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就職活動に悩み苦しんでいた私に勇気を与えてくれた曲「ファイター」

BUMP OF CHICKEN 約十年経って「よく聞くアーティスト」から「大好きなミュージシャン」に

 小学生の頃はゲーム・アニメ・音楽といった娯楽が放課後と休日の楽しみで、それらに多くの時間を費やしていた。音楽に関しては、BUMP以外のアーティストの曲も含めてよく聞いていた。

 初めて聞いたBUMPの曲は、PS2用ソフト「テイルズ オブ ジ アビス」の主題歌となった「カルマ(2005年)」。ゲームのストーリーを進めていくうちに、この曲が意味するのはそういうことだったのかな、と幼いながらの知識と感性でつかもうとしていた。ただそれ以上に、「カッコイイ!!なんかこの声好き!」といった直感的な感想が先行していて、あまり歌詞の意味などは考えていなかったような気がする。
 
その後、中学・高校時代も、BUMPの曲をいくつか聞くようになった。他の何組かのアーティストと同じように、「よく聞くアーティスト」のひとつとして…。
 

 ところが大学生になって、親元を離れ一人暮らしを始めてからは、ほとんど音楽を聞かなくなった。家族の自家用車の中で音楽を流す時間はなくなったし、サークル、バイト、研究、と他に打ち込むことがあったからだ。しかしそんなポジティブな理由ならまだしも、「就職活動」が本格的にスタートしてからはいよいよ音楽なんて聴いている余裕はなかった。音楽なんて聴いている暇があったら、一社でも多く応募しなきゃという焦りが大きかったから。
 
 

 でも、あるきっかけがあって”BUMP OF CHICKEN”と検索して出てきた曲が、ファイターだった。確か映画「君の名は。」がヒットした頃、主題歌を担当したRADWIMPSの声がBUMPの声と似ているという反応が聞こえてきて、そういえば最近のBUMPはどうしているんだろう…?と気になって検索したのだ。そんな些細なきっかけだった。

 ファイターがリリースされてから数年は経っていたが、就職活動で悩んでいた時に出会ったこのファイターという曲が、BUMP OF CHICKENというミュージシャンを大好きになるきっかけになった。BUMPの曲と出会って何となく「よく聞くアーティスト」になってから、十年近くは経っていた。
 
 

 大学4年生になる少し前の3月から、就職活動が解禁。何社も応募した。でも、なかなか嬉しい知らせは来ない。面接で落とされるどころか書類選考すら通らないこともザラにあった。それでもようやくたどり着いた、面接という次のステップ。待合室では、聞きたくないけど聞こえてくる声。「ここがダメでも、◯◯って会社に内定をもらっているから…」なんて類いの話。しかし私は私。周りと比較する必要はない。いくつ内定をもらっても、就職先は一つだ。飾らない、素(す)の自分で行こうと思った。でも…
 

『気付いたらもう嵐の中で
 帰り道がわからなくなっていた』

 素の自分に戻ろう、と思っても、素の自分ってなんだっけ?と余計にわからなくなる。自分の性格・個性、長所・短所……。答えを見つけようとすればするほど遠ざかっていくような。どんどん嵐の中に入り込んでいくような。
 

『記憶の匂いばかり詰めた
 空っぽの鞄をぎゅっと抱えて』

 就職活動をしている、という記憶は確かにある。選考に応募した履歴は残っているし、時間とお金をかけて面接会場に足を運んだことは覚えているから。でも、一番欲しい「内定」という結果は来ないから、空っぽのままである。
 

『ここにいるためだけに
 命の全部が叫んでいる』

 不採用の結果ばかりだと、自分は社会に必要とされている人間なのだろうか、ここに居場所はあるのだろうか、と怖くなる。当時は不景気でもなかったから、なおさら肩身が狭くなる。それでも何かしらお金を稼ぐ手段を得ないといけないから、就職活動は終えられない。私はあなたの役に立ちます!というメッセージを、言葉を変え表現を変え、叫んでいる。
 

『普通の触れ方を知らないから
 戸惑っていたら触れてくれた手に』

 面接官の受けが良いような「普通」の触れ方をすれば、一社二社ぐらい内定はもらえるのかなあ。本当はそう思ってはいなくても、その場しのぎの対応ができれば…?でも「普通」を意識する度にわからなくなっていく。そもそも、「普通」ってなんだ?

