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SOUL’d OUTは3年ごとにぶり返す

耳から離れない『Catwalk』についての話

SOUL’d OUTほど、定期的に「ぶり返す」ミュージシャンはいない。自分だけの症状だと思って検索すると、みんな同じことを言っているから面白い。っていうかインターネット文化とSOUL’d OUTの異様な親和性は何なんだ。
 

私の場合は2年ごとにSOUL’d OUT禁断症状が来るのだが、そのきっかけが何であるかなんて、そんなことはどうでもいい。テレビでやってる平成振り返り特集で『ウェカピポ』が流れたとか、歩調のテンポが『To All Tha Dreamers』にぴたりと合ってしまったとか、そんな理由でSOUL’d OUT中毒はぶり返す。
いちどぶり返したら、満足するまで聴くしかない。ダサジャケット日本代表みたいなあのアルバムを引っ張り出してきて、勉強中や通学中にひたすら聴く。歩いていたらDiggy-MO’の幻聴が聞こえてくるまで聴く。SOUL’d OUTを知らない人には「幻聴って何だよ」って話だが、いちどでも中毒に陥った経験がある方ならばきっと心当たりがあるはずだ。
 

今日、私が言いたいのは、「SOUL’d OUTって、めちゃめちゃ良いよね」って話だ。同業者からは好かれなかったグループだとか、ダサいとか、評論家ウケが悪いとか、そういうのはどうでもいい。クイーンだって評論家ウケは悪い。私が好きなんだから良いグループに決まってる。そういう気持ちを持って行こう。
 

SOUL’d OUTの良さは、端的に言って「曲の良さ」だ。楽曲ごとのコンセプト(あるいは世界観)が明瞭で、声質や音楽が耳障り良く、特定のフレーズがめちゃめちゃ頭にこびりつく。これらはキラーチューンの多くに共通する要素で、ようするにSOUL’d OUTは、よく売れる曲の要素をしっかりと踏襲した上で、きちんと個性を出している。

そういう商業的姿勢は同業者に批判されたようだが、消費者たるこちらとしては有難いことこの上ない。誰の耳にもわかりやすいのは良いことだ。いくら批判されようが、この世の中は資本主義なんだから、結果としてよく売れたならそれは正解といえるだろう。
 

SOUL’d OUTは似た曲が多いと言われているが、それは裏返せばどの曲もクオリティが一定以上で保たれているということであり、語彙と曲調の好みの差で、好きな曲は各人けっこうバラける。

『ジョジョの奇妙な冒険』のファンならば『VOODOO KINGDOM』は大鉄板だ。漫画の登場人物をイメージして作られたこの曲、全体のテンションやバランスが凄い。読者がイメージするキャラクターのそのものだ。歌詞なんかもう大好評で、血だの愛だの破壊欲だの霧の都だの、ファンが入れて欲しい語彙を全部盛り込んだ上でキャラクターを独自解釈する手腕はお見事だ。曲の作り手がまず作品のファンでなくては、こうまで他のファンが納得するものは作れない。
 

そういうオタク大納得のものを作れるグループだから、「Dream Drive」みたいなイケイケパリピ曲でもオタクは離れない(にしても「パリピ」って言葉が平成で死語になりそうなことには驚く)。SOUL’d OUTのポテトは塩が足りないらしい。あれは「塩」と「潮」をかけて「浜辺でのドライブ」を表現してるのだろうか。洒落てる…のか?
 

SOUL’d OUTの曲は、素直で純粋な明るい楽曲と、一筋縄ではない捻りのある曲の2タイプに分類できる。
よりSOUL’d OUTというグループの「らしさ」が出ているのは後者だ。サウンドにも歌詞にも小技の効きまくった『ルル・ベル』は毒花のような色気があり、ギターの音色が鮮やかな『Magenta Magenta』は音楽に強烈な色彩感が伺え、『TooTsie pOp』も、ベタベタと見せかけ、想定外の展開を見せたりして、まあ音楽の幅と引き出しが広いこと広いこと。そしてどれも強烈に耳にこびりつく。
 

その中でも私が個人的に愛してやまないのが、パパラッチの視点からスーパーモデルを歌った『Catwalk』だ。
この曲はすごくかっこいい。これぞSOUL’d OUTの真骨頂、って思ってる。もうなんか、冒頭のカメラのシャッター音のSEの時点でめちゃめちゃかっこいい。
 

この曲は、なんだか妙に既視感のある70年代ハードロック風のギターリフで始まる。スーパーモデルの曲にハードロック風のリフという発想は、あるようでなかなかない。だがこのリフや、それに続くやたらと重いドラムが曲の随所で鳴ることによって、全体をぐっと引き締め、更には退廃的な空気や煙草臭さを醸し出してくれるのだ。

