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フェスでアジカンを見た日のこと

自由と包容力を音にするバンド ASIAN KUNG-FU GENERATION

JAPAN JAMの好きなところは圧倒的な開放感だ。ステージはどれも大きいし、買ったは良いが食べる場所がないというフェス飯あるあるが全くない。スタジアムに腰を下ろしてラジオのように音を楽しみながらご飯を食べることも出来る。野外ならではのダイナミックなステージで熱いアクトも、広々と寝そべりながら夢心地で楽しむことも出来る。最終日の大トリはASIAN KUNG-FU GENERATIONだった。

意外にも一曲目は“UCLA”。乾いた喉が潤っていくような、瑞々しく穏やかな始まりでドップリとアジカンの音楽に浸る。じんわりと優しいメロディーも、一気に世界が開けるサビも、野外の開放感と相性が良く、美しい光景だった。
みんな自由に楽しんでね、とゴッチは語っていた。そんなゴッチ自身も歌いながら、可愛らしくてユニークなダンスを踊る。それにつられてオーディエンスも身体を揺らす。汗をかくほど踊る人、手を挙げる人、頭だけを揺らす人、静かに聴く人。大勢の人が同じアーティストを聴いている空間はなんだか不思議だと思う。
新曲“解放区”を聴いていたとき、会場で売っていたLove,Peace&Freeと書かれた公式グッズのTシャツをふと思い出した。
もちろんモラルやマナーは必要だけど、様々な楽しみ方を自由に選べることは、フェスにしかない魅力だ。
ロック、アイドル、ヒップホップ、メロコアといろんな音が鳴っていて、国籍問わない食べ物があって、老若男女の人がいる。多国籍的な空間で、自由を歌うアジカンが大トリを務めたことはすごく意味があったような気がしてならない。Tシャツに刻まれている通り、愛と平和と自由は、3つでセットなのかもしれない。
今でこそ当たり前のようにフェスがあるが、初めての野外フェスは台風で中止になって大変だったとゴッチは語っていた。それから20年ほど経って今こうして、全国各地でフェスが開催されてるのは凄いことだ。ゴッチのMCを聞いていて、いい時代に生まれたなと思う。

アジカンの曲には考えさせられるが多い。例えば演奏してた“Easter / 復活祭”にしても「何したっていいんだぜ」と歌われていたって、それを素直に受け取って良いのか分からなくなる。皮肉として言っているのか、本心で言っているのか悩んでしまう。今まで分からなかったけれど、この日にようやく分かった。“Easter / 復活祭”で沢山の手が上がる光景は、墓場から抜け出そうとするゾンビのようでもあった。個性を殺してゴーストとして生きるのは勿体ない。蘇る我と書いてソガと読む会場、蘇我スポーツ公園。ロックが鳴るのに相応しい地名だと、あげられた多くの手を見て思った。失われた個性を蘇らせる“Easter / 復活祭”はロックで力強い。

カラッと乾いた喜多建介のギターに体が反応した。“荒野を歩け”はイントロを聴いただけで気持ちが前向きになる。何もない荒野に独りで立ったとして、こんなに明るい曲が歌えたらどれだけ心強いだろう。先の見えない不安を「思わぬ未来」と言い換えるだけで全然違うものになる。
“ソラニン”は切なくて心が千切れる。シンプルで美しいギターリフと一室の灯りのような照明。目の前の景色と、脳裏の光景が絶妙に混ざる。確かにステージを見ているはずなのに、昔住んでた小さな部屋で繰り広げたアレコレがぼんやりと頭に浮かんでいた。音楽はタイムマシーンだ。楽しい思い出は生きていく上で必要不可欠だけど、誰かを傷つけたもしくは傷つけられた思い出も捨てちゃいけない。自分にも、傷つけあった人にも、今後誰かを傷付けないためにも。

アジカンは「何もない」を歌うことが多い。過去に得意だと思っていたものを、自分より上手い人に出会って、自分には何もなかったんだと虚しくなったことがある。虚無感に溺れて、自分を見失って一つ気が付いた。
「何もない」は裏返せば、生きる理由になる。そこには余白が確かにあるからだ。持っていたものを無くしてポッカリと穴が空いていても、その穴の大きさの分だけ誰かが、何かがあった証拠だ。手ぶらならどこにでも行けるし、何にだってなれる。「何もない」からこそ、それが最も明るい希望になる。アジカンは本当に良いバンドだ。

ライブを見て、もっと自由になりたくなった。自由に生きてきたつもりだったけれど、固定概念に囚われて思考停止していることも、きっと数多くある。少なくとも僕は、もっと自分の意見や考えに向き合っていくべきだ。
しかし、それ以上に感じたものは優しさだった。もっと他人を許せる人間になりたいと思わせくれる包容力のあるライブだった。
自分のこだわり、考えを誰かに押し付けて、言う通りになったとしても、果たしてそれは正解だろうか。相手の考え方を無視することは、相手をゴーストにしてしまうことになるかもしれない。正しさだけを武器にしてしまいがちだけど、想像力を持って他者と接していけるようになったら、ゴッチのような大人になれるんだろうか。
そういう発想もある、という発見を楽しめたら生きることはもっと楽しい。ゴッチの楽しそうな姿がなによりもそう物語っていた。

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