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兄弟日和

桜の花びらが舞う神戸で、二人の兄弟が声を重ねた。

それはまるで春風のような、咲いたばかりの桜を優しく散らす儚さと、陽の光で包まれた暖かさを体現した歌声だった。
 

この日神戸煉瓦倉庫へ向かったのは、Permanent Fish、Antique notesでボーカルを務める飯田俊樹と、cinema staffでボーカルギターを務める飯田瑞規の兄弟が、最初で最後の弾き語りイベントをするからだった。
1部2部共に完売し、当初の予定を変更してスタンディング形式にするほど、このイベントは誰もが待ち侘びていた。

始まりは兄弟二人で1曲を披露した。
弟の瑞規がアコースティックギターを弾き、兄の俊樹と歌声を重ねた。
私は、その力強く優しい、彼らの共鳴に思わず涙した。
感極まるという表現が一番に当てはまるだろう。
『こんなにも美しい響きがあるのだ。』、と。

それからは個々で、グループで、自分たちの曲を歌ったり、曲をカバーをしたり、最初で最後の光景を目に焼き付けた。

このイベントは、今年の4月末で解散が発表されたアカペラグループのPermanent Fishと「ずっと一緒にやりたかったのに」と弟の瑞規が言ったことで決まったそうで、スペシャルゲストとしてメンバーを呼び、6人でアカペラを披露した場面もあった。
重なり合う声がひとつの“曲”になる瞬間は、空間を一瞬にして静寂にし、そこに新しい世界が生まれたようだった。

また、サポートキーボーディストにはAntique Notesのメンバーを呼び、飯田兄弟の優しいハモリで家族愛の曲を歌った。
 

その日は“兄弟日和”というタイトルの通り、MCでは兄弟がお互いの印象や思い出話を話していた。
やはり兄弟となると嫉妬や悔しさがあるもので、当然彼らもそんな話をした。兄の俊樹は「小さい頃は弟が可愛がられた」ことや「弟の活躍を見ないようにしていた」こと。弟の瑞規は「歌の上手い兄に勝つためにギターを始めた」ことなど。
だがやはり兄弟となると愛情があるもので、「小さな弟が、自分が学校から帰ってきた時に凄く嬉しそうな顔をした」ことや「気になって弟のエゴサをしたらあだ名を付けられていて、そのあだ名が(実際は弟本人が公言していたことだがそれを知らず)悪口を言われていると思ってむかついて、こんなにも弟のことで怒れるんだと気付いた」こと。実際この話をしたとき、兄の俊樹は思いがけず涙していた。
 

その日、通して感じていたのは”家族愛”だった。

弾き語りのイベント、というよりは、飯田家の家族の時間を分け与えてもらったような、なんというかよくわからないけど暖かい時間だった。
 

「最初で最後と言ったけど、凄く楽しいから、あと1、2回は許してね。」と言っていた。
「もちろん。」と、心の中で答えた。

幸福感に満たされるピンク色の季節は、素敵な思い出を作ってくれた。

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