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いつか僕に飽きても

すべて[ALEXANDROS]に見透かされていた話

例えば、「一発屋」と呼ばれるコメディアンの定番ギャグや、

あるいは、「○○系女子」といったコピーに促され毎年移り変わるファッションには、ある共通点が存在する。
 
 

『飽き』。
 
 

世間に浸透しすぎた流行には、この『飽き』が必ずおそいかかる。
 
 

ソーシャルメディアの発達以降、流行の転換速度は文字通り、我々の目にもとまらぬ速さで、タイムラインの彼方へ消えていくようになった。
 

こと音楽やバンドに関しても、「今日のライヴやばすぎ!!一生ついてく!!」と絶賛していたファンが、1年後にはすっかり心変わりし、別の誰かに向けてまったく同じツイートをしてるなんてことは当たり前にある世の中だ。
 
 

決してそれが悪いと言いたいわけではない。盛者必衰は世の常で、今日飲んだ新作タピオカのことだって、明日にはきれいさっぱり記憶のそとかも知れない。その繰り返しが現代を生きる我々にとっての『普通』なのである。
 

自分のコントロールの及ばない範囲のことについて考えるのは、あるバンドの歌詞を借りるならば、きりないないからええよもう~、という感じだ。
 
 

ところで、
 
 

[ALEXANDROS]は、私がこうして音楽、特にロックというジャンルを掘り下げて聴くようになったきっかけを作ったバンドだ。
 

2013年、友達に勧められて見た『Kick&Spin』のMVを見たことがきっかけで、当時はまだ[Champagne]名義であった彼らを好きになった。
 

初めてライヴハウスに足を運んだのも彼らのライヴを見るためだった。
 

ライヴのあいだ、人にぶつかられた。頭のうえを人が転がっていった。首を痛めた。シャツの袖が破れた。気に入ってた服は汗まみれになった。

狭くて、暗くて、周りには汗をかいた人間のにおいが終始漂っていた。
 

でも、はじめからおわりまで、私はずっと笑っていた。
 

ステージ上に輝くロックスターの鬼気迫るパフォーマンスと、何度も聴きこんだ曲が目の前で演奏される興奮。

こんなにしあわせで満たされる場所はほかにない。自分のなかの幸せの定義が更新された日だった。
 

その日を境に、バンド名が変わろうと、周りに彼らを知る友人が少なかろうと、一生彼らを応援すると本気で思っていた。人生で初めての日本武道館ライヴは彼らにささげた。
 

当時の自分は、今の私がその武道館ライヴ以降、いっさい彼らのステージを目にしてないなんて、1ミリも信じないだろう。
 
 

ある時期を境に、彼らの新曲を意識的に聴く回数が減っていった。
 

理由はいくつかあるが、ひとつはリリースされるたびに様変わりする新曲に自分のテイストが合わなくなっていたこと。

もうひとつは、彼ら以外にも、私の心をとりこにする優れたバンドたちに出会い始めたこと。
 
 

光の速さでスターダムを駆け上がる彼らに対し、なんとなく距離を置きたいような、昔付き合っていた恋人に新しい彼氏ができた時のような、嫉妬にも近い感覚を覚え、私は[ALEXANDROS]から距離を取った。
 
 

2018年11月21日、[ALEXANDROS]が自身7枚目のオリジナルアルバム『Sleepless in Brooklyn』をリリースした。

サブスクリプションサービスにも発売日と同日にアップロードされていたので、私は元恋人のインスタを覗くような気持ちで、Spotifyの再生ボタンをタップした。

既発曲の『Mosquito Bite』や『KABUTO』で、彼らの原点に立ち返ったようなロックを響かせつつ、ゆったりとしたダンサブルなサウンドが心地よい『LAST MINUTE』や『PARTY IS OVER』、

詩人・最果タヒ氏との共作で話題となった『ハナウタ』など、常に新境地を見せてくれる彼らの姿勢に懐かしさを感じた。
 
 

ヴァラエティに富み、それでいて各々が違った魅力を放つ曲たちが詰まっている、これぞ[ALEXANDROS]のアルバムだ。と、元恋人として誇りたくなる快作だと思った。
 
 

でも、アルバムを聴き終えた後、私はある一曲のことしか考えられなくなっていた。いや、詳しく言うならば、歌詞の一節が、脳にこびりついて離れなくなってしまった。
 
 

アルバムのトリとトリ前を飾るシングル曲『SNOW SOUND』、『明日、また』は”Encore”Tracks”という位置づけであることは、何かの記事で読んでいたので、実質アルバム本編の最後を飾る曲、『Your Song』。

作詞を務める川上洋平自身が、歌を擬人化し、曲視点で自らを謳ったナンバーだ。
 
 

川上は以前から、「曲を作るのは自分だが、リスナーの手元に渡った瞬間からそれはリスナーの曲になる」といった趣旨の発言を何度もしてきた。

つまり、私が曲に対して抱いた感情、感想、想像、そのどれもが作詞者である川上の想いと如何に乖離していようと、構わないということだ。

さらに噛み砕くならば、この『Your Song』、『Sleepless in Brooklyn』に収録された全曲、現在までに[ALEXANDROS]が発表してきた全音源は、『私の歌』だということなのだ。
 
 

その『私の歌』が、こんな風に歌っている。
 

“いつか僕に飽きても

時々口ずさんでね

I’ll be by your side because I am your song(僕は君のそばにいるよ、だって
僕は君の歌だから)”

(Your Song/[ALEXANDROS])
 

曲を聴き終えたあと、疎遠になってしまったかと思われた[ALEXANDROS]と私の関係が、いっきに修復されるような、解放感とも爽快感とも安堵感とも似て異なるような、名前のない感情が生まれた。
 
 

あぁ、彼らは、彼らというのは[ALEXANDROS]の曲たちのことだけれど、私がいつか彼らに飽きてしまうかもしれないことなんて、とっくにお見通しだったわけだ。
 
 

そんなことすら見越したうえで、それでもなお、私のそばにいてくれると、歌っている。
 
 

ツアーごとにライヴへ足を運ぶ関係ではなくなっても、発売日にCDショップで出会う関係じゃなくなっても、それでも良いと認めてくれている。
 
 

元恋人と別れた数年後に再開して、当時の愚痴や不満を言いあいながらも、お互いに現在の自分を認め合えた時のような、そんな感じだ。

僕らは、以前のように、感情をぶつけあうような関係に戻ることは、二度とないのかもしれない。
 
 

それでも、たまに過去を思い出しては、「元気にしてるかな」と気にかけるような、たまに口ずさむ昔すきだった歌のような、そんな関係になれた。それでいいじゃないか。
 

ほんとは、元恋人とも、こんな風な関係になれる日が来ることを、心の隅の方で思っていたんだろうな。と、まったく別の問題も解決した瞬間だった。
 

こんな風にして、私の青春の1ページに筆圧の濃い油性ペンで書き殴り、一生忘れられない存在として残る[ALEXANDROS]。
 

ずるいっすわ。
 

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