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「THE YELLOW MONKEY 」 という名の宇宙

「9999」世界最速レビュー(だったらいいな)

 先日、世界で初めて、「ブラックホール」の写真が撮影された。
 オレンジの光熱の輪の中に黒い、ただ黒い穴がある。
 そこにすべては吸い込まれていくらしい。
 だが、宇宙が縮小していると間違ってはいけない。
 宇宙がブラックホールに吸いこまれるのは、宇宙が常に膨張し続けているからである。(と私は理解している)

19年ぶりのTHE YELLOW MONKEY、NEW ALBUM「9999」(フォーナイン)を
聴いた。
ここに行きつくまで、彼らはとてつもないプレッシャーと、良いものを世にだしたいという渇望にも似た野望があったことだろう。

中学3年生の初めて買ったコミックを胸にした時のように、私は心を躍らして封を切り、耳を傾けた。

オープニングを飾る「この恋のかけら」を聴いていたら、涙がぼろぼろ流れてきた。

「時が過ぎ去っても抜けないでいる この恋のかけら どこに埋めればいいのだろう」

「さぁ ダメ元で やってみよう 泣いても 笑っても 残された 時間は 長くはないぜ」
                         
                         (この恋のかけら 吉井和哉)

抜けない恋のかけらを抱えながら、それでも前に進もうと歌い上げるスローテンポな曲である。
この曲から始めることには勇気がいったのではないだろうか。普通はアッパーな曲でガツンと来ることが多い。
だが、彼らは違う。だって「THE YELLOW MONKEY」だから。
この曲で十分勝負できる自信があったのだろう。そしてそれは成功している。
また、そのあとの「天道虫」のアッパー感が見事に映える。

この「9999」のリリースには、実に再集結から丸3年。最後のアルバム「8」からは19年の歳月がかかった。
私はこの再集結から3年という年月が頭では必要だったのだろうと理解はしていたが、音楽家でもなんでもない私にとっては、どうしてこんなにかかったのか、正直不思議だった。

だが、今回このアルバムを聴くと当時に、初回盤についていたDVDを観てものすごく納得した。
時系列で並べられたDVDは、あの歓喜の代々木からメカラウロコFINALまでを追っていく。それを観ると明らかなのだ。

「彼らの、THE YELLOW MONKEY のグルーヴ」が確かに育ち成長し、更新されていくのが。この時間が彼らには必要だった。
現時点最高の NEW ALBUM を完成させるために。
1年前でも1年後でもこの完成度、この成熟度、そして未来を感じさせるアルバムは出来なかったのではないだろうか。

それほどにこの「9999」は奇跡と呼べるほどのものに仕上がっている。

「9999」のジャケットを見たとき、惑星のようだなと思ったが、あれは実は「ビッグバン」なのかなと思うようになった。それとも膨張しつづける宇宙?

アルバム曲は全くの新曲と今までの既発曲を交互に並べられている。
最初は、どうなんだろう。と思っていた。というのも、ラジオなどで「新曲」のいくつかを聴く機会があり、その一つ一つがあまりにも素晴らしかったし、そこにはLAで録音されたという共通点もあり、色も似ていた。だが、既発曲とはあまり類似点がないように思っていたからだ。

だが、メンバーは口をそろえて、
「この順番こそが素晴らしかった」「見事につながった」
と自信を持って話していた。それについて私は懐疑的に思っていたのだ。

結果、メンバーは正しかった。

「新曲」と「既発曲」は、確かに色が違ったかもしれないが、1曲1曲のエンディングの余韻が、見事に次の曲にはまっていくのだ。この化学反応には素直に驚いた。 隣り合わせた曲どうしに意味があるとも思えないのに、そこには何かしらのマジックが存在していた。
圧巻は「ALRIGHT」からの「I don’t know」。見事としか言えない。心の琴線にかかりまくる。気が付くと涙が流れていた。 

新曲の話をすると、「この恋のかけら」の美しさはかなさ、ベースがメインボーカルのようでエロティックな歌詞が彼らの王道というべきか、「Love Homme」。

とにかくエマのギターソロが美しすぎる「Breaking The Hide」。彼にとっての神ギタリスト、マイケル・シェンカーのそのギターは弦が少し錆びていたというが、とても信じられない。歌詞に至っては、バンパネラの不死を憂いていて、「ポーの一族」のエドガーの歌かと思った(萩尾望都作 少女漫画)。

Queen を彷彿とさせる「Changes Far Away」で、ロビンはこう歌う。

 「愛だけを支えにして ここまでなんとか歩いてきたんだ」 (吉井和哉)

これは男女の愛というより、バンドへのメンバーへの愛のように思えるのは私だけだろうか。
 
「Titta Titta」では、楽しそうな音楽で孤独な少女をなぐさめる

 「一度限りの人生さ 可愛い笑顔見せてごらん」 (吉井和哉)

この曲にはトランプのマークが出てくる。
今度のライブの仕掛けはここからだろうか?