 そんな折、大学主催の就活イベントに参加したら、あるキャリアアドバイザーの人と話すことがあった。 「思ったことがあったら、まとまってなくてもいいから訪ねてきてね」と言ってくれた。
 

『君がいるそれだけで
 命の全部が輝く』

 別にその人から「最近どう?」なんて連絡は来ないけど、私が行けばたいていそこにいて、相談に乗ってくれる。色んなことに手を出して中途半端にしてきた自分の、良いところも悪いところも客観的に見て、指摘してくれる。その時にいなくても、周りの職員さんが、私が訪ねてきたことを伝えてくれる。そういう人がそこにいる、あるいはその人が存在しているという事実だけで私は生かされている気がする。少し失礼な言い方かもしれないが、私のような悩みごとを抱えた人間がいるから、キャリアアドバイザーという仕事が成り立ち、その人の給料ややりがいが生まれているのかな、とも思える。
 

『空っぽの鞄は空っぽで
 愛しい重さを増やしていく
 重くなる度怖くなった
 潰さないように抱きしめた』

 かといって、大して結果が変わるわけでもない。「他に優秀な人がいるのでね」とお世辞か本音かわからぬ表情。「採用を見送ることになりました」という黒い文字。そもそも返事も何も来ない失望感…。とどのつまり「不採用」という現実を突きつけられるだけ。どんどん重たくなって怖くなる。結果はついてこないから、やっぱり空っぽのまま。

 4年間の大学生活を終えても就職先は決まらず、卒業後は同じ大学の同じ研究室の大学院へ進学した。研究は好きだけど、半分以上は学生という身分でモラトリアム期間を伸ばすためだった。さらに、2年間の大学院生活を終えても、目指していた職業に決まらなかったからと、親に頭を下げて、もう半年ほど就職活動を続けさせてもらった。

 もやもやしたまま何となく就職活動を終えてしまうのは、今まで悩み苦しんできた自分と、支えてくれたキャリアアドバイザーの方を裏切ることになりそうで、納得できなかった。ただ、「24歳になってまだ就職しないのか…。」そんな声が聞こえてきそうで、いや言われなくてもそう思われていると思うだけで、怖くなった。

 でも…。この悔しくて辛い経験から学ぶことも、新たな自分に気づくこともあるから、空っぽでもこういう記憶の匂いは、何かしら将来の自分の糧になるのではないか。だからそのような、重くなっていく愛しさを潰してしまわないように、できれば思い出したくないけど、こうして書き留めておくことにした。
 

『涙超えた言葉が
 その鼓動から届き勇気になる』

 何度もエントリーシートを添削してもらって、面接練習もしてもらって、それでも不採用だった時、「ダメでした…」と報告するのが、辛くて辛い。自分のいたらなさ以上に、ここまで自分のために尽くしてくださったキャリアアドバイザーの方に申し訳なくて、涙をこらえようと思ってもやっぱりこぼれてしまう。でもその人は、私の涙ぐんだ聞きづらい声を受け止めてくれて、まとまりのない体験談を聞いてくれて、そこから大切なことを引き出すコメントをしてくれる。それらが、私を前に進めてくれる勇気になっていく。

 結果的には、当初の自分の興味とも大学での専攻ともほど遠い職種の会社で働くこととなった。この進路選択が正解であるとの保証はないけど、自分なりに努力してやりきっての結果で、少なくとも私自身は、これが今の自分の歩むべき道なのだと信じているから、後悔はない。 2018年10月、25歳を前にしてようやく社会人としての一歩を踏み出すことができた。

 人よりちょっと、社会に出るのが遅くなったかもしれないけど、ここまで、他人の目に怯えながらも戦い続けて来られたのはこの「ファイター」という曲が、私に勇気をくれたから。たぶんこれから先も、自分の居場所を守るために戦わなければないときが来ると思う。そのときはこの曲を思い出して、立ち向かっていきたい。
 
 

初めてカルマを聞いた時、こんなにもBUMPの曲が私たちリスナーの心に寄り添ってくれるものだとはわからなかった。BUMPの創り出すあの歌詞あのメロディーあの演奏が、約十年の時を経てある日ストンと落ちてきて、BUMP OF CHICKENが「大好きなミュージシャン」になる瞬間だった。
 

※『 』内の歌詞は、全てBUMP OF CHICKEN「ファイター」より引用
 

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