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ヒトリエと、ひとりの元高校生の話

wowaka氏の一報に寄せて

 
とにかく、自分を整理するためにこの文を書こうと思う。
 

私には大好きなロックバンドがいる。彼らは自分たちを『ヒトリエ』と名付け、音楽を鳴らし続ける4人組である。私と彼らの出会いは高校生2年生の夏休み2日目、夏季講座へ向かうのために揺られるバスのなかだった。YouTubeであなたへのおすすめと銘打って流れるその音楽は私の知らないものだった。未知で衝撃で、何よりもわくわくした。あの時の、まるで穴に落ちたような感覚を私は忘れることができない。それからというものの私の生活のなかにはいつでも彼らの音楽があった。狭苦しい通学バスはウォークマンとイヤフォンさえあれば彼らのライブ会場になった。化学のテスト中にどうしてもセンスレス・ワンダーのサビが頭を離れなくて苦しんだ。彼らのCDを買うために何度昼食を購買の1番安いパンで我慢したかはもう覚えていない。MVが公開されたとなれば、通信制限を恐れながら携帯使用不可の教室でバレないように1度だけ再生した。

ライブにも行った。大学受験で9ヶ月我慢し続けたあとのライブだった。解放の一発目はヒトリエとずっと決めていた。3月10日、彼らは間違いなくそこにいた。マイクを通さない肉声を初めて聞いた。飛ぶ汗を見て生きているのだと思い知った。お客さんの笑顔が綺麗だった。私も顔をくしゃくしゃにして笑っていたと思う。自分の生まれ故郷に来てくれたことが嬉しくて。彼らが生きていることを実感出来たのが感動して。大好きなあの曲を聴けたのが嬉しくて。
 
 

そんな幸せな思い出は今からたった一か月前のことだ。
 
 

あの一報を聞いた時、ふっと頭の奥が冷めるような気がした。涙は出ないままで手持ち無沙汰に近くに転がる上着を握りしめていた。信じられるわけがなかったのだ。だって彼は目の前にいたのだ。あの時生きていたのだ。生命力に形を与えたような人だと確かに思ったのだ。YouTubeを開けば彼らの音楽はそこにあるのだ。CDラックを見れば彼らの名前が並んでいるのだ。一人でいるのに耐えられなくて、進学のために移り住んだよく知らない街をふらふら歩いた。その時だってヒトリエの曲を聴いていた。今聴かなくては一生聴けなくなるような直感があった。それだけは絶対に嫌だった。
やっぱり彼らの音楽はまだここに残っていた。
 

あの一報からもうすぐ2週間になる。涙を流すことはもうなくなった。辛くて曲を聞けなくなるなんてこともなかった。新生活にも慣れた。友だちも出来た。一人暮らしも様になってきた。洗濯も覚えた。どこのスーパーなら何が安いかも分かってきた。私の生活は少しずつ安穏を取り戻した。
 
 

でもやっぱり心のどこかで吐き出したくて仕方なくてこの文を書いた。
 
 

wowakaさん、貴方の音楽は間違いなく私の希望でした。知らなくたって生きてこれたかもしれないけど、生きてて良かったと思う数が増えたのは貴方のおかげです。どうにも上手くいかないこと、届かない目標、目を背けたくなるような模試の結果、センター試験、二次試験、面接、その全ての隣にヒトリエの曲がありました。2月27日を何よりも楽しみに全てを乗り越えました。第1志望の合格発表は不安をかき消すためにポラリスを大音量で流しながらサイトを開きました。合格の喜びをヒトリエのライブで放出しました。HOWLSは本当に最高のアルバムです。大好きな曲が増えたことが嬉しいです。やっぱりまだ信じられません。貴方がもういないことを腑に落ちる日が怖いです。まだ質の悪い夢なんじゃないかと思ってしまう自分がいます。もっと貴方の音楽が聴きたい、聴きたかった。
 

それでも、貴方を知れたことは何よりもの喜びです。今どれだけ苦しくても、泣いても、怖くても、貴方を知らなければ良かったなんて言いたくないのです。そんなことしたら、確かに貴方に救われていたかつてのひとりの高校生を否定することになるから。そのひとりの高校生にとって貴方はとても強くそれ以上に暖かい光源でした。

本当に、音楽を鳴らしてくれてありがとう。私はこれから何度だって貴方の音楽に救われます。苦しいことも悩みも不安も全部かき消すくらいの大音量でヒトリエの曲を流し続けます。誰の曲かと聞かれたら笑顔で貴方とヒトリエのことを伝えます。

だからあと数十年、力を貸してくださいね。
 
 
 

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