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邂逅ノ午前零時ノ先ヘ

変化を恐れないCIVILIANの可能性

先日リリースされたCIVILIANの新作EP「邂逅ノ午前零時」。
まねきケチャ、majiko、中田裕二といった他アーティストとのコラボレーション楽曲を収録したシングルだが、にもかかわらずとてもCIVILIANらしい色が表れている、というのが率直な感想だった。

本人たちが愛聴していたという椿屋四重奏の音楽要素を思わせる「campanula」は、そのメンバーでもあった中田裕二がプロデュースに回り、バンドの原点、あるいは源流にあった音楽性を浮き彫りにしている。
それはCIVILIANが、Lyu:Lyuという前名義で活動していた頃にきっと内側で育ってきたもの。
そしてその当時から歌われてきた鬱屈とした感情が「僕ラノ承認戦争 feat.majiko」で、まるでホームグラウンドに帰ってきたかのように遠慮なく大爆発している。コラボレーション相手は、ボーカルであるコヤマがナノウというボカロP名義で有名になっていた同時期に歌い手として活躍していたmajiko。

どちらも、CIVILIANというバンドが今この場所に立つために歩んできた過去を語る上ではきっと手放せないアーティストだろう。
そして同時に楽曲自体も彼らが歩んできたこれまでの流れを踏まえ、バンドの個性を遺憾なく発揮している。

しかし、CIVILIANは変化を選んだ。
鬱屈とした感情しか歌えないままではきっと誰にも届かないと考え、生まれ変わるつもりでバンド名をLyu:Lyuから今の名義に変え、そして前向きな歌を歌うようにもなった。その変化を歓迎しないファンも現実として出てきてしまうのは致し方ないかもしれないが、もしそういう人がいるならばその選択は間違いだったと声を出して言いたい。
その理由が、このEPに収録されているもう1曲のコラボレーション楽曲「I feat.まねきケチャ」だ。

アイドルグループとのコラボレーション。
そこだけを切り取って考えればこれは相当な英断といえるだろう。バンドがアイドルに楽曲を提供することはあってもそれはあくまでも「提供」であって「共演」ではないパターンが大部分だ。
しかし今回は完全に一緒に歌っている。これはバンドとしても新しい風を吹かせるための思い切った決断の証だ。
ところが、この歌はいわゆるアイドルソングとしてよく浮かびそうな前向きさ、華やかさがない。綴られているのはある男女の別れ。どちらかが何かを間違えたのではなく、緩やかに恋が終わっていくその切ない心情だ。
この胸を締め付ける感情は、まさしくLyu:Lyuという名義で彼らが奏でてきた当時の音楽からずっとあったもの。
今まで歩んできた過去に自分たちが大切に育ててきた個性を踏まえ、そこに「アイドルとのコラボレーション」という新たな要素を加えることで、大きな一歩の原動力を生み出したのだ。

その結果、2番ではポエトリーリーディングを大胆にフィーチャーすることで、丸裸の言葉で楽曲の持つ切なさ、悲しさをよりダイレクトにリスナーの心に投げかけてくる形になる。
バンドが理想として目指してきた「人々の胸に突き刺さる歌」が、新しい試みによってより深々と胸に突き刺さるのだ。
私はこのポエトリーリーディング部分でまんまと心を鷲掴みにされ、最後のサビで見事に涙を流してしまった。
なんて鋭利で、痛い歌なんだろう。これこそまさにCIVILIANであり、Lyu:Lyuなんだ。

変化、とは過去をむやみに否定するものではない。
今まで歩んできた過去があるから、それを受けてこれから将来どう変化していけばいいのか、その選択肢を無限に選び取ることができる。

バンド名を変えた。
音楽の中で語るメッセージの舵取りを今までとは違う方向にも向けた。
自分たち以外の誰かと一緒に楽曲を作成した。
そうして様々な選択肢を選んで変化しながらも、根底の部分は決して否定されていない。自分たちの軸がしっかり育っているから。
太い幹から様々な方向へ枝葉を伸ばすように、CIVILIANは自分たちを変える選択肢を恐れずに手に取って、その結果として見事な成果を、実をつけることができたのではないだろうか。

「邂逅ノ午前零時」。
他のアーティストに出会い、そして新しい何かが始まる時。
その先へすでに彼らは進んでいる。どんな明日が待っているとしても、決して歩みを止めることはもうない。
きっとその先には、また新しい変化の時が待っている。
そしてそこで彼らはきっとまた新しい実をつけ、大きな感動を私たちに与えてくれるだろう。
それはもしかしたら「変化」ではなく「進化」というべきものかもしれない。

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