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フジファブリック「TEENAGER」

彼の年齢を追い越して

私はこの間29歳になった。

29歳というと、あの天才がこの世を去った年だと私の中で非常にひっかかりのある年齢。そしてこの世を去ってしまったその天才は、フジファブリックの初代ボーカル、志村正彦。
訃報を聞いたときぎりぎり10代だった私には、ある一枚の手放せないアルバムがある。それがフジファブリックの「TEENAGER」だ。

アルバム「TEENAGER」はきけばきくほど完成していく、不思議なアルバムだなというのが聞いた時の印象を当時持っていた。そして今となっては自分なりの解釈も少しづつできあがってきた。私が思うそのアルバムのすごさを、少し語らせてほしい。

前半は走馬燈にも似た、子供の成長を思わせるような曲順と展開。
前に前に、どんどん進んで強くなっていくような「ペダル」、青春時代と呼ぶよりも前の、もっと懐かしいセピア色のような記憶がよみがえる「記念写真」、思春期ならではの疾走感が表現されているような、キーボードが印象的な「B.O.I.P.」。そして夏の終わりの寂しさや切なさをと目の前に広げてくれる「若者のすべて」。

さらにその次から、がらりと雰囲気が変わる。
変態的な志村ワールドと呼んでいいのか、それとも「これぞフジファブリック」なのか、けれどもなぜか安心感のある歪な世界観が続く。
「もひとつ僕のイチゴ食べてよ」なんて、この人にしか書けないよ。

そして最後の表題曲「TEENAGER」がすべてをかっさらっていく。前の12曲をまとめたような、でもそれだけじゃなく、むしろ前の12曲をすべて上から塗りつぶししてしまうような破壊力。圧倒的にキャッチーなイントロのキーボードがずっと耳に残って、踊りたくなってしまう。
10代のことをうたっているようにも、10代を懐かしく思いながらも20代を楽しんでいるようにも聞こえる、不思議な曲。
歌詞カードを見ると、「ティーンネイジャー」とカタカナになっていることに気づく。カタカナが何か不器用そうな、でも楽しそうな印象を与えるのはなぜだろう。
ずるいな、こんな曲が書けるのに、とっくにいないなんて。
そして同じ年になって、改めて彼のすごさにのみこまれてしまうなんて。

「何年経っても思い出してしまうな」
ほんとだよ。ばかやろう。

私は、次は30歳になる。彼の生きた時間を追い越して。

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