どこまでも素直な彼らはそのまっすぐさを魅力にしてどんどん人を惹きつける。だが、そのかっこよさに気づく前におもしろいだけのバンドだと判断され、悔しい思いをすることも多い。
そしてその悔しさを糧にしてまた頑張る、そういうバンドだ。
クールにこなすというよりかは、あがいている、だがその泥臭さがまた魅力になっている。
私がこの2組のバンドが好きな理由はここにある。

 さて、次は相違点。大きく異なるのは歌詞だと思う。
おもしろいという点は共通しているのだが、ざっくり言うとキュウソは棘があるのに比べ、ヤバTは平和だ。
例えば、キュウソの「カワイイだけ」という曲のサビは「かわいいは作れるけど それ以外君は作れない」という痛烈な歌詞だ。
外見だけ整えて男遊びをする女性に対してチクッと棘を刺す。そして「さぁ今こそ本当の自分の魅力を取り戻せ」という歌詞につながっていく。痛烈にみえて実は女性の幸せを願っているあたたかさが感じられる曲だ。
それに対してヤバTの「かわE」という曲のサビは「君はかわE 越して かわF やんけ! 魅力、溢れてこぼれるやんけ!」という歌詞だ。
意味が分からない。しかし頭に残って離れないキャッチ―さがあり、なんだか最高にハッピーな気分になる。
ヤバTは他に「DQNの車のミラーのところによくぶら下がってる大麻の形したやつ」という曲もあり、ひたすらにおもしろい。
もちろん両者いろんな曲があるので一概には言えないが、全体的にみるとキュウソは棘があり、ヤバTは平和な歌詞であると考察する。

 もう一つの相違点は、ライブパフォーマンスだ。一言で言うとキュウソが「踊る」だとすれば、ヤバTは「暴れる」だ。
キュウソのライブは安全だという印象が強い。モッシュがあり、汗だくになるが、ボーカルのセイヤさん以外のダイブが禁止されているので、ダイバーの足が当たって痛い思いをすることはない。振り付けのある曲もあり、みんなで一緒に踊って飛び跳ねる最高にハッピーの溢れたライブだ。
それに対しヤバTのライブは、激しいという印象が強い。モッシュはもちろん、ダイバーが一度に四人も五人も転がってくる。
だが、それだけ激しくても笑顔が溢れており、楽しくて仕方がないという顔をみんなしている。
楽しい気持ちが全力でぶつかり合うような、最高にアツいライブだ。
なお、様子として目に見えるのでライブパフォーマンスを対象にして比較したが、これは曲における相違点とそのままリンクしていると考える。キュウソのライブが「踊る」なのは、人を踊らせる曲作りをしているからだし、ヤバTのライブが「暴れる」なのは、縦ノリしやすい曲作りをしているからだ。私は音楽の専門家ではないので、曲作りの考察はこのへんでぼやかしておくが、以後、この文章でライブという単語が出るときには、曲も含めた意味だと捉えて読んでいただきたい。

 ここで既にお気づきの方もいるだろうが、歌詞とライブパフォーマンスに着目して比較するとき、辿り着く相違点は、キュウソは歌詞に棘があるがライブがハッピーであるのに比べ、ヤバTは歌詞が平和なのにライブが激しいということだ。歌詞が激しくライブが激しい、または、歌詞が平和でライブが平和、なのではなく、両者とも入れ子になっている。この、歌詞とライブの穏やかさと激しさのギャップが両者の魅力なのではないかと思う。
棘のある歌詞で踊るのも、平和な歌詞で暴れるのも、最高に楽しい。
キュウソは歌詞の棘がスパイスになり、ヤバTはライブの激しさがスパイスになっている。
この関西の二組のバンドが、おもしろいだけでとどまっていないのは、このスパイスがロックバンドらしい刺激のある音楽につながっていて、最高に笑えるハッピーなバンドなのに、最高に刺激的なかっこいいバンドにもなっているからだと思う。
これが、キュウソとヤバTを比較することで発見することができた両者の魅力である。

 キュウソとヤバTは似ている、ここで思考をとめてしまってはもったいないと私は思う。
今回私が述べた共通点や相違点の他にまだまだ共通点も相違点もあるだろうし、それを見つけて比較することでまだまだ両者の魅力を発見することができる。
現に、両者を比較して考察することで、私はこの2組のバンドが以前よりも、もっと好きになった。
もし、こやまさんと同じような歯がゆさを感じていたヤバTのファンの方がいたら、自信をもってこう主張してほしい、「ヤバTとキュウソは全然違うが、どちらも最高におもしろくてかっこいいバンドである。」と。
 

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