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吉田山田

音楽という魔法

アーティストの音に触れた時、BGMとしてCDで聴きたい音と、ライブで聴きたい音というものが私の中にはある。今思えば、吉田山田との出会いはそのどちらでもない不思議なものだった。

私が彼らの音に初めて触れたのは、NHKのみんなのうたというコーナーだった。「日々」という曲で、おじいさんとおばあさんの何気ない日々を歌った曲だった。穏やかな日々を描いたアニメーションと、2人の最期の別れの瞬間を歌う温かく優しい声。ぼんやりと眺めながら、知らず知らずのうちに涙が溢れた。

その時見た「吉田山田」という名前に、何だか変なコンビ名だなあと思ったのは覚えている。

それきり忘れていたその曲に再び出会ったのは、TVの音楽番組だった。他のアーティスト目的で見ていたはずが、彼らが歌い出した瞬間時が止まり、あの日見たアニメーションの映像が思い出され、涙が溢れた。

この人たちはどんなライブをするのか。
ライブで聴いてみたい。
どうしようもなく、そう思った。

それから私は彼らのライブに行くようになり、仲間も増えた。
彼らの音楽が繋げてくれた人たちは、生きることに一生懸命でとても温かい人ばかりだった。

仲間と共に、吉田山田を追いかけた日々。
大人になってから迎えた私の青春だった。

そんな中、忘れられないライブがひとつだけある。兵庫県丹波市であった「たんばの日々」という、1日限りのライブだ。

客席には、吉田山田の事をあまり知らないような年輩の方々も大勢いた。ステージの幕が上がり、バンドの音が鳴り響き2人がステージに現れても、座ったまま表情ひとつ変えない人もいた。
ステージにいる2人もバンドメンバーも、緊張しているように見え、見ているこちらにも力が入った。

しかし、一曲二曲と歌っていくうち、立ち上がったり、涙したり、手拍子をしたりする人が増え、その様子を見ていたステージ上の2人も後ろで演奏するバンドメンバーも、とても穏やかな優しい笑顔になっていた。

ライブ終盤の「魔法のような」という曲の時はステージ上のメンバーの笑顔が客席にもうつり、次第に客席からも歌声が響き、感動し涙が溢れた。彼らの事を知らない人たちがいる場所でこそ、吉田山田の音楽は、このバンドの音楽は輝くのだと彼らの音楽力を感じた1日だった。私は何年経っても、この瞬間を忘れる事が出来ない。

彼らと出会ってから、私の音楽人生はとても豊かになった。彼らが出るイベントでたくさんの音楽に出会い、尊敬出来る存在にも出会えた。そして大好きな音楽が増えたことで、私はそれらと吉田山田を天秤にかけ、より好きな音楽の方へ転がるようになった。

私の中の吉田山田の音楽は、
少しずつ小さくなっていった。

それと共に私が大好きだったバンドのメンバーは顔ぶれを変え、「吉田山田とバックバンド」という印象が強くなった。あの日感じた一体感を感じる事はなくなったが、それが私の気持ちの変化なのか、彼らの今の形なのかは分からない。

それでも私は、あの日感じたあの瞬間の感動が忘れられず、それを求めてライブに通ってしまう。しかしまだ、あの日の感動を越えるライブには出会えていない。

2度目の47都道府県ツアーをしている吉田山田。
全国を旅し、最後は再び大きなステージに立つ彼らは、
どんな形を見せてくれるのだろう。

顔の良さやMCの面白さ。
そんなものはどうでもいい。

「音楽」という魔法で
客席もバンドも会場全体を包んでほしいと強く強く願う。

私が感じた、
あの瞬間を越えてほしい。

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