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寄り添うということ

ダメな私の側にも、BUMP OF CHICKENの曲がいる

BUMP OF CHICKENのドームツアーが決まった。
前ツアー終了後も、次々と新曲をリリースしている彼等。沢山の曲が生まれているけれど、1曲1曲が強く深く、私達に届く。人間なら誰でも抱くであろう感情や、誰もが迎える生死を唄う藤くんの唄。それを一番輝くように奏で、届けてくれる4人のメンバー。歌詞もメロディーも、演奏もひっくるめて、カテゴライズできない、唯一無二の「BUMPの曲」だと感じている。
次のライブでは、おそらく、新曲が沢山聴けるだろう。初めて聴いた時から、すぐに自分の体験と重なり、涙無しには聴けない『Aurora』も、聴けるといいなと思う。楽しみ、なんて言葉では足りないぐらい、楽しみである。

他に、どんな曲を聴きたいかと想像してみると、浮かぶ曲がある。
『イノセント』だ。
BUMPの曲にも、前述の『Aurora』のように、すぐに自分のものになる曲もあれば、仲良くなるまでに、少し時間がかかる曲もある。『イノセント』は、私にとって、後者の代表である。

出逢いは約10年前、アルバムの収録曲の一曲として。
暗闇から語りかけるような、藤くんの声。決して激しいトーンではないが、私は、その歌詞に、(表現は悪いが)頭を殴られたような感覚になった。

【一人で生きていくもんだと 悟った顔
 一人でも平気な 世界しか知らない】

今思えば、図星だったのだろう。
当時の私は、一言で言えば「順調」だった。仕事面では、望んでいた児童支援の仕事に就き、一定の成果を上げていた。そのため、「もっと難しい事例を担当したい」「この程度の内容は、他所で対応してもらいたい」などという発言も、職場で通るようになっていた。
また、プライベートでは、専ら一人で趣味に没頭していた。友達がいないわけではないが、他者に合わせるのも、合わせられるのも抵抗があり、「感覚が合わない人といるより、一人で好きな事をしたい」と考え、実行していた。BUMPのライブに行く時も、一人だった。ライブ会場周辺では、楽しそうにお喋りをしたり、記念撮影をしているグループを多く見かける。それに少しの羨ましさはあったものの、無理して誰かを誘うぐらいなら、最初から一人でいい、と思っていた。

だから、藤くんに投げかけられた言葉が、すぐに受け容れられなかった。

また、こうも唄われている。
【君がどんな人でもいい 感情と心臓があるなら】

私は、自力で生きていくために、頑張っているという自負があった。もともと、恵まれた能力があるわけでもない。だけど、一人で生きていくために、仕事も、家の事も、努力をしていた。私のような頑張っている者に、BUMPの唄はエールをくれているのだと、思い込んでいた。
どんな人でもいいのか。恵まれている人とも、陰でずるい事をしている人とも、一括りにされちゃうのか。なんか、もやもやするな。
 

腑に落ちないまま、『イノセント』という曲とは、少し距離を置きながら、何年間かが過ぎていった。
そのうちに、環境は変わっていく。母の死。愛猫の死。不可抗力だった。そして、仕事も、配置転換があり、部下を持つ立場になり、全く思うようにいかなくなった。これまで私が切り捨てた仕事は、他の誰かがやってくれていた事、陰で様々なサポートがあったからこそ、やれていた事。それを初めて痛感した。見えてなかったものが、沢山あった。やはり私は、とても狭い世界を作り上げてしまっていたのかもしれない。
情けない。恥ずかしい。辛い。惨め。そんな感情にとらわれ、どん底まで気持ちが落ちた時、初めて、距離を置いていた『イノセント』が、スッと心に入ってきた。

【誰の声か どうでもいい 言葉と音符があるだけ
 ただ力になれるように 愛されなくとも
 君の側に】

【君がどんな人でもいい 感情と心臓があるなら
 いつか力になれるように 万全を期して
 唄は側に】

・・・どうやら、私に遠ざけられても、この曲は、待ってくれていたようだ。私がどうしようもなくなって、側にいてほしいと望む時が来るのを、文句も言わずに。自己主張もせずに。どんなに惨めでも、仕事がうまくいってなくても、醜い感情を持っていても、「そんな人には聴いてほしくない」、なんて言わない。どんな私でも側にいてくれるようだ。
ありがたい。
側にいてくれるうちに、涙が流れたり、その温度を感じたりする。そして、まだ体が動いていること、まだ感じる心があることに気付く。
あー、私はまだ、生きているな、生きていけるな、なんて思う。

これが、「寄り添われる」ということじゃないかな。

だとしたら、私の在り方は、違っていた。選り好みをし、狭い世界を作り上げて、切り捨ててしまったものや、見ようとしなかったものが、実は沢山あるのだ。本当は、一人で生きてこられたわけじゃなかったのに。
私も、この曲のように、寄り添える人でありたい。
あなたはダメ、こういう人なら面倒見るよ、というのではなく。
だって、誰だって、常にいい人なんていない、常に大丈夫な人なんていない。
私だって、寄り添ってもらって、こんなに力をもらったりする。
もっと周りを見よう。歩み寄ろう。必要な時に側にいよう。
そう思うようになった。
 

その後、仕事においては、より門戸を広くし、必要としてくれる人に応えられるようなところに、転職をした。
プライベートでは、BUMPのことを語り合える仲間ができた。好きなものを共有できるのは、やはり、楽しいものだ。

次のライブには、沢山のリスナー仲間と共に参加する予定である。以前、一人ぼっちで聴いた、そして、いろんな人に歩み寄るきっかけとなった『イノセント』を、今度は皆で聴けたら嬉しい、なんて思う。
 

ライブの日まで、こんな風に思いを巡らせて、楽しむけれど、BUMPのメンバーが、今演奏したい曲を演ってくれたら、それでいい、というのが行きつくところ。
私は、その思いに寄り添い、歩み寄り、最高の瞬間を作りたい。
一人よがりではなく、一緒に。
一人でできることなんて、きっと、ないから。
 

*【 】内は全て、BUMP OF CHICKEN『イノセント』より引用
 

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