新曲の中で特筆したいのは、「Balloon Balloon」。
軽快な8ビートの曲に、ロビンの艶やかなボーカルが映える。私が今回のアルバムで一番好きな曲だ。アニー曰く、ドラムを削いで削ぎまくったら、歌が生きたという。まさにそこだ(もちろんドラムが邪魔なわけではない)。そしてその歌詞がとことんいい!

 「いつかは誰もが風に吹かれて 全ては若いせいだと笑う」
 「愛をまやかしと言うのなら この世界は生きてるだけの場所」
 「花びらみたいな君の匂いで あと少しだけ ここにいさせてよ」
                      Balloon Balloon  吉井和哉

どの言葉も胸を刺す。そして静かに染み込んでいく。
これが8ビートで語られるのだからたまらない!
これこそ「THE YELLOW MONKEY」というジャンルなのだ。

これらの楽曲が既発曲の持つ、圧倒的な存在感と絡み合って、「9999」の中であふれて、こぼれそうになっている。私たちは吸い込まれていき、そして彼らはどんどんと広がっていく。宇宙のように。

私は常々、「どうしてこんなにイエローモンキーが好きなのだろう。」と思うことがあった。
もちろんビジュアルも好きだけど、そんなことだけで、これほどに、人生をかけてしまうほどに好きにはならないだろう。

それが最近、わかったような気がする。

まず、ロビンの声から全ては始まる。彼の声は、少し甘く、尖っていなく(ハスキーではないとも言えるかも)、丸い感じがする。
エマのギターも尖っていない。とかくロックのギタリストの音は尖っててシャギシャギしてるのだが、エマのギターは音の粒の一つ一つが丸いのだ。
ヒーセのベースは、メロディを奏でてしまうくらいだから、当然尖ったりしない。これも丸いのだ。
最後にアニーのドラム。彼のドラム、特にスネアの音が子宮に反応する。刺さったりはしないのだ。人柄が出ているのかも?

彼らがたった4時々5(ロビンがギターを弾く時)の音だけであれだけでのボリュームと深さが出せるのは4人の音が大きな丸だからだ。そしてそれはバルーンのように膨らんで、世界を作っていく。彼らだけが創造できる世界、宇宙を。
また、このアルバムでは、ハンドクラップがよく登場する。4人自身がクラップしてるのだ。
「Stars (9999 Version)」でハンドクラップが聞こえたときはビビった。
なかなかこれがいいのだ。BEATLESかと思った(笑)。4人がニコニコしながらのハンドクラップが輪をかけて楽曲に丸みを帯びさせていてる。

鋭角で尖った印象が強いロックにあって、かなり異色かもしれないし、ご本人様たちは不本意かもしれない。だが、私自身の感覚ではこうであり、そういうところが、私の心を捉えて離さないのだ。

極めつけはロビンの歌詞だ(Horizonではエマが見事な詞を完成させたが)。
今回のアルバムの曲にも数え切れない美しく、心に刺さる歌詞がある。言葉は容赦なく心を刺してくるから凄い。ただし、痛くはない。涙することはあるけれど。

 「最後はどこへ帰ろう うちへ帰ろう 土へ帰ろう 海へ帰ろう」
            Breaking the Hide 吉井和哉(この曲はエマ作曲)

彼ら4人の存在、楽曲、音楽は、宇宙を創る。

この19年ぶりの NEW ALBUM 「9999」は、その宇宙観をこれでもかと魅せてくれる。

これだけの長い時間待ったかいのある、彼らにしか生み出せないアルバムだ。
 
できることなら、初回限定盤のDVDも観てほしい。
ここまでたどり着いた彼らの生き様、音楽への真摯な態度と思いが伝わるから。

さて、もう2週間も経たないうちにツアーが始まる。
彼らはまだまだ進化していく。留まることはない。

そして私たちは引き込まれ続ける。
それが運命のように。

また生きていけると、思える。彼らの存在が私を生かし続ける。

THE YELLOW MONKEY という名の宇宙。

彼らの宇宙に住まうことを許される限り、ここにいさせて。
 

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