そこから聞こえてくるDiggy-MO’と女性の会話は、よく聴けば大したことは言っていない。Diggyがナンパに失敗してるだけで、まあ見事に失敗してるからちょっと笑ってしまう。だが、ナンパされてる女性の声の上品な色っぽさといったらこの上ない。
ちなみに冒頭の女性は、2番で笑い声が、後半の「クリスタル広場で」のところでも囁き声や吐息が聞こえるから、ぜひ音量を上げ、じっくり聴いていただきたい。
 

『Catwalk』とはファッションモデルの歩くランウェイのことだから、 「タイトル」「カメラのシャッター音」「上品な色っぽい女性の喋り声」という冒頭の3要素だけで曲想は理解できる。そして以降の楽曲は、特定のひとりのスーパーモデル(冒頭で喋っている女性)について、その美しさを賛美している内容になる。
この曲の面白いのは、歌詞が徹底して「スーパーモデルを追いかけるパパラッチ」という立場で書かれており、そのストーリーに沿って2人のMCがそれぞれに演技をしているところだ。

Diggy-MO’は一貫して「名の知れたパパラッチ」の役を演じている。普段は超人的な滑舌は、この曲ではむにゃむにゃとした雰囲気に控えられていて、それは舞台脇からコソコソとランウェイを撮影していることの表現だ。
彼は目をつけていたスーパーモデルに「カーテンの向こう」へ招き入れられ、それまで追っていた「ケイト」や「エマ」というスターたちよりも強く「彼女」に惹かれるようになり、やがて思いを遂げる。

彼の立場は、最初こそ「彼女」を自分のコレクションのひとつにしようとしていたようだが、次第にへり下るようになり、「目線も下さい」から「アナタを下さい」まで歌詞が変化していく。歌詞に敬語表現が散見されるのも、「彼女」と彼の立場を表現する重要な要素である。

後半部分で登場するBro.Hiは、Diggyとは対照的に「彼女」を皮肉っぽく煽り立てる。お調子者の感じがよく出た軽い口調のラップだ。こちらの彼はパパラッチというより、まくし立てるように「彼女」へ質問を投げかけるあたり、芸能記者の雰囲気がある。
 

2人のMCはそれぞれ声質、滑舌、テンポの取り方や言葉のハメかた(フロウっていうのはこれのことだろうか?)の面でも個性的で、SOUL’d OUTはその個性を上手く活かした楽曲作りを得意としている(それ故にカラオケで歌えない曲ばっかりである)。互いに名乗りを上げてラップを披露したり、ラップの中に自分の名前を入れ込んだりしているから、それを聞き取ってニヤリとするのもSOUL’d OUTの楽しみ方、というかこの手の音楽の楽しみのひとつだ。しかしあの超高速ラップ、LIVEでも再現してるんだからヤバすぎる。

しかし、『Catwalk』のような演劇的役割分担がされた曲はそう多くない。声質の関係でDiggyのほうが兄貴分っぽいから、Bro.Hiパートが「兄貴分に煽られて出てきた弟分」っぽく聞こえる人はいるだろうけれど、多くの曲では地続きの歌詞を地続きに歌っていたり、同じ事象や世界観に対してそれぞれの視点や語彙で歌っていたりするだけだ。
だから『Catwalk』は面白い。曲の展開もラップもそこまで複雑ではないけれど、よく聞けば、実力とグループ特有の音楽性、そしてグループの長所がよく表現された曲なのだ。
 

スーパーモデルの「アナタ」を賛美する歌詞は非常にデンジャラスだ。聞こえるところだけ抜き出せば「子ネコ系」だの「夢の街ミラノ」だの「クリスタル広場」だの、なんだか面白くて連続性の無い単語が並んでいるが、歌詞を読み、英語部分を和訳すると、露骨に性行為を表現していたりする。
この曲においては、聞こえる部分の刹那的な歌詞は「世界観説明」、聞き取りにくい英語部分が「心情説明」だ。聞き取れる単語のひとつひとつには煌びやかで闇のあるショウビジネスの世界を象徴する「役割」しか無い。しかしその合間に叫ばれる英語歌詞には「本心」がある。しかもけっこう過激なことを言ってたりする。
 

これはまあ、理性と本能、本音と建前の表現なのだろう。尺が同じくらいの曲と比べ、単語数が3倍くらいあるSOUL’d OUTでは、1曲に2曲分の歌詞を盛り込める。そして「日本語で聞き取れる部分では情景描写、英語部分では心情描写」というのは『VOODOO KINGDOM』でも類似の表現が見られたものだ。そちらの楽曲では、「いかにもキャラクターのイメソンっぽい部分やセリフっぽい部分」が英語になっていることにより、ファンがそのキャラクターの口調で歌詞を翻訳して楽しむことができた。英語アニソンの可能性の広がりである。更には英語部分の言葉遊びを活用し、漫画中のセリフや叫びをそのまんま「言っちゃう」んだから、ファンとしては最高だ。
それを意識して聴くと、「本心」部分と「建前」部分では歌い方も変わって聞こえる。
 

そうやって作り込まれた歌詞に加え、この曲はトラック(バックミュージック)もバッキバキだ。何なんだあの重いギター。なんなんだあのリフの使い方の巧さ。やたら格好いいベースラインの上に鳴り続ける都会的なシンセは推進力が強く、やや腑が抜けたパーカッションはハイヒールの足音のようで。Bro.Hiパートのバックで流れる左右に振れたギターなんてハードロックでもそうそう聴かないキツめの半音階だ。この「半音階」っていうのがまた、悪魔的でイイ。半音階というのは西洋音楽史では現代音楽にならないと習わないくらい、現代的なものなのだ。

そして、フック(サビ)部分のメロディの作り方。これはマジで面白い。やたらと印象的に繰り返される「美脚」というワード。どこまでもストレートな単語は毒っ気たっぷりで、それを歌う2音の単純なメロディはランウェイを踏むハイヒールの歩調を想起させ、『STEP INTO YOUR WORLD』という歌詞で、ランウェイを歩く歩調に聴き手のイメージを固定させる。その上でメロディをオクターブずり上げ、カメラワークを足元から顔まで舐め上げているのだ。だから「美脚」の後には「目線」という歌詞が来る。
この「メロディで舐め上げる」アイデアには感動した。こんなのアリかよ!アリだわ!って感じだ。めちゃめちゃ素敵でカッコ良い。

歌詞と音楽によってカメラワークを表現する。それは「ラップ」としては奇妙な技巧かもしれないが、「音楽」として秀逸、格調高いクラシック音楽でも頻繁に見る冴えたやり方である。バレエ音楽などでは動作に関連した奏法やメロディが差し込まれるが、この曲のそれはまさにその手法だ。
更にはこの曲、音の重なり方もリッチな雰囲気に満ち溢れて、それでも時折差し込まれる固有名詞や人名により、退廃的な空気は損なわれていない。そういう語彙や音楽による世界観構成の妙は、SOUL’d OUTの楽曲全体に共通する特徴で、見習わなければならないポイントである。世界観に合った語彙と音楽選びは、意外と疎かにされるものだから。
……でもさ、「スーパースラッと」って何?
 

地盤のしっかりした音楽、都市的なエッセンス、そしてラップ。この3つを重ねて表現する華やかなファッションショーの世界はどこまでも煌びやかで、そして陰がある。その色彩が目に浮かぶ。これは「上手い」としか言いようがない。
そう見ていくと、SOUL’d OUTは「ラップが好き」な集まりというよりは、「音楽が好き」な集まりなのだと思う。表現技法としてラップを用いているけれど、その根底はあくまでロックやポップス、感情面と理論面が離せないほどに結びついた音楽だ。だからこそSOUL’d OUTの評価には、「ヒップホップとしてはどうか」「ポップスとしてはどうか」という対立意見が生まれてしまう。
しかし、その「どっちつかず」なところが、SOUL’d OUTに唯一無二の個性をもたらした。彼らが売れた理由は実に明白。音楽の作り方が上手いからである。それはSOUL’d OUTのもつ最大の武器であり、「ダサい」「こんなのラップと言わない」という批判への抵抗手段であった。
 

何が正しくて、何が正しくなくて、何を信じるも、信じないも、はっきり言って、わかってるひとなんてほとんどいない。それはアーティストや評論家でも同じことだ。高名な映画評論家が作った映画が大コケすることなんてよくある話じゃないか。
ただひとつだけ「正しい」ことがあるとすれば、あなたの耳によく馴染み、あなたを歌わせてくれる音楽は、あなたにとって絶対的に正しいということだ。
SOUL’d OUTがダサいかダサくないか、白か黒かの判断をつけるならば、正直言ってダサいんだと思う。少なくともMVはダサい。けれど私の耳には、SOUL’d OUTはあまりに楽しい。いろんな音が聞こえて、聞けば聞くほど様々な理論が見つけられる。ネオン街を冒険しているような気分で、音楽を楽しめる。そんなミュージシャンは、たくさんいるわけじゃない。「好き」なミュージシャンは多々あれど、愛聴し、毎日の通勤通学で聴く音楽の数は少ないものだ。その中に、SOUL’d OUTは存在する。
だから私は胸を張って、「SOUL’d OUTって良いよね」と言う。何度でも言う。
 
 

さて、平成も終わりに近づき、新しい時代が暦の上でも刻一刻と迫る今。平成9年に生まれた私は、令和の社会人となるため、リクルートスーツに身を包んでいる。東京の街並みをヒールを鳴らして縫い歩くのに、SOUL’d OUTは持ってこいだ。歩いているだけで踊っているような気分になり、自分が大きくなった気もする。いや実際、ヒールが5センチあるから物理的にデカくはなってるんだけどさ。
いつでもどこでも音楽を持ち運べる時代に生まれた私たちは、音楽で着飾って歩く。次の時代の音楽はどうなることだろう。音楽業界は、市場は、消費の形態はどうなっていくのか。

でもまあきっと、良い時代になるだろう。
大丈夫、なんとかなるさ。

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