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2017年5月31日

新井ヒサコ (51歳)
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ウルフルズのライブに行こう

愛すべき人間のバカヤロー達へ

ウルフルズの新曲「バカヤロー」がとても良い。
そのプロモーションのためかウルフルズがテレビに色々出演しているのを見て、最近これに近い感覚を覚えたのは何だったっけ?と暫く記憶を探っていた。
ウルフルズのライブには何回か行かせてもらっている。いつでも全力で歌い、楽しそうに演奏をし、客席から笑顔を引っ張りだすような工夫をたくさんしているから、帰るときは日々の澱みたいなものを綺麗さっぱり洗い流して、満面笑顔でみんな帰るんである。
誰か「あーもうやってられないです!」っていう人がロック好きなら漏れ無くウルフルズのライブ行ってみない?と誘ってみることにしていたりする。
最近やっているのかわからないけれど、アホアホパワーのAAPを全員参加で身体で表現するのも(やらないと許してくれない)、アンコールで「みんなトータスに会いたいか!」と言うウルフルケイスケの掛け声と共に、手拍子しながら「トータス!トータス!」と何度も呼び込むのも、それに応じて後ろ向きに後ろ髪を引かれるように?茶目っ気たっぷりに入ってくるトータスを迎えるお約束も楽しい。鳴らしている音楽も、音楽の原点の”鳴らしてみたら、音楽にノッてみたらなんか楽しくない?”っていうコアな部分に忠実に素直に純粋さを突き詰めているんじゃないかと思う。

音楽の魔法を操るひとはそれぞれ多種多様だけど、ウルフルズの魔法は”楽しさと優しさと人情”なのかなあと思う。
というのも、最近感じた同じような感覚は、あれだ、と思い出したからだ。
やはりテレビでやっていた落語。
泥棒が盗みに入って風呂敷に着物をまとめて背負ったところに旦那が帰って来てしまう。慌てて風呂敷を居間に残し、台所の漬物の側に身を隠して様子を伺っている。旦那は奥さんが居ないので居間に座り、大きな風呂敷はなんなのか不思議に思って中身を確かめると自分たちの着物がゴッソリ出てくる。
旦那はここで、奥さんが浮気をして着物を売り飛ばして出ていくつもりなんじゃないかと早とちりして怒り出してしまう。そこに奥さんが帰ってきて喧嘩になりどんどんエスカレートしていき、見るにみかねた泥棒が…という話だった。
とにかく笑っちゃう。泥棒はすっとぼけているし、奥さんはいじらしいし、江戸時代?の市井の人々の暮らしが生き生きと愛らしく語られている。
落語の楽しさはこの人間のおかしみとか愛らしさを日々の普通の暮らしから立ちのぼらせるところじゃないかなあと初心者の私は思っているのだけれど、ウルフルズのやっていることはこれに近いような気がする。
とにかく人間が大好きで、生きているだけで全肯定。

“情けなくても ええねん 叫んでみれば ええねん
にがい涙も ええねん ポロリこぼれて ええねん
ちょっと休めば ええねん フッと笑えば ええねん
それでええねん それでええねん”

「ええねん」とにかく全部歌詞がいいのだけれど、この間アーメンがええねんに聞こえるからそういう歌詞を書いてみたとトータス松本が言っていたのには驚いた。面白いし、それになんと許されている曲なのかと思うと余計に。

今回のアルバム「人生」は正にウルフルズのライブの楽しさを1番近い感じにパッケージしたように感じるし、そこここに優しさと人情が顔を出している良いアルバムだなあと思う。
ロックはもちろん、ソウルフルな歌声が映える演歌調やR&B、ブギ、バラードと盛りだくさんである。

ウルフルズはベースのジョンBが脱退して戻ってきたり、その後解散して再結成したりしているのだが、それは明るいキャラクターの裏で、4人とも凄く真面目で自分に厳しくて人に優しい人達だからだと思う。50年近く生きていればどれだけ運が良くても、どれだけ明るい性格でも、思いもしないようなひどい目にあったり絶望するようなことに遭遇したり、無傷でいられるような人は誰もいないし、自分の無力さにのたうちまわることだって何度もある。
ウルフルズは、思うようにできない歯がゆさや、人を笑わせる前に自分が笑えないような事があったりして一回解散したのだと思う。たぶん。自分たちへの厳しさゆえに。
そのウルフルズがデビュー25周年に出した最新アルバムは「人生」で、先行シングルは「バカヤロー」だ。
人生を一歩一歩踏みしめるようにミドルテンポで始まるこの曲は、自分の今迄の人生を思い出して咀嚼しているようでもあるし、これからの人生を見据えて力強く踏み出しているようにも聞こえる。いろんな事を経て自らの足で立ち上がり、身近な幸せに気づいてそれを拾い集めたウルフルズそのまんまをぎゅっと凝縮させた名曲だと思う。
リズムから、音から、声から、行間から、泥臭くて不器用だけれど優しくて温かい、苦しい中から歩き出してきたしなやかさが溢れてくる。

“夢なんかクソ食らえ 胸が張り裂けそうで
なのにワクワクさせられ 時に地団駄を踏み
明日とかふざけんな いつも自分を疑い
涙ポロポロ泣いて いつか誰よりも笑う”

“人生のバカヤロー 夢なんかじゃない
笑いながら 泣きながら 道なき道をゆく”

全編引用したいところだが、トータス松本の腹の底から胸の中から吐きだされる素晴らしい歌声とウルフルズの演奏と共に是非味わって欲しい。

ところで個人的に、この曲の「夢」について、この曲を聴いてからあれこれ考えている。
大人になったら夢を捨てるんじゃなくて、むしろ積極的に見ていくべきじゃないかなあと思っていたところだからだ。日々の慎ましい暮らしの中で見つけるささやかな幸せも「夢」だし、荒唐無稽な現実的じゃない夢もまた「夢」だ。
前者の「夢」は日々の雑事で忘れがちなことを思い出さなきゃと思うし、後者の「夢」は、夢はまず設計図を描く事だけでも素晴らしいことだと思っている。
空を飛ぶという荒唐無稽な話を現実にしたのは設計図を描いた人がいるからだ。アイデアを思いついた人がいるからだ。
洗濯機を作ったのも電車を走らせたのも。
今現実にならなくても、結果が出なくても、努力が報われなくても意味がないわけじゃない。夢は自分だけのものじゃない。後進の誰かがアップデートしていつか現実にしてくれたりする。
想像で夢のような世界を思い描き、きれいな原石を心の中で磨くのは大人になってからでも全然遅くはないと思う。むしろ、若い人達に少しでも楽しい時間を、夢を残すためにも夢を見たいなと思ったりする。少しでも自分達が進められるところは進められたらいい。
出来ることは例え些細なことでも、中途半端でも。
だから、夢なんかクソ食らえ、と私も呟きながらウルフルズ聴きながら、もう少し頑張ってみよう、そんな風に背筋を伸ばしてみる。
またウルフルズのライブに行って、楽しんでこよう。
皆さんも、ぜひ、一回ウルフルズのライブに良かったら行ってみてください。

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