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普通が生み出す原動力

キュウソネコカミ

高校に入学して、部活に入って、友達ができて、そして好きな人ができた。毎日が煌めいていた。だが、夏休み明けのこと。いきなり友達から避けられるようになり、心の無いいじめを受けるようになった。更に、部活も上手くいかなくなり、退部した。トドメにだ、好きな人にもとても可愛い彼女ができてしまったのだ。
その時、私は高校生活の全てを失った…と失望し、精神状態が狂ってしまった。この時、「私だけが辛いんだ、私って本当に可哀想な人間、哀れ。」と強く思うようになり、結局逃避を図ろうとして、登校拒否をするようなった。
そんな時に、「キュウソネコカミ」というバンドを知った。確か、動画サイトで「ファントムヴァイブレーション」という曲のMVを観た。色々なCMのパロディが散りばめられた映像と聞いたことのある着信音をベースにした音楽。バラエティ色に富んでいて、思わず「面白い…」と動画を観た後、声を漏らしてしまった。そこから、芋づる式で様々なキュウソネコカミのMVを観るようになった。「ビビった」、「OS」、「メンヘラちゃん」などなど。「メンヘラちゃん」のMVは、マネキンをメンヘラ女子に見立てて、それに対する様々なミッションを乗り越えていくメンバーたちの様子がとても秀逸だった。 MVのバラエティ色の強さに魅了された。
だが、それが不登校の私の原動力になったかと言うと、それは違った。
「あぁ僕は何も出来ないくせにバカにして 努力も挑みもしていなかったよ/誰にも需要無いまま終わる 怖くてとりあえず逃げていた/卑屈になり始めた自分が腐ってくのがわかる」
これは、キュウソネコカミの「わかってんだよ」という曲の歌詞の一節だ。MVから更にキュウソネコカミの音楽を知ろうとして、聴いた時に涙が出てしまった。その時の私は歌詞の通り、不登校という…卑屈になってどんどん自分が腐っていた。私には、わかっていた。わかってんだよ!だけどな!私は辛いんだ!私だけな…。と。そんな歌詞をポップに歌い上げていくから、歌詞の飲み込みもしやすかった。一通り泣いたあと、私は今までの高校生活での自分の行いを見つめてみよう、と初めて冷静に考えた。
何となくだが、私は部活でも、クラスでも、常に心の中で人を小馬鹿にしていた。あの人ダサいとか、つまんないとか。平気で見下してた。それに加え、努力も何もしていなかった。部活も、その場しのぎで適当にやっていたし、好きな人に振り向いてもらおうって努力もまともにしていなかった。そんな生活を送っていたから、全てが崩れてしまったんだ、と私は気付いた。
「ボロボロになってやっと気付いたよ ボロボロになってやっとわかったよ/あぁ僕はただ生きているだけだった 主人公気取りの脇役だった」
これも、「わかってんだよ」の歌詞の一節だが、まさに私は「主人公気取り」をしていた。
こんなことをボロボロになって…即ち、全てを失った時に全て気付かされた。
それと、「何も無い休日」という曲の一節で
「独りになると不安定/幸せと背中合わせで/みんな隠れて不安定 今日も」
という歌詞があるのだが、この歌詞を聴いて、最初感じていた、「私だけ辛いんだ」という気持ちが払拭された。目の前には、私以外にも苦しむ人がたくさんいるんだ。当たり前のことだけれど、分かっていなかったから、気付くことができて、本当に救われた。
曲に強く背中を押され、「何やってんだ」とカミナリオヤジみたいに確実に叱られたような気持ちになり、「よし!やってやろう!」と初めてポジティブに物事を捉えられるようになる原動力になった。
キュウソネコカミの曲は、ボーカルのヤマサキセイヤが感じている日常などを歌にしている、と言われているし、実際「良いDJ」や「サブカル女子」、「ファントムヴァイブレーション」などの曲は日常で思ってることを歌にしていて、かつ、音色もポップで、バラエティのコンテンツの1つだと感じさせてくれるようなものだと思う。しかし、「わかってんだよ」や「越えていけ」、最近で言うならば、「真面目に」など、確実に背中を押してくれる曲も混在している。
この世には、背中を押してくれるような曲、即ち応援ソングなんてたくさんあるけれど、キュウソネコカミが圧倒的に他の応援ソングと違うのは、「普通の人間」というところにフォーカスして、エールを送っているところだと思う。何にでも無いティーンエイジャーの心に強く突き刺さるメッセージだ。「普通の人間」が努力をしたり、苦しんだり、足掻いたりしている ──
そのフォーカスの仕方によって、リスナーの生活をリンクさせやすさを生み出しているのだ。そして、しんみりした雰囲気だけれど、キュウソの持ち前の「バラエティさ」、まるでおもちゃ箱のようなポップ感をそういう曲にも持ち合わせていて、自然と耳にも残るし、何だか心が高揚する。
しばらくして、キュウソネコカミのワンマンライブに行った。非常に素晴らしかった。メンバーも、特に派手な装いをしておらず、シンプルな、それこそ「普通の人」
って感じで、私たち見に来ている客も、俗に言う「一般人」という人種であり、その中で、ポップな唯一無二の音楽を奏で、それに私たちがジョインしていく。不思議な雰囲気だった。「ロックスター」対「リスナー」という構図が明らかに崩れていて、アーティストとの距離感も親密に感じることができた。そして、一体感がとてつもなかった。だから、ライブの次の日に、「ああ、こんな素敵なお兄ちゃんたちの演奏だった、頑張れる!」と思うことができるのだった。
色々あったけれども、キュウソネコカミに出会った事で、曲に衝撃を受け、MVで楽しませてもらい、ライブで親密さを感じ、私の思考はどんどん変化した。卑屈だったところも、すこし柔軟に考えることができるようになった。
そして今、私は毎日学校に通えるようになった。友達もできて、とても楽しい充実した日々が送れている。
変わったことが世界を変えることもあるけれど、ありふれた日常にフォーカスし、普通を見つめ直すことで、自分のことも見つめ直すことができて、明日へ、未来へのパワーになるんだ、とキュウソネコカミは教えてくれた気がする。

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