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繋がる

高校生デュオさくらしめじの2回目の日比谷野音公演で感じた「音楽で繋がる」瞬間

病院の検査で、自分が抱える「一生付き合っていく必要のある困難さ」を知ったのもそのときだった。精神的にバランスを崩して、就職活動もやめた。できないことが増えていつのまにか夢を諦める理由ばかり探していた。そうして、大学を卒業して引きこもって、自分には何もないという焦りからか余計に私はバランスを崩した。「楽しみ」というものがわからなくなった。どうして私は普通になれないのか。すべての音が自分を責めるようでこわくてベッドの上から動けなくてとてつもない絶望と孤独感に泣いていた。

と、そういうときもあったんだ。あれはどれくらい前のことだったろう。そんな風にそのときのことを思い出しながら、そのときには想像できなかったようなたくさんの音に包まれて野外の会場でとてつもない幸福感と「ひとりだけどひとりじゃないんだ」という実感に泣いていた。私は2019年5月3日、アーティスト「さくらしめじ」の2回目の日比谷野音ライブにいた。

私がさくらしめじに初めて出逢ったのは何もない自分に少しだけ慣れ始めたころ。色んなことへの不安や焦りを感じながらも、世界への興味が再び芽生えはじめようとしていたころ、動画サイトを巡っていて見つけたのは、幼い男の子たちが一生懸命に歌っているライブ映像だった。結成して1年にも満たない中学生フォークデュオ。ステージのないストリートや屋外の広場で歌う姿はたどたどしく見えた。だけど、2人の歌声のハーモニーは私の心に残った。そこから少しずつ2人の姿を追いかけて、だんだん2人は私の中でかけがえのない大きな存在になった。自分の夢なんてわからなくなった私だったけど、夢を追う2人の音楽や存在に希望を見て、未来を見て、心を支えられながら、どんどん外に出るようになった。働いてライブにも出かけた。たくさんのイベントやライブの思い出とともにそこでの出逢いも増えていった。

そして昨年2018年7月28日に行われたさくらしめじ初めての日比谷野音でのワンマンライブ。公演タイトルは『真夏の星空ピクニック』。きらきらと輝く星空の下での素敵なライブを想像して胸を高鳴らせた。だけど。当日は台風が関東に接近。開催されるかも無事会場に辿り着けるかもわからない不安の中、私は大阪からライブ会場へと向かった。結果、確かに雨の中へとへとになったけど、一生忘れられないような大切なライブになった。でも、台風の影響で来れなかったファンがいることを私は知っていて、それはとても複雑な心境だった。みんなで初めての野音を緊張しながらも楽しみにしていたから。台風の影響で実現できなかったことも色々あったようで、さくらしめじ本人も悔しいことがあるだろうなと思いながらも月日は過ぎていった。しかし昨年末、2回目の日比谷野音でのライブ開催が発表された。今度こそは青空の下でみんなで繋がれるように。タイトルは『木もれ陽の中の春風キャンプ』。さくらしめじらしいあたたかなタイトルだけど、強い気持ちがあらわれていて、私も当日の好天を願う気持ちを強くした。

元号が令和に変わって3日目、GW真っ只中、念願叶って、昼には暑いくらいに晴れわたった2019年5月3日、日比谷。少しずつ暑さがおさまり過ごしやすくなってきたころ、さくらしめじの2回目の野音でのライブは始まった。心地よい天気の中、野外でのライブ、集まったファンに嬉しそうな2人の姿に目が潤んだ。そのあとは無我夢中で楽しんだ。やわらかだけど熱い2人が創り出す時間、空間、すべてが最高だった。前回の雨の野音の経験から、このときまで、ファンへの感謝の気持ちや音楽への愛情を深めた2人。そんな2人のライブは、様々な感情で胸がいっぱいになるライブだった。そして、このライブのテーマは「音楽で繋がる」。そんなこと、さほど意識していなかったけど、手拍子して手をあげて踊っているうちに、だんだんだんだんジワジワとわかってきた。会場との境なく広がる空の下、たくさんの人の中で音を楽しんでいると、大きなものの中のひとつになれた気がした。そしてさくらしめじ2人の想いを聴くうちに色んなことを思い出し、考えた。

「音楽で繋がる」ということ。そもそも「繋がる」ということって。今までの人生を振り返って思い浮かぶのは……普通になれない私。みんなの中に入れない私。孤独な私。いつも噛み合わない。世界と噛み合わない。……でも、世界にはちゃんと居場所があった。というより少しずつ居場所になった。さくらしめじの音楽。さくらしめじのライブ。わからないこと届かない気持ちだらけの世界で、そこには確かな繋がる感覚があった。日々の中でイヤホンをつければ、同じ世界に大好きな2人がいるのが伝わった。休みの日にライブにくれば、心の底から楽しい気持ちをたくさんの人と共有できた。みんなの中のひとりになれるのが本当に嬉しかった。孤独なひとりじゃなくて大切なひとりになれた。他と比べて落ち込まなくてもありのままの好きの気持ちを爆発させられる場所。その好きの気持ちで繋がれる場所。

そんな「ここ」に、そんな「今」に、自分がいれることが幸せで涙が止まらなくなった。そして、きっと、絶対、これからも。さくらしめじのライブにくれば、木もれ陽のように心地よく安心できる「繋がり」を感じられるんだと確信した。

さくらしめじは今年で結成5周年をむかえる。彼らの夢はたくさんの人と音楽で繋がり、さいたまスーパーアリーナでライブをすること。それはきっと、彼らや私たちファンの、夢のひとつにすぎない。これからも、その先も、たくさんの夢をみせてください。

それが私の、大切な夢です。